業界独り言 VOL163 ホームサーバーの道その一

サッカーのワールドカップも始まった。意外な展開などがあり、王者というものの存在について維持することの難しさを改めて知らされる。そうして実際のフィールドにいた選手達についていえばいつもはクラブチームで戦いあっている仲間達だったりするのだ。枠組みを変えてみたときに枠というブランドが強いのか、個々の選手達が強いのか、はたまた伸び伸びと活躍できる仕組みが良いのかといろいろと考えさせられる結果でもあった。世の中は、結果としてしか認識できず。個々の選手どうしは既にそれぞれの力を認識していたりした結果だったのかもしれないが。

サッカーのワールドカップの前日からトラブルが個人的には続いていた。少し早めに家に戻った事も手伝いサーバーの設定更新などを進めていた光の国に参加してからは常時接続の影の支えであるブロードバンドルーターのお世話になっていた。仕事での世界と同様にここにもARMのプロセッサが搭載されている。8MのADSLにはARM7でFTTHにはARM9という住み分けが明確になっているようだった。アプリケーションが明確なルーターというビジネスでは性能差が要求されるアプリケーション能力を明確にしているようだ。このSOHO向けといえるのかホーム用という範疇のルーター群の競争は厳しくコスト競争や性能差など製品リリース後のアップデートも競争の一環とみえる。

光ファイバーが引かれるまでもなくISDNベースでの常時接続は果たしていたのだが、自宅サーバー構築には気乗りがしないでいた。個人で管理するメーリングリストサーバー程度が関の山というのがISDNベースでの個人的な感想であったからだ。無論自宅マシンを公開していく上でのサーバー処理などは、以前の会社で早期技術評価という名目で散々やったApacheやPHPなどの稼働によりイントラネットによるDB連携などを手がけてきていたので昔取った杵柄という事でもあった。しかし光ファイバー接続によりようやく自分の納得できるサーバー環境に近づいた訳である。

バーチャルな世界で自由闊達に意見交換が出来ないだろうかという思いが、今はオープンでフラットな組織であるQuad社にいることで当たり前の日常と化してしまい自身の中で別の意味で凍結状態となった。しかし、旧友たちを始めとする日本的な会社の枠組みでは仲々難しいということがいまさらながらに思い起こさせる日常にも直面している。そんな中での自宅の光接続で自分自身の考えるバーチャルな技術論議の出来るインフラあるいは雑誌が出来ないだろうかというのが、バーチャルな形でのテクノウェブ構想が首をもたげたのである。ペけれりーパーとしての雑誌運営は五年間という中である領域に到達したうえで破綻してしまっていたからでもある。

とりあえず、Windows95の時代に購入していた嫁さんデスクトップがノートブックへの更新となって私の手元に戻ってきていたのでまずは、ここにLinux環境の構築を試みていった。Pentium2が搭載されていたこのマシンには当初3GBのハードディスクが搭載されていたが、今では8GBになっていた。残念ながらBIOSの都合やマザーボードの都合から72pinのSIMMしか搭載できずRAM容量も最大限である96KBにまでは拡張してあった。この環境で活用できるのはDOSかLinuxなど、そして超漢字くらいのものである。Windowsではもはや重くて動作できない。食べ散らかした印象のあるハードディスクを一旦フォーマットしてLinux環境向けにカスタマイズしたといっても96KBしかないRAM環境なのでSWAP領域を256MB程度としておいただけだが。

ISDN接続時代には常時接続でレンタルサーバーと契約して個人ドメインを取得していた。500MBのディスク領域によるメールサービスとホームページサービスで月額にすればそれほどのコストでもない。インターネット接続点の速度などについても問題はなく、実体のサーバーサービスの詳細に立ち入ることの必要さえなければ情報公開という意味であれば保守の問題などを考えれば割安なものかも知れないと考えて利用してきた。実際に自分の家までが十分な速度で接続する時代に突入した今としては、自宅サーバーに挑戦すべきであろう。かつて会社としてのインターネット接続が当時の超高速モデムと言われていた専用線で接続されていた時代を顧みれば、贅沢なことではある。

自宅サーバーに至るまでには単なる高速接続という時代で、無線LANなどとの協調が動作できるようにという話であったが払い出された固定IPアドレスとインターネットへのパイプを提供してくれるプロバイダサービスのDNSなどを利用していた。このままでは、自宅マシンは意味不明な番号が入ったプロバイダのドメイン名でしか参照できないのである。しかし時代はADSLによりアマチュアへの情報提供が十分になされてきた。固定IPの逆引き管理で言えば、利用するプロバイダのドメイン管理になるが、名前からの正引き管理で言えば自由になるわけだ。DNSサーバーを正しく二台立ちあげることさえ出来れば自立した運営が可能である。しかし、安価なプロバイダサービスでは一つの固定IPを払い出すことしか出来ない。

まあ世の中は良くしたものでセカンダリのDNSサーバーを無償で引き受けてくれるサービスやら寄り合い所帯で相互運用する互助会があったりする。前者のサービスを受けるべくメールで申し込みを行い、無事ドメインサーバーを自分の家と予備との二つを稼働させることになったのである。稼働させたLINUXマシンにはDNS設定としての二つの役割を設けさせることになった。家庭内でのDNSサーバーと、外部へのDNSサーバーである。これにより家庭内に設置したホームサーバーを外部と同様の名前で検索することが可能になるわけだ。自宅内においては、www.techno-web.orgは192.168.1.10であり外部から見ればPROXYとなるルーターのアドレスがwww.techno-web.orgとなる。実際のhttpのポート番号自体は192.168.1.10に配送される設定にしているわけだ。同一のコンテンツを家庭内からも外からも見える訳である。

