業界独り言 VOL247 梅雨のようなBon Vacation

世の中が、毎年の繰り返しとなる日本の民族大移動の夏の陣・・・盆休みである。当初の予定は、最高気温更新などが続くであろうこの季節を楽しむことなく、からっとした気候の中で紺青の青空を見上げつつのデバッグ支援をしているはずだった。夜になれば、AOLのページなどからアクセス出来るテレビ東京の動画ニュースなどを見やりつつ渋滞情報を参照しつつというスタイルの一週間のはずだった。第三世代の開発が一段落したお客様の関心事は、欧州展開のための世界対応ということにシフトしていった。本来ならば第三世代が世界対応の筈なのではという突っ込みは無しだ。

実は梅雨明けを聞いたのは、大阪入りしてからのことである。週末を挟んで大阪暮らしを、インドの仲間と過ごしたのは三月に経験して以来のことでもある。ライセンス商売をしているQUAD社としてはお客様が設計するデザインのボディに基本プラットホームとなるチップとソフトを提供してお客様が日本風の携帯電話に必要なアプリケーションを載せて仕上げていくというサイクルである。この春に過ごした二週間あまりの追い込みの仕上げは、こうした活動を加速させてくれた。試験環境である日本でのFTとのサイクルと米国開発陣営とのサイクルが見事にシンクして成果を発揮したのである。

そんな成功体験がお客様にとっては、大きな思い込みとなっていたようだった。季節は移り、春の国内行脚試験から、夏の世界対応となり舞台は国内では何も出来ない事態となっていた。試験装置をフルセットで揃えれば何とかなるだろうという思いも欧州認定取得に必要な測定システムを完全に揃えるまでには至らないのはRF性能評価のシステムとソフトウェア性能追い込みで必要な擬似試験対向装置というものの意識の違いだったかも知れない。世の中が第三世代に傾倒する中で2.5Gの開発というテーマの完成度はイマイチの様相となっているようだ。以外と実の薄い世界だったかも知れない。

幸いにして当初の一週間で、お客様の用件課題を的確に収集して残る期間をお客様をサンディエゴに招いての集中デバッグというスタイルをとり、開発支援としての仕上げの段階に移ろうとしていたのだが・・・。この期間にあわせて、お客様支援の重要な役割であるお客様とサンディエゴチームの橋渡し役として解決に向けてさまざまな範疇の課題に向けてフォローアップしていくことが必要となるのである。いわゆる下請けと称せられる仕事の仕方と異なっているのは、テクノロジーを主体的に開発して同時期に複数のお客様に提供していることによるビジネスモデルの違いに端を発しているのだが・・・。お客様の意識と同期が取れているのかどうかは微妙な線である。

お客様の現場サポートも含めて短期日で可能な限りの問題解決を図ろうという仕事の目標が、納期を抱えているお客様にとっては決められた期間ですべてを解決するという高い理想との現実のギャップが縮まりこそすれ中々漸近線の様相を呈したりもしていた。お客様のトップマネージメントから発せられたこうした事態に対して日米双方での更なる支援をというお題を頂戴するにいたり、当初予定していたサンディエゴでのお客様の課題解決での密接な現場支援を加速するための同行サポートをボスに委ねて、急遽私自身は盆休みを暑い大阪で過ごすことに相成った。夏休みの直前に陥った予定変更の事態には、ボスの「えぇっ!困ったなあ」という意味と、私の宿がなくて困ったなあというのは大きな開きがあった。二人とも大阪に通いつめていた上での事態だったのである。

日々お客様の状況を密接な形で支えていく上では、お客様との間の電話会議での介在や懸案事項のトラッキングやらテーマは多い「オンサイトサポート」を要求したお客様にとっては、開発費用に計上した決して安くはないソフトウェアのライセンス費用の対価として要求したのも判らないではなかった。開発の効率を追及した結果、こうしたQuad社の技術を選択したのであれば、効果はあるのだと確信するのだが・・・。世界同時に技術提供をしていくことがQuad社のビジネススタンスであり最初に評価するのは自立した自社評価端末の開発チームなのである。その結果を受けてお客様が作りこむアプリケーションの広がりから要求される完成度に向けてサポートと開発のハーモニーがあるのである。

