空気人形

是枝監督の作品である。今年のカンヌの「ある視点」部門への参加作品でもあるようだ。
主演のペドゥナさんの演技が素晴らしいと感じた。

以前にみた、リンダリンダリンダでの印象からはうかがい知れない演技力が見て取れた。
是枝監督がゴーダ哲学堂に掲載された短編を見染めて9年間の構想を温めての作品となったそうである。

まぼろしの邪馬台国

久しぶりに一人で映画を楽しんできた、同書を書き起こした盲目の文学者である宮崎康平氏と、その妻和子さんの夫婦の物語である。時代背景も何も知らずに映画を鑑賞させていただくことになった不届きな状況ではあったものの。ロマンを追いかける魅力ある夫婦像を謳いあげる映画には、すっかり堪能させてもらった。

私にとっては、まだ見ぬ地である、島原ではあるものの次第に康平の追い求める原風景としての邪馬台国が被るようになり輝きが増してきたように感じ、一度訪れてみたい風景になりました。九州にはロマンを追い求める人が集まるのでしょうか。私の旧友にも、ロマンを追い求める夫婦が福岡にいますし、土地柄のせいなのか、風土がそう人に影響を与えるのか。

戦後復興の渦中での島原鉄道の前向きな経営が、その島原での天災に遭遇するまでの、豪放磊落なさまと、天災で受けた神託に基づく邪馬台国へのあくなき探究活動が社主を追放されても、彼のよき友人の助力と献身的な妻和子のサポートで成しえたのは、素晴らしい夫婦愛での二人三脚の賜物だろう。

イーグルアイ

近未来あるいは現代設定のストーリーである。最近の監視カメラ付きのコカコーラの自動販売機を人権蹂躙といったストーリーで破壊する輩がいるのだが、監視社会が徹底した世界でようやくe警察的な環境で人間がやっと落ち着いて生活が出来るのだとすれば、すでにその段階でこのストーリーが提起する問題にどっぷりと浸かっていることになりそうだ。

あまりにも冷酷といえる計算しつくされた世界の上で動かされているのだとすれば、とても悲しいしそんな状況を理解しえない中で暮らしているのだとすれば、機械にかぎらず9/11のような状況も含めて、この世の中はとても悲しい状況だといえるのだろう。見終わって少し頭の中で思考がショートしたような違和感があり、自分自身の中にもそうした部分が出来ているのかも知れないと感じ恐怖を覚えた。

三回忌、マルタの刺繍

父の三回忌があり、朝から駒込吉祥寺まで出かけた最近は、湘南新宿ラインが池袋まで直通なのできわめて便利である。休日の朝ということで平日にありがちなダイヤの乱れもなかった。大家族だった我が家も、親族として集う機会がヘって来た。積極的に訪問しないと途切れがちになってしまうのだろう。妹夫婦ふた組、昆虫取引で身を立てている兄、母、叔母そして我が家夫婦、法要を済ませ、卒塔婆を墓に立て父、祖母の墓に手向ける。大きな中華テーブルをお茶の水で囲み昼食にした。父の記念写真をDVDアルバムに起こしたという義弟の作品を流しつつの時間だった。今年の我が家の銀婚式に続き、妹夫婦も次々と来年から銀婚式が続くのである。姪たちの進路や学業の状況の話題、母、叔母姉妹の旅行の話などたわいもない話だが縁者の時間がゆったりと流れた。

お茶の水から腹ごなし、神保町、小川町と散策しつつ細君の散歩靴をニッピンで見つけた。しっかりとした作りでデザインも好みだということで即決まりとなった。通信販売でネット検索するよりも、こうしたものは散策で見つけるのが効率的である。また、そのうちにバーチャルで感触までも確認できるような時代になっていくのかも知れないのだが・・・。東京大地震で崩壊するという時代までは、少なくとも楽しみたいものである。大手町を抜けていくと、地下鉄工事と思しき道路工事をしている。ははんと思うのは、いわゆる泉岳寺から上野公園口まで結ぶ直線の地下ルートということらしい。成田新幹線計画の再開であるようだ。

東京駅を横断して、京橋経由で銀座に入り、シネスイッチ銀座で「マルタの刺繍」を鑑賞する。夢叶わず人生の落日の時期に花開かせようと努力する遅れてきた娘たちの話ともいえる。スイスの映画であり、カレンダーガールや、天使はこの森でバスを降りたなどを彷彿させるもので、お洒落なランジェリーショップを開店軌道に乗せるまでの挑戦が人生模様にはめられて事件と共に展開されていた。