業界独り言 VOL304 新たなる挑戦

今日は、防災の日のはずである。新聞の紙面では祭礼でパニックを起こさせた無手勝流の新しいテロ手法が報じられていた。防災とは異なるかもしれないが、最近の天災続きの状況で猛威を振るったハリケーン・カトリーナやら日本での地震など身近に起こっていると感じている。米国籍の会社仲間が東京から、週に三日は大阪に移動して顧客サポートをしている。先端技術を選択されているお客様の支援のためである。年末商戦をターゲットにした厳しい条件ではあったが、技術的にも商品的にも問題を解決し、最後の詰めをしているようだ。そんな彼は月末には夏休みを取得して実家であるノースキャロライナに帰国するのだという。ちょうど米国での研修が指示されている状況でもあり実家帰国がロハで達成できるという状況は、彼の最近の成果も含めて当然だとも感じている。そんな彼の実家は実はハリケーン・カトリーナの猛威の影響を受けたようだ。何事もないと良いのだが・・・。

仙台で最近起こった地震なども、Quad社では特に仙台地区での展開もないのでと思っていたら、最近のQuad社が買収発表を行ったブロードバンドワイヤレスネットワークベンチャーの日本代表が米国からのドラスティックな動きの中で「まさかQuad社で技術説明会をすることになるとは考えてもいませんでした」という前説をしつつの説明会が急遽企画され昨日ホットな中で行われた。技術的な感性からいえば、かなり感覚も近い技術として同類だなという思いを持った。無論Quad社でも同種の技術開発を競合として進めていた経緯もあったらしくそうした社内コンペティターとの技術融合を通して一体化した中でよりよい技術として仕上げていくという流れに繋がるのだろう。仙台では、既にワイヤレスブロードバンドサービス実証実験が行われているのでもあった。説明会のプレゼンをみつつ地震のことを思い出していた。

説明会を受講して新たなQuad社としてのビジネス展開などに思いを巡らしつつ一路新幹線で関西入りをした。あいにくと新大阪止まりの「700系のぞみ」ではあったものの、先頭座席のコンセントがないタイプだった。このところ確率では九戦三敗といった感じである。まあ最近切り替えた軽量パソコンは駆動時間が長いということもあり気にならないかなということでもあったが、コンセントが無いタイプの先頭座席はテーブルが短く最悪なのである。明確にビジネスのぞみといった名称で車両を分けて欲しいものである。お客様が増えてくる状況に対応していく為にはサポート力の強化も大きなテーマであり来年度の取り組みの一つには大阪事務所のエンジニア増員や事務所拡張なども取り上げている。長年取り組みをしてきた採用のアクティビティではあるものの目だった成果も最近では続かなくなってきた。幾つか自信を持って紹介した人材の採用プロセスが最終段階で失敗したりもしているので、少し慎重になっている自分がいる。

プロジェクトXよろしくの熱血ストーリーなどは、最近の携帯電話開発の世界では中々聞こえてこないようだ。そんな熱い血潮を支えるほどのリソースも滾る情熱をもつ若者たちもいないのだろうか。前者はともかく、後者はいてほしいと思うのだが、モチベーションを高く保ちつつ生き続けるような仕組みもないままにカツカツのリソースで忙殺され疲弊しながらともかく仕事をしているらしい。採算が合わないからと、一方的に開発リソースを一極集中して始めた開発すらも制御しきれずに頓挫したりしている状況が聞こえてくるのは決まって3GPPの人たちからである。大規模な市場が待っていると期待されて、ようやく普遍的な位置づけに切り替わってきた時代のはずなのに・・・。税金として取り立てるようなQuad社のライセンス料金が立ちはだかっているからだという人もいるのだが果たしてそうなのだろうか。いろいろな工夫をして開発コストを抑制して鎬を削っているメーカーもいるのだが、やはりグローバル開発に立ちはだかっているのは日本の鎖国事情が手伝っているようだ。

開発費用を浮かそうとして適用するのは、最近では次のような手法であるようだ。出来合いのレファレンスデザインを導入する。選択のキーワードはハードウェアコストであるらしく、開発費用の観点でのコストについては二の次であるらしい。開発に関しての関心事項は、ブラックボックスを避けたいという心でありオープンでないものについては導入したがらないのである。そんな風潮を受けてLinuxが流行っているような気もするのだが、もともとTRONは無料の上で公開もしてきたはずなのに何かおかしいと思うのだが・・・。坂村先生も納得はされていないのが最近の端末開発事情ではないだろうか。レファレンスデザインで提供されるソフトウェアを更に自らの会社流に修正を指示して懸命にカスタマイズさせていく風景もよく見かける。そうしないと国内のキャリアの仕様やら、自社の歴史に裏打ちされたUIが作りこめないとか、過去との互換性が取れないからとかいろいろな意見が出ているからのようだ。短期日に要領よく作り上げるというゴールや達成するためのストーリーを決めている割には、レファレンスデザインを叩き壊して作り直させている感じさえ受けるのである。

