VOL53 模索する若手技術者たち 発行2000/11/02

母校の文化祭を訪問して最近の卒業生たちと話をする機会に恵まれた。初芝通信時代に、会社からのリクルート活動として訪問した際の学年の方たちだった。偶然にも、その中の一人は携帯メーカーに入社してPDC用のASIC開発をしているS君だった。彼と同期で、やはり通信メーカーに入社したTさんは横須賀に今は詰めていてWCDMAの無線系の開発をしている。

S君は皆、懸命に技術者として取り組んでいる姿は眩しい。忙しい中にも自分の取り組む課題に向けて邁進していく姿である。猛烈に忙しいだけの仕事で見えない展開などでは疲れてしまう技術者も多いのだが、彼の部署は転職できるだけのスキルを身に付けるべく懸命に取り組んでいるとのことだった。こうしたフレーズは、会社入社直後には日本ではよく教えられていることだが実践できるかどうか別問題だ。

高専では大学に進学するメンバーも多い、編入で三年に入り更に修士コースを選択される人が多いのだ。S君と同期の友人の一人は、エレベータ製造の会社に入り、もう一人は修士に進んで、いま就職について考えているようだった。卒業して三年経過した彼等の仲間からの話を聞きつつ、技術屋として仕事をしていこうかどうしようかと悩んでいる矢先だったようだ。

正直、就職を決める頃には、勤務地で決めたとか先輩が説明に来たからとかの理由であったりする。景気が厳しくなり就職の条件もいっそう厳しくなる中で、彼らも会社を選択する目も真剣な様子だった。大企業だからということで就職しても自分の実力を高めていくようなことが出来にくいことも往々にしてあり、小さな会社で実力を高めたりして転職を重ねていくのが良いというような米国流の話などを紹介したりすると妙に納得されたりした。

学校の先輩としてあるいは社会人としての先輩として、さしさわりのない範囲で携帯の開発を通じて知りえた日本でのメーカーの個性や特色などについて紹介してあげた。無論それは、その会社の一面であって全体では決してない。同じ会社であっても、良いタイミングでよい仕事や上司に恵まれて実力を発揮して有意義に生活している人も居ればそうでない人もいるからだ。

会社というものは生産活動の組織であって、人で構成されている。色々な周りの環境や状況などからどんどん変化していくものである。まだQuad社のように若い会社では、その仕組みなどを改善あるいは規定していくことが必要である。良い雰囲気を維持しつつ、人材をスムーズに増加させていきたいものである。空いているブースにも、どんどん新しい職責の人が入社してきて今までの体制からは改善強化されつつある。

来週は有望な若手の技術者が訪ねてくる予定だ。来月にはまた一人技術者が増えてくる。これから日本としての教育の仕組みなどを考えつつという新たな仕事が増えるのだが、これは嬉しい悲鳴である。

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