さて、お客様の開発効率を最大化するために技術者が、お客様の事務所に毎日朝伺い電話会議をホスティングした上で課題を頂いてという仕事の仕方を進めようと画策していたのだが、生憎とお客様のIT技術で用意できる環境はISDNのラインが接続可能な大部屋の中の会議コーナーだった。電話会議の後に、進めるべき仕事に必要な回線速度からみると一人の仕事とはいえブロードバンドな時代の中では使える環境とはいえなかった。まあ3Gの開発をしているというビジネスから言えば3G端末の回線を使って384KbpsのPS接続という選択肢もあったのかも知れないが現実問題としてコストならびにお客様がテストのためにも使用している回線帯域を使える状況ではなかった。

サテライトオフィスである大阪オフィスからの仕事を一週間続けることに相成った問題が発生した場合に、お客様に急行するのが容易な距離範疇ではあり、お客様にもノーティスしてある個人携帯番号はいつでも電話をとる体制にあり論理的なオンサイトサポートに違いはなかった。お客様のオフィスに自由に出入りするIDカードの発行までもしていただき、ある意味破格の待遇ではあるにしても、物理的なオンサイトサポートを阻むのはお客さまの技術管理という面でのIT管理の壁であった。季節は甲子園の開幕と重なっていたので、急遽滞在となった週に確保できた宿はLAN接続可能な大阪オフィスに近いホテルを選択した。いつも使っていたホテルをサンディエゴ仲間がいない間も使うのは気持ち的に憚られるのは、まだ私に残された日本人の感覚なのかもしれない。

事実ホテルの費用は半額で済み、大阪の天神橋筋のモーニングの費用などはホテルの朝食の六分の一ほどである。ホテルに装備された大浴場やホテル近くの24時間営業のコインランドリーなども含めて過ごしやすい環境であった。光LANが整備されることで日本のブロードバンドの破格な環境を享受できたのはお客様のサポートにとっても良い結果となった。生憎とホテルの部屋のメインスイッチがキー連動となっていたので大規模ダウンロードをしている間にコインランドリーに行こうとしたら外付けハードディスクが切れてしまった・・・。これは高級ホテルとの大きな差異でもあった。先週のノイジーな蝉の声もどこ吹く風で梅雨に戻ってしまったような盆休みの大阪暮らしとなった。幸いにして七月はじめに引越しで使った夏休みには先見の明があったといえる。

日替わりで店を違えて、楽しんだ安価な大阪の喫茶店のモーニングや夜食の豊富さなど食い倒れは楽しめたものの、トップマネージメントの言われていた緊急事態に備える目的で行った作業としては、大過なく過ごすことになり私としてはいつもと同様な仕事の仕方を単に大阪地区で過ごしていたことになる。唯一サンディエゴから確認済みでリリースされたコードがお客様の端末に組み込み動作しないという大事件を除いては、あまり私の存在価値もなかったかも知れない。大事件もお客様からコード一式をお借りして落ち着いて確認したところお客さまの行うべきカスタマイズが成されていなかったことが理由であった。サンディエゴで誠心誠意で確認納入したコードが再現できないという事態をサンディエゴが寝ている間に鎮火できたことは良かった。

提供されるプラットホームを活用してカスタマイズ利用されるお客様にとってカスタマイズ内容の確認や指導を受けるということも我々の仕事の一環である。3Gとして規格化されたワイドな仕様についていえば世界統一のはずの仕様なのである意味でCDMAに比べると楽な面といえる。しかし既にカスタマイズで対応すべき大元のコードサイズから言えばプロトコルに依存する範囲は一割を切る状況となっており一機種の開発費用は百億円を越すのが当たり前となっている状況においてライセンス費用をもってしてもトータルの開発費用が半額以下の安価に済むのではないかという私たちの思いは最近確信に変わってきたのである。まだ疑心暗鬼なお客様がいるのは事実なのだが・・・。

さあ更なる効果を訴えるためにもアプリケーション屋さんを支援技術者として雇うことが急務なのだが、そういう人に限ってはみ出し者が少ないようである。私は既に一人はみ出し者を見つけてしまったので、もう見つけることは至難だと認識している。続くピークは年末なのだろうか。幸い十月からは新年度であり新人発掘のチャンスともなる技術が経理よりも強い、外資では稀有な会社としてはどこかで体験したような錯覚に陥るような日本の会社の風土に似ているような気がしてならない。もっともその会社の風土は最近すっかり変わってしまったと聞くのである。トップマネージメントのみに責任があるとは思わないものの、次代を担う意識の技術者こそが立ち上がらなければ、あっというまに風土は崩壊してしまうのである。ソフトウェアメーカーとして変身を遂げようと新風土創世に立ち上がった会社のトライアルに注目しているこのごろでもある。

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