業界独り言 VOL266 ソフトハウスの懊悩

国内メーカーのソフトウェア開発に深く携わってきた、ソフトハウスというビジネスモデルは大きな転換期に入ったようだ。ソフトハウスの開発営業の方が、毎期弊社を訪ねるのだが業界動向を学びたいということのようである。四年ほど前に飛び込みで来た会社であり弊社としては所謂IPRの世界で仕事をするベースの上で日本的なソフトハウスを受け入れることはないという説明を何度もしているのだが、展示会やら新年の賀詞挨拶などで訪れることが続いている。彼らの収益源となってきた携帯電話の基地局関連の交換機開発などがなくなって来たことなどから将来の不安解消に状況を知りたいということのようである。顧客先で聞き及ぶ光景などからも伝わってくる、現場営業の大変さを見据えた上で次の方向性を見出したいということのようだ。確かに、そのソフトハウスの売り上げ実績や収益性という面で財務諸表を見てみると利益率低下と売り上げの低下のダブルアタックとなっているようだ。

カスタマーの仕様に基づくソフトウェアの開発というフェーズのみの仕事の仕方ということが、組込みという特殊性もあいまってプラットホームとしての横展開なども出来にくいという事情がコスト高にもなってしまう要因なのだろう。コスト削減の一方的な要請に応えていく確かなメソッドもなしにいる状況などが透けてみえているようだ。右肩上がりの時代の人数規模の増大なども自社の教育のサイクルなども十分に機能しないままに進んできたようで、解決策としては人材規模のシュリンクで技術品質を高めようという施策で小さな機能性の高い会社を目指しているようだ。IP電話の登場により電子交換機といったソフトウェアビジネス市場が崩壊されていき、SIPサーバーなどの開発という形に形態を変えて生存を賭けているようでもある。端末開発のメニューは、中国や欧州といった展開となりソフトハウスに仕事が下りてくる前段階で国内メーカー同士が手を組んだりして、ますます開発自体の精度と開発費用とが研ぎ澄まされた要請になっているらしい。

組込み端末開発以外でいえば、オープンプラットホームでのデータベースなどのアプリケーションは昨今のインターネット時代のASPアプリケーションの開発の一環などで膨らんでいるらしい。旅行業界などの仕組みも国鉄時代とまではいわないもののタリフの持ち回りなどの古臭いシステム運用を人手でやってきたことなどの”JTB”のようなスタイルから、ネットベースでホテルの予約などが出来る”旅の窓口”のような形にユーザーニーズがシフトしているようだ。そうしたことの裏には可処分所得の適正化が進んだ時代の証として、低価格高品質といったことが多様性のある商品として取り扱えるようなシステムが求められているようだ。単純に”ビジネスモデル”のコピーをしても次のリーダーに向けてユーザーの信頼を勝ち得るのには、力不足である。旅先での不安などにいち早くWeb対応できるまさにマルチメディアに対応できるUMTS携帯端末が世界中で使えるIP端末として動作する時代がきた現在では、そうした併せ技でサーバーとクライアントの双方をカバーする時代のはずなのである。

経験値の応用あるいは横展開をNDAで阻まれてきたのが、ソフトハウスにとっての組込みソフトウェア開発の歴史でもある。そこにプラットホームソリューションにより風穴を開けようとしている取り組みなどが功を奏する状況に入ったようだ。こうした様々な経験値をもつソフトハウス自身が覚醒して、経験値によるシステム開発として顧客先に売り込んでいけるのである。クロスオーバーな商品や技術をシステムとして開発提供していく時代だというのだが、問題は開発スピードであり大会社病に陥ったような硬直した組織や意識では生きていけないだろう。ソフトハウスとしての将来の開発投資をしてきたのかどうかが鍵でもあるようだ。人材派遣業のような形に埋没していたのでは変遷する時代の次には進めないのである。今までの経験値をもつ優秀な技術者達に、明確な指針を与えて技術開発という投資をすることぐらいが出来なければ本当に人材派遣業としての倒産ということの憂き目に遭遇するのみである。ドル箱を抱えているときにこそ次への投資をしなければならないのであるのだろうが、忙しくてそんなことには構う余裕も無かったということなのかも知れない。

ソリューション提供メーカーとしてのQuad社は、ライセンス商売をしている同社の部門とはある意味で矛盾するほどの無私な開発サポートをしていたりもする。まあライセンス適用事例が増えるための撒き餌というようにいわれる方も居るかもしれない。ビジネスモデルとしてライセンスを核に確立してきたチッププラットホームビジネスは、リファレンスデザインでの評価追求をベースに方向修正を繰り返しつつここ五年ほどを費やしてきた。毎年繰り出される新機能を盛り込んだハードウェアやソフトウェアを支援していくことがプラットホームビジネスを生業とするものたちの常なのだろう。”知りたい”という飽くなき追求自体は、知識資本主義と最近は呼ぶらしい。ユーザーをサポートしていくことにより得られる情報は、計り知れないものがあるともいえる。そうした集大成として製品開発の方向性の決定やら優先順位の調停に費やされつつ必要な開発支援体制が確立してきたというのが実情でもある。チップを販売提供していくという立場では、開発費用の費用分担といった目的でのチップごとの契約費用を得てはいるというものの、通常であれば掛かるサポート費用は別立てというのが世の中の通例にも見える。

