VOL102 シングルからツインへ 発行2001/5/11

シングルベッドからツインベッドへの話ではない。モデムチップを開発提供しているQUAD社としては、モバイル先進国である日本の爆発するアプリ環境を支えるチップとしての機能強化を進める中で悩み多き時代となり始めている。現在の32ビットマイコンでの範疇で出来ることの限界に近づきつつあるという。

シングルからツインになるとシステム開発の複雑さが増大することから、出来る限りシングルで実現したいのが背景にある。通話だけすれば結構という時代ではなくなり、メールも写真もあたりまえになりつつある。カラー静止画のみならず動画までもという時代背景から、分散処理も必要になってきたのである。

性能を向上するという目的だけに限ればCPUのクロックを向上するという単純な話であったりするのだがバッテリー動作の携帯電話というアプリケーションでは放熱器が必要になるような方法論は取れない。CPU組み込み状態で大容量の内蔵高速DRAMやらで実質的なMIPSを増大させているのが最近の流行だ。

組込みDRAMという技術では日本メーカーの技術もたいしたものであり、デジタルカメラというアプリケーションで一躍名をはせたマイコンメーカーもある。携帯電話をターゲットにして開発してきたマイコンもあったのだが、現在の主流になっているのは英国製のマイコンである。

さて、とはいえチップを高速にするにはパイプラインの改善など基本的にはコア面積が増大する方向で、いわゆるチップビジネス的にはコストがかさむ方向になる為、出来る限りシンプルなコアで性能を引き出すようにしているのが実情でもある。匙加減までも実際に設計しつつ追求しているメーカーでもある。

当然、面積を抑えて消費電力も抑えて結果として双方のためになるというのが、QUAD社のスタンスであるわけだ。そうした流れから逸脱しはじめてしまったのは複雑高級な機能を網羅した日本のケータイ文化である。組込み得意という日本のお家芸的に数々の機能を入れてきてしまった。カラーで漢字な世界である。

基本モデルはシングルで上位モデルはツインでというのがチップメーカーの考えであるのだが・・・機器メーカーは低消費電力で高速なマイコンにしてほしいという一点張りだったりもする。ツインにすればメモリセットもツインで必要になるからでもある。結局チップコストの話からチップメーカーに押し切られる。

組込みRAM内蔵の次世代チップの頃にはバランスの取れた設計になってくると思われるが、当面は高機能モデルには部材価格の高いものとなりそうだ。チップメーカーとしては、アプリケーションプロセッサなる概念を持ち出して新市場の到来としてEPOCなどの移植を実際に手がけてスマートな機器に対応した。

しかし、顧客自身でもアプリケーション部分についてはチップ開発を進めたいらしくRPCや高速通信などの機構を搭載しての分散処理を、異なったマイコンで異なる開発環境やエンディアンの相違なども含めて解決していこうという気概にもなっているらしい。こうした動きで性能が果たして向上するのかどうか・・。

仮想記憶を素直に実装して従来のRTOSとの互換性を果しつつWINDOWSの如く複数のプロセスを稼動させた携帯電話専用のライトなOSがQUAD社の回答でありアプリケーションの移植にも留意を払いモデム側のAPIをRPCで叩けるようにして従来のアプリケーションを別プロセッサに移行させるのだ。

チップを作りたいという顧客の動きや現状のソフトを修正する余地を出来るだけ減らしたいという現実的な要望などが飛び交い、アプリケーションの引越しは、新規機能を中心としてモデム側からRPCを行いたいというような方向になってきたりする。一時的な状況であるとは思うのだが、何とも釈然とはしない。

こうしてアプリケーションを仮想記憶の上で動作させてダウンロードアプリを、安心して利用できる・・・といった状況には、こうした状況ではまだまだ到達しそうも無い。幾つかの将来への布石を打ちつつアーキテクチャの提案をしていくしかない。開発体制の性能改善を図らなければこうした開発は出来そうに無い。

なぜか泥臭い開発を好む風潮が国内メーカーの技術者には多く見かけるのだが。そこから、足を洗ってすっきりとスマートに開発したいと思う人材を待望したりしつつする今日この頃でもある。

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