VOL28 チキンという名のビーフ 発行2000/07/11

初芝時代からの知り合いが、ここサンディエゴにはいる。ベンチャーCEOのバラード氏である。忙しいらしく、メールの返事もいつも夜だった。週末にあう約束になり日曜の夕食を一緒にとった。昨年までの彼の欠点だった資金集約能力という点にはメリルリンチがあたることで仕事としては順調に推移しているようだった。彼の車は相変わらずでいつ洗車したんだというようなありさまだが、そんなことは気にしないのがこの国の流儀だ。個人の範疇である。
 
ホテル前でピックアップしてもらい、お勧めの静かな店に入った。お勧めの地ビールを堪能しつつ、チキンという名前のビーフ料理を頼んだ。X86を束ねるマルチサーバーを技術の根幹にしたベンチャーであり、現在は第三世代に突入していた。第三世代はアービターCPUをmipsにして、残りをcruesoeにするという戦略で、ようやく彼も低消費電力とアプリケーションの両立という壁に対しての答えを用意するようになってきたらしい。自前のosに切り替えた第二世代のサーバーは既に稼動していて「HACKME」とハッカー達に誘いの手をかけているらしい。こうした実績をもとに政府に対してセールスをかけようと攻勢をかけているようだ。スケーラブルサーバという言葉を一昨年からいってきたがこの秋には商品として登場するようだ。i-modeなど引く手あまたな市場なので、同様のアイデアのライバルが現れるに違いない。彼の健闘を期待しよう。
 
もともと東川という観点でいえば,溜池テレグラムのドーヤサーバなどをベースにしてこうした技術を期待しての接点だったのだが、昨年の東川のスピンアウトも含めて互いに機会としてよく符合した事件をいくつか経過していた。二年余りになるサンディエゴでの開発体制は、来月にはオレンジ郡に移動するのだという。もっと安くて広くて便利なハイテクタウンが出来たらしい。新サーバーを売り出していくには新たな土地での新オフィスも良い刺激だろう。環境を整えてかかった仕事はうまくいくというのがPHSの時の経験だったが、ワイドになってからのそれは、やはりうまくいっているのだろうか。本当の意味での環境が整えばきっと成功を導くのだろう。
 
QUAD社に移籍してからの東川にとってもバラード氏のテクノロジーをうまく使えないだろうかといつも思いをめぐらせている。幾つかの選択肢の中に考えるようにしている。ケータイという文化の異常なスピードや広がりに対して技術として提供している素地が、いろいろな意味でまだマッチしていないというのが日本からみた状況であり、溜池テレグラムが躍進している理由でもあるのだろう。そういうユーザーから見たサービスという観点と採算という観点は別であるしベースの要素技術という観点から見た内容もまた、あまり正しく認識されていないというのも変な世界である。おかしな話であるが、このままケータイインターネットが普及していくには採算に乗せる必要が出てきてオマケの重みでキャラメルがつぶれてしまいかねない。あまりデラックスなおまけをつけるとキャラメルではなくなってしまい、広告費用では賄えなくなるのだ。
 
スクリプト言語を搭載してコミュニケーションの世界に一矢報いようと考えたのは5年も前の話であり、この五年の間に状況はどんどんとそういう形には近づいてきた。しかし漸近線であって、なにか間には溝がある。まだ,何か時期尚早の話なのか,手ごまが不足しているのか手がたらないというのが実感だ。簡単な話で解決がつきそうな話がたくさんある割にはたくさんありすぎて複雑な話だけが議論にのっていくWAPな世界が世界の趨勢なのだろうか。WAPでかつ愛のサービスな世界というのが今、東川の脳裏には走っている。何か答えがありそうだ。東川は難しく考えて簡単に解くのが大好きなのだ。簡単にといて見せるために大胆な仮定と新技術が必要であり、そうした技術バランスが崩れる点をいつも追求しているのが東川の楽しみでもある。ほっておいても要素技術は伸びていく、ただしそうした要素技術を結び付けてバランスの崩れを利用した新しい世界をみせるのはベンチャーも大企業も変わらない。

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