仕事を選べる時代でもないのだが、居直りにも似たリフレッシュ開発を進めようとしている新たなお客様での取り組み事例などはきわめてインターナショナルな様子になってきているようだ。大規模な陣容としてのソフトウェア開発の常として必要な管理面での組織も専任部隊を契約して設置するなどの最近のCMMの理解も広まっているようである。問題の管理というテーマだけでソフトウェアもハードウェアも管理すべき事由はいくらでもあるので開発チームの新規構成への取り組み事例としても興味深い。チップビジネスを展開するQuad社の技術供与を受けつつの開発ということで、自社技術としてのチップへの実装というよりは自社ノウハウの端末仕様を内外のメーカーに開発委託するという姿が透けて見えている。なにより自社と呼ぶメンバーすらも日本のオフィスの人たちではないようだ。確かに端末として出来上がるものが使われる巨大マーケットであるインド・中国を念頭におけば極めて自然な構成ともいえる。そんな中で大手のソフトハウスや気心の知れた地元のソフトハウスなど多くのメンバーが投入されるようだ。

異例なことは、さらに続きいつもならば日本人のエンジニアが主体となる開発なのでこちらでのトレーニングでは日本語あるいは日本語への翻訳などを補いつつ進めていくのであるが、今回のお客さまからは英語をベースのトレーニングにしてほしいという要請である。こうなると日本オフィスで進めてきたローカライズサポートの姿から離れていくようでもあり寂しい気もするのだが、何よりも日本人技術者がする仕事がなくなってきているのかという危惧が現実となって感じられる事態でもある。自分達の付加価値を再認識してみることが、要請されてもいるようである。暢気に会社の脛を齧って暮らしていけるような時代ではないというのも、こうした風景を見ていると感じるのである。仕事を求めて実際に活動している現場に流れていくということが日本人技術者にも求められているのだろう。となると農耕民族のベースである日本人には合わないのかもしれない。とはいえ地道に開発していくことが評価されずに冷遇されてきた時代を経た今となっては、そうした感覚をもつ期待される技術者が自分の価値観をもてずに悩んでも居るのだ・・・。

驕る平氏は久しからずではないが、最近好調な通信キャリアも、ちょっと見に具合のおかしい通信キャリアも含めて開発競争の現場は大分整理されたかたちとなってきたようにも映るのである。仕方なく流れている仕事に従事しなければならない仕事もあるにはあるようだが、Quad社サイドから見る限りはそうした疲労の残る仕事はないようで、通信キャリアへの教育成果が出てきたと見る人もいるかも知れない。追い込まれた通信キャリアが大英断をしたり、土壇場での判断でばっさりと切り捨てて開発を始める端末メーカーなども出てきてマスコミで誌面を賑わしているほどの将来の見えない端末業界でもないのかもしれない。いずれにしても狭い国土での競争に費やされてきた結果、技術者の島国根性が強化育成されてしまった弊害は、少しずつ改善されていく状況とみるべきかも知れない。第三世代の付加価値としての通信コスト定額性などがようやく評価されるようになったのは、Quad社としての社会貢献といえるのではないかと私は理解している。

では続く次代に見えている姿としての、ソフトウェアプラットホームによる超カスタマイズなどのショップお勧め端末やら、ネットや雑誌で評価される端末ソフトの組み合わせが自在に行えるようなことを定額制の次に私は夢見ているのだが、これを実現してくれるのは果たしてどこのキャリアになるのだろうか。電話番号のポータビリティなどのの行く末に通信キャリアの機能も単なるプロバイダに過ぎない時代に早くなってほしいと願うものでもある。世界中の人たちの英知をリアルタイムに通話をしつつ共有して改善していけるような時代がくるのではないかと夢を見ているのだが、発奮する技術者が是非、国内からも出てきてほしいものである。テレビ会議で、サンディエゴのメンバーと候補者面談を実施したのだが、彼はそんな雰囲気を感じてくれる技術者になってほしいものである。端末組込みソフト開発に10年余りの経験という人だったのだが自身を便利屋さんとして使う会社組織からの離脱を目指しているようだ。予定を30分以上もオーバーするビデオインタビューの結果はグッドだといえるだろう、頑張って殻を破ってほしいものである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。