安く作り上げるということは、言い換えれば、国際標準であるノキア端末の仕様と同等に仕上げることだという説もある。国内のキャリアに向けて今まで各メーカーが鎬を削ってきた状況の製品グレードと比較すれば折り合わないという事実もあるのかもしれない。そうした国内での経験値をグローバルなスタンスでの開発に生かせるようなメーカーとしてのアクションをとり始めているところもあるようで、これは新たなる挑戦ということになるだろう。ドコモ向け端末やら、KDDIの端末にも韓国製や中国開発の端末が登場してくる時代を迎えようとしている。グローバルな規格の中で国際的に通じる企画の商品として端末が登場してくるのであれば、欧州市場にも切り崩していけるのだろうがuiの感性をカバーするのは大変そうだ。UIをXML化して対応力を強化する技術についても年内には商品としての登場が期待できそうであり、次の展開としてのプリセット利用やらビジネスアプリなどに向けた展開なども興味深い状況が待ち受けている。

ワイヤレスブロードバンド技術を適用した携帯との共用チップセットなども、視野に入ってくるしQuad社のカバー範囲の広がりとともにサポートする人材の更なる拡大が求められているのも事実だろう。自立したエンジニアで、自己の世界を確立したうえで好奇心旺盛に新技術などの裾野の広がりをケアしつつ伸びていきたいという前向きなエンジニアが必要である。ある意味でメーカーで行うべきテーマが絞り込まれてしまうゆえにメーカーとしての仕事と技術リーダーとしてのQuad社側でのサポートの仕事という範囲を考えると魅力的だと思うのである。しかし、外資というハードルが高いと見られるのか、あるいは不安だと思われるのかが鍵となるのか、求人活動の成果には繋がらないのはメンタリティが前向きなエンジニアで会社の状況が閉塞的な中に留まっているような人はいないということなのだろう。国内だけで開発が終わる時代は終焉を告げていて、自社開発するにしてもアジアな協力会社を得なければ採算も技術者も取り合わない状況である。

携帯電話のみならず、ビジネス端末の開発に向けてもQuad社のソリューションを使いこなしてバイナリー環境やLinuxなどを使いこなしてXMLでUIを作りこなしていく時代に入るのだとすればエンジニアの数も取り組みも刷新していく必要があるだろう。受動型のサポートではなくて積極的な前向きなサポートをしていくために十月からの新しい年度の流れでは新たなる挑戦が求められているのだとおもう。前向きでいろいろなことに取り組んで生きたいというエンジニアこそQuad社のようなアクティビティの中で実質を伴った提案志向のコンサルティングをしていくのが楽しいやりがいある仕事だと思うのだが。そうした楽しさを伝道していくことが当面の私の課題でもあり、前向きなアクティビティに賛同していただく周囲のサードパーティの方たちへの仲間作りなどの作業が重要なテーマである。新幹線で関西に移動しつつ、有望な印象があったかつてのお客様のエンジニアと面談をしてそうした楽しさを伝えていくことや、実務としてアジアな渦中で開発を推進されているお客様のミーティングに向かって翌朝から関西空港がフライトしたりしている。

熱い思いが感じられない流れの中で淡々と開発が進められている印象のあるレファレンスデザインを用いたグローバルな開発スタイルなども、実はレファレンスデザインの強力な力の結果を表していることなのかも知れない。レファレンスデザインを使いつぶして全精力をかけて取り組んでいける余裕のあるメーカーなどは数えるほどしかない。そこまで行けないメーカーでは国内先進メーカーのプラットホームを受け入れて妙味もない自社仕様へのカスタマイズのみに忙殺されているのは矛盾を感じていることだろう。また全精力をかけてプラットホームを使いつぶしていくような仕事の仕方をしているメーカーがなぜか成功しないのも不思議なものである。ある意味で少し引いた印象のレファレンスデザインの使い方のほうが効率よく開発が進むというような印象もある。レファレンスデザインの完成度を上げる仕事をレファレンスデザインメーカーにジョイントして進めることも、閉塞感のある国内の状況を改善する手立てだと私は認識している。

大阪地区の下町である南森町にあった関西地区のサポート拠点も、ベンチャーとしてのQuad社の仕事の広がりを支えていくには手狭になり、来年までには大阪駅前までに移転拡張する計画である。そんな状況の中で期待されるサポート体制のイメージはハッキリと私の頭には浮かんでいるし、実際にそうした形になるだろうと思う。そんな状況を思い浮かべつつ北京の街で仲間と中華料理に舌鼓を打っている自分がいる。六年前にQuad社にジョイントしようと決めたときにイメージした将来の絵と、出来上がったことにギャップは多少はあるものの概ねの方向性に間違いはなかったと理解している。そして、今あらたなイメージの中で自分が取り組んでいくべき方向性やお客様への貢献度や対象となる範囲の広がりなどを考えるとおそらく日本事務所の体制は、もっともっと拡張していくべきだろう。顧客への貢献実績を着実に上げていくために意識高い仲間を募って生きたいと思っている。

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