業界独り言 VOL336 ひとつ携帯UIを体系として書き起こしてみないか

世の中には、センスのよいUIをもつ携帯やらブランドを冠するようなデザイン携帯などまでも登場してきていて、過剰な機能の積み上げ競争で技術者が悦にいっていた時代は終焉した。そうしたことに存在理由を感じていたメーカーは焦りを隠せないのである。どんなデザインのケースの上にでも簡単に体系だった使い勝手のよいUIを構築できるようにならないとやっていけない時代になりつつあるのだ。UIで差別化を果たせると考えるのもある意味過ちなのかも知れない。ただし、そうしたUIがポータブルな状況でどのチップセットにも載せられるのかということはないのかも知れない。

日本にはソフトウェアの天才が輩出している状況がある。たとえばADSLやC言語のマルチバイト化などで名を馳せたソフトバンクのCTOのT氏もいるし、言語Rubyの開発をして世の中に知られているM氏などもいる。さまざまな天才の方たちが業界には、いらっしゃるのだがなぜか端末のソフト開発というキーワードに照らしてみると出来上がってこないのは積み上げすぎてきた歴史が長いからだろうか。複数のアプリケーションが独立したタスクとして動作を終端して互いに影響を与えあって動作するようなモデルが出来上がってしまったのは組み込みの歴史ゆえなのだろうか。

タスクの数だけチームがいて、複数の仕様の間の通信の複雑性が増加して、結果としてバグを消しきれずにというよりも生み出し続けてさえしまう。それは致し方ないことなのだろうか、思いっきり大きなイベントマトリックスを駆使して仕様を明らかにしていくということも必要なことになっている。試験条件ということと、アプリケーションの範囲とは必ずしも一致しないのだが・・・。ユーザーのユースケースとして試験条件には列挙されあてがって実施するということになる。複数の機能動作の相互作用に基づくバグを切り出していくために境界試験やら過負荷試験などのことを実施してUIの試験を達成していくのは大変なことでもある。

そんなUIの世界に異を唱えて、新たな新世界を描き起こせるのかという疑問もあるだろう。思うように動くUIがあれば心地よいだろう、かつてDOSしかない時代にStarが登場し、Lisa/Macが登場して思ったように動くWYSIWYGでOOPな環境が出てきたときの感動が携帯のUIベースに作れないのだろうかということである。実際にApple系列のiPhoneが登場しているのだから、それはアリだということである。マルチウィンドウが当たり前でクールなモーションで画面遷移をしながら構築される3DエアロのVistaのような環境も出来るのは間違いない。

しかし、そうした出来そうなことと、それらが実際に出来あがるのかということには大きな開きがある。大規模なソフトウェア開発の落とし穴として陥りやすい状況が携帯電話業界では蔓延しているのは、「誰も責任はとれませんよ」カードだ。誰かが思いっきり責任者となって引っ張っていくといった過去のパターンから、そうした牽引力が失われてしまい、残っているのは期限を切った形での研究開発というカードがあったりしたのだが、これも経験不足なメンバーや衛星会社のみで始めたりすることで本質的な点にまで立ち入れずに終わったりしてしまい、「ここまで作ってみました」カードを提示して課題が残ったままで、新たに、この先は「一緒に開発させてください」カードを差し出してみても、溝は埋まらないのである。

短期日を設定して工数計算でメンツをそろえてみることから考えていたような仕事の仕方が終焉したことに気が付いていないことが問題の始まりなのだが、だれもその点に言及することはなく昨日と同じ仕事を続けようとしている。UIに向けてコツコツとクラス作りをして積み重ねてきた少数精鋭の会社が数年かけて到達したフレームワークの広告ページを見ると実に誠実な、その会社の答えが表れている。いくつか、その会社が提供しているツールやフレームワークといったプロダクト群には、FAQ、説明、KNOWNバグなどがフォーマットとして使われているのだがフレームワークのKNOWNバグの項は白紙なのである。

フレームワークを積み上げていくということの大変さは、地道である意味でつまらない仕事にも見えるかもしれないのだが奥深い使われ方などに思いを馳せながら作りこんでいく大変な技術的にも深い仕事でもある。そうした仕事を長期な視点で確立していくといった研究テーマを今では国内のメーカーの研究機関ではもちえなくなってしまったように見える。そうした視点に立ち、ベンチャーとして只管仕事をしてきたOOPな人たちが日本にはいるのだということを最近思い返しつつ、また新たに京都で見つけたりもして手ごたえのある次の段階への計画を練り始めているのである。

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