VOL89 ROMエミュレータからJTAGへ 発行2001/3/10

BYTEな戦友たちといった印象の人たちとの出会いは、いろいろあるが、ROMエミュレータについて語った京都の仲間との出会いは印象的だった。元より当時訪問した理由は、クロスアセンブラの提供依頼だった。当時、開発したクロスコンパイラをMSDOSに移植する過程でMSDOS版のまともなクロスアセンブラを入手することが必要になったからだった。当時としては先進的なソフトウェア開発キットを商品化して作ることになったからだった。まさか客先にVAXやHPのWSを持ち込むことは出来なかったからだ。

インターフェース誌上で展開された塚越さん、山本さんの記事が目にとまり京都郊外の新興建売住宅を訪ねた。二階の窓から看板がかけられていた。社長と専務という関係のお二人でのベンチャーカンパニーへは日本酒を抱えての訪問と相成った。組込み開発でCコンパイラを開発してICE無しでソフトを開発する可能性を話したり、あるいは4ビットマイコンなども含めてROMべースでのデバッグをしていくうえでトレース可能なROMエミュレータを提供していたHP(現アジレント)の製品の話をした。彼ら自身がこの特殊なエミュレータの大量の導入を驚いて訪問してきた事もあった。問題はコストだった。

ICE特有の不自然さが払拭されてリセットからの動作が全てデバッグ出来るという点やピギーバックの様々なマイコンの開発を実現していた。アセンブラを各ユーザーが定義できるという機能も含めてアジレントの開発マシンの時代は続いていた。後年、山本さんたちが出されたROMエミュレータは割り込み線のサポートを加えて通常のフルICEと同様な機能を網羅した魅力的な製品を出してきた。この後、山本さん達とは会社が開発していたマイコンチップの開発環境の中核として関係が出来てきたりしたこともあり不思議な出会いを思い返している。

今、携帯電話の開発環境はROMエミュレータやフルICEからJTAGに移行するようになり開発支援機器メーカーも淘汰されてきた感がある。一見同じようなJTAGデバッガもコンパイラとの整合性や、実機との整合性など実際には見えてこない点が多くあり、JTAGという言葉での印象も最初に出会ったJTAGデバッガの出来により異なった印象をもたれている技術者の方に分かれるようだ。

リアルタイムトレースを必要としているメーカーの背景には、多くのグループの開発したモジュールを組み上げていく上では必要だと感じるのかも知れない。FULL-ICEで搭載してきたデバッグ方法の踏襲から抜け出られないのは開発方法の変更による責任を回避したいからかも知れない。かつてのICE不足などの状況から脱皮すべく潤沢なマシンやデバッグツールの確保に走ることに費やされているようだ。

携帯業界でのデバッガ需要は、cdmaに限ってみても500台位になるようだ。デバッガという業界では、適用するターゲットが多種多様であり顧客の環境も含めて対応力が問われる業界でもあるらしい。そうした中でデバッガ対象となるチップや目的が一環している携帯業界という枠でのデバッガ事業には量産性と対応コストが効率的なこともあり美味しい分野のようだ。

携帯端末の高機能化などから、FULL-ICEでは制御できなくなる時代を迎えたのも手伝い、JTAGデバッガへの移行を余儀なくされる状況になっている。各メーカーも刷新が迫られている。開発精度の向上などが求められている現在では、カバレージテストなどの項目やパフォーマンス解析などの点にもっと重点を置かれてくるようだ。さしあたって、使えない印象のあったUIソフトを持ったJTAGデバッガは無くなっていくだろう。

今後チップ組込みのTRACEマクロやJavaアクセラレータなどとの共存などに更に機能が深まっていくだろうが、これから年末にかけてのチップ展開での開発レースの第一コーナーを回り始めたというところだろう。使いやすいUIで変換ソフトを掛けずに開発したソフトを実際の機器に展開できる事という出走条件を整えたメーカーが出始めた。第二レースは、連休明けに始まるが新たなメーカーの登場を期待したいものだ。性能が良くて、バグを出さないというテーマを短期間に実現していくためには、道具立てだけで達成できるものでは決してない。開発プロセスの重要度はNECの成果からも明らかだ。

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