家庭内LANは、プライベートアドレスとなっていて導入したPPPoE対応のブロードバンドルーターがDHCPサーバーとなってIP割りつけを行ってくれる。DHCPサーバーが特定のマシンには固定アドレスを払い出すように対象マシンのMACアドレスを予め調べて設定することにした。これによりmail.techno-web.orgとかwww.techno-web.orgとかといった外向けサーバー以外に家庭内サーバーやプリンターなどにも名前を付けることが可能になってくる。といってもルーターとアクセスポイントとlinuxマシンしか常時通電されるマシンはない。落ち着いて外部から設定作業を合間を見て行っていく上で必要なのはtelnetなのだが物騒なこともありSecurity-Shellの設定のみをまずは最初に終わらせておいた。後は、会社の昼休みでも実行できる訳である。

SSHでアクセス出来るメジャーなソフトはTeraTermのSSHオプションではないだろうか。実際に会社からアクセスしていても光ファイバーでインターネット接続している霊験はあらたかで普段自宅でTELNETしているのと同じ感覚で利用できる。まあ、動作しているマシン自体が速くないという現実にはコンパイルしたりする時に遭遇してしまうのだが。かつて払い下げマシンの486DX4などのマシンを利用していた時代に比べれば速いのは事実だしLinuxでGUIの環境を利用していてもストレスは感じないのである。Officeツールなどを不毛な機能競争というよりは寡占な中で買い換えを強要するような戦略をとっているOSツールメーカーはGDPあるいは需要を生み出すサイクルを回しているのかも知れない。

さて、Webサーバーソフトとしては一般的なApacheを利用することにした。どうせならと最新版の展開をというとほほループに落ち込み、Webサーバー強化ソフトであるPHPとデータベースソフトのMySQLの全てを最新版で構築するという出口のないようなトンネルに入ってしまった。このトンネルを抜けるのに休日一日を費やしてしまった。Webにある情報が最新なので、あまり書籍が役に立つわけではない。もっとも役に立つのはソースコード自身であるのは普段の仕事でお客様に説明しているのと同じシチュエーションでもある。まあLinuxなのでデバッガも不要だしオープンソースで鍛えられているメジャーなリリースコードは分かりやすいものであったりする。環境が揃うとコンテンツの引っ越しである。

レンタルサーバーからのコンテンツ引っ越しのなかでページの共用化や相互参照などのリンク整備などを実験したりしつつまずは暫定の公開をした。使い古しのパソコンではあるが、8GBのディスクスペースは、そこそこ使えるものであり知人にコンテンツ領域としてフリースペースをあたえている。PHPとデータベースによる動的なページはCGI以上の使いやすさでページを開発構成しやすいものである。会社でやっていたときは、Sybaseなどの回りに説明のしやすいものを利用していたが、個人環境であり軽いMySQLにとりあえず決めた。といっても現在のPHPでは殆どのLinuxデータベースと接続出来るようになっているので、Webコンテンツとしての掲示板などのアプリケーションも色々と流用性が高まっている。

持ってきた掲示板システムを稼働させてみると、いろいろな人が自由に書き込める環境というものが、いまさらながらに便利に見えてくる。懐かしい仲間がいろいろな時間に書き込んだり読んだりしてくれている。当初はメーリングリスト会員のみに限定したのだが書き込むという作業をする上では自由にアクセスできる方が良いのではと、今はフリーにしている。込み入った検討などをしていくような場所が必要になってくる場合には、また厳しくするのは簡単だし、会員自体が自由にパスワードの更新などを行えるような認証形式というのも次の課題として残してある。

そうして稼働したシステムはとりあえずコンテンツを書き込みつつ「お題」や「部屋」の名前を悩みつつとりあえず軌道に乗せることができた。社内での情報共有に飢えた積極志向の仲間達が、場所として利用してくれれば良いわけである。光ファイバーで構築されたシステムはSOHO環境としても存分に活用できる訳で月額の通信費用などは、毎月の通勤費用と相殺して考えるべきであると考えている。実際、お客様との接点であるメールや電話という仕組みもインターネット電話番号に移行したりすれば、まさにバーチャルオフィスのでき上がりである。そんな中で、ちょっとルータのファームウェア更新でつまづいてしまった。

大規模なバージョンアップだったにも拘わらず、私自身が安易に従来と同様な手順で臨んでしまった結果であり運用しているシステムを丸三日停めてしまった。これによりルータ環境の二重化や(予備系の手配)、サーバー環境の無停電化などのテーマが明らかになってきた。実際の仕事を通じながら、便利になってきたことを実感すると共に、責任の重さも痛感してきたこの頃である。技術への自己研鑚課題と日常の命題とを相俟ってクリアしていくのは、技術屋としての楽しみ方の醍醐味といえるかも知れない。そんな楽しみを共有していきたいと思うのが掲示板などに繋がっているといえる。

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