VOL97 NDAと情報公開 発行2001/4/9

日経某の記者の方々からのインタビューを受けた。その内容には会社人としての私に求められているものなのか個人としての私に求められているものなのかは、曖昧な点があった。前回のバイトの場合は、メーリングリストからの咆哮を意見として掲載したら・・・という師匠からのアドバイスがあったのが背景であった。

現在のQUAD社という立場で認識している各開発メーカーの事情と背景から、ミドルウェアの開発提供などの方向性を導出してきたのは別の事由によるものだった。CDMAの技術をチップとソフトウェアとで提供しているとしても開発メーカーとの間のNDAに含まれるCDMA制御といった部分と上位のアプリケーションの展開での情報公開が入り混じっていたことにより開発メーカーに混乱を生じさせたのが理由である。

iモードの登場は、CDMAの登場による脅威やWCDMAへの布石として溢れたトラフィックをパケット通信で解消することなどが、戦略目的だったのだろう。その目的は、十二分に発揮されすぎて次世代携帯が霞んでしまったかもしれない。みな愛のサービスで圧縮された情報よりもメールの恩恵の方が有り難かったようだ。専用ビジネス端末業界の巻き取りを果たすことが愛のサービスの副次的な効果でもあったろう。

愛のサービスメールに対抗すべく技としては高度なWAPベースのメールサービスもレスポンスや課金などのシステム上での課題などから出遅れてしまった。世界標準をおっかけた結果は、マッチはしなかったのだ。iモードに対抗していくのは素直に実装したIMAPメールである。文字数など制限もなく通常のインターネット技術だからでもある。

IMAPとチャットで追い打ちを掛けていく、このCDMAキャリアに対抗したのはJAVAである。単一プラットホームではない溜池テレグラムとしては仮想マシンというスタンダードを得てアプリケーションの配信実験を試みたわけである。電話では使えなくなってしまったハイトラフィックの現状から矛先を変え愛のサービスの成功方程式を拡大解釈していったのである。

実際にこうしたせめぎ合いの中で二つの問題が発生してきた。一つはアプリ開発という範囲が拡大されたことによりメーカーからサードパーティ製品の搭載という段になり、チップとの契約に基づくクローズソース提供をベースに開発を進めてきたモデルがミスマッチを生じたのである。NDAを締結しているメーカーとしてはサードパーティに情報の最開示が出来ないという事が問題となっていった。

大量の一人勝ちビジネスモデルによって立つ陣営では、各メーカーが切磋琢磨するなかに向けて適切な戦略を次々と出していく事で、技術的な背景認識をしたうえでの物作りを次々と果たしていくためにかけられるリソースの量が比べるまでもなく肥大化していった。売れるモデルを作るために投下していったリソースのバランスシートが健全かどうかは別問題であるが・・・。

情報公開という仕組みで後から出てきてうまくいったモデルにはIBMPCもあったしCHTMLもそうであった。携帯という開発モデルには、肥大化したアプリケーションを構築していくうえで、ソフトウェアという物の部品化とその品質保証という観点については叩き出して品質を確認することに走っている会社も多いようだ。最近のバグの傾向を見ていると機能範囲の拡大に試験体制というよりも試験項目の洗い出しが追従出来ていないとも思われる。

情報公開をしてインタフェースの整合のとれる部品群を準備していくというビジネスモデルとノウハウという範囲をNDAとして確保していくモデルとの間には第三者による新たなビジネスモデルの登場が必要となった。QUAD社の本体が始めたそうした目的のミドルウェアのビジネスは、ある意味でLINUXのような自由な開発環境を無償で提供することをマイクロソフトのOSの上に作っていくようなものかも知れない。

無償で端末開発環境を配り、端末が売れることによりライセンス収入などの観点からゲインしていくあるいは、そのビジネスモデルで作成してコンテンツの利用料金をキャリアから徴収するといった形態が定着するのかも知れない。電話機から早くインセンティブが無くなり身の丈にあった健全な開発競争に戻ることで世の中が少し落ちついた平和な世界になるような気がするのは、私だけだろうか。

カシオのケースに好きなアプリケーションを乗せたりしつつ、あるいは公共ビジネスの為のアプリケーションを自社開発して携帯の上で動作させてシステム構築していくといったことが出来ると、様々なつまらない政治的な案件も解決できると確信しているのだが・・・。

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