VOL109 次世代携帯の夢を追う 発行2001/6/20

二週間の出張が終わり帰国すると、国内での出張ラウンドが待っていた。一日に二つのお客様を回るペースで四日間を過ごした。まとめをする金曜日にはかなり疲れてしまった。プロダクトマネージャーやソフトウェアリーダーを日本のお客様に連れていき問題認識を深めて次世代チップなどへの反映が図られた。

同一時差で暮らしてきた仲間とそのまま時差に突入してしまったせいもあり、互いに疲れを感じつつの出張行脚となった。西東京の一部のお客様は、乗り換えも含めて気持ち的にはかなり遠く感じたりするし、新幹線で向かう必要のあるお客様が、かえって近く感じたりもする。

奈良駅に直結したホテルに泊まることになったのだが、学研都市線で奈良に向かう途中ではラッシュアワーと共に途中からは車両切り離しに出くわして木津につく頃には周囲の風景は一転しまっていた。木津から奈良までは程なく到着しようとしていたのだが周囲の夜景からは、果たして夜の食事の心配を始めていた。

幸いにもホテル内のレストランでのラストオーダーにはまにあった。こうした規模のホテルには珍しく大浴場もありゆったりと浴槽で足を伸ばすことも出来た。修学旅行の団体もフロアによっては使っているようだ。夜中に電子メールが繋がらずに閉口したが、交換機が無料通話のダイヤルを国際電話と解釈したのが理由だった。

ほぼ田植えの終わった水田風景の中を雨を縫って顧客先をタクシーで回るのだが、サンディエゴのメンバーは当然の如く傘など持ち合わせてはいない。昼食を顧客近くのハンバーグレストランで取ってから距離的にはほどない中も折りたたみの傘ではビショビショになってしまった。待ち合わせのショールームにはPDAがあった。

次世代携帯の中核となっているPDAライクな世界は、まだ誰も信じていないのが事実だ。現在全く存在しない市場には、PDAの世界からの延長線あるいは携帯からの延長線という事で予想していくしかないというのが各メーカーの方々の考え方だ。検討してみた上で弾き出したコストでの採算性と商品力と利便性は不透明だ。

個々の要素技術に立ち返ってみて、徐々に取り込んでいくというのは考え方としても納得性の高い方法である。昨今慌しい携帯ソフトの完成度を高める方法として、製品としての回収を避ける目的でメモリプロテクションを採用するのも考え物だったりする。開発プロセスの改善といった長期的な観点での取り組みでは不足なのか。

誰が使うのかという観点、そしてそのコストおよびビジネスモデルなどがコンセプトから実需への展開のなかで迷走しはじめているようだ。オプションで接続する事でお茶を濁そうという展開も当初のメール端末などからみると正しい選択肢かも知れない。端末との接続仕様が性能を満たすのかどうかの議論はあるだろうが・・。

携帯電話から次世代携帯に移ろうとしてベースとなるチップセットも産みの苦しみを感じている。コアの改変やら開発環境の整備など難題が山積している。携帯というビジネス全体が要望しているものに応えようとしているのだが、ライセンスビジネスとの関連などまだまだ難関は多いようだ。気がつくとコピーライトだらけだ。

コピーライトを進めている会社でコピーレフトなLinuxでも採用すれば面白いと思うのだが・・・。サポーター体制などが課題になるようだ。いずれにしても、メモリ保護のかかる時代に突入しようとしている。コストと品質の二つが背景にはあるようだ。性能向上に押されてキャッシュもつみモードも増強する一途だ。

電話機としての性能を高めていくべきか、モデムとしての性能バランスに傾注すべきなのかという議論がある。ターゲットとする分野は異なるからだ。ただし、後者については新たなジャンルであり次世代携帯とPDAの中間的な位置付けの不透明な状況である。ザウルスもありEPOCもありCEもあるわけだ。PALMも・・

忙しい開発アイテムを戦略マーケティングと共に配置していくことが、必要ではある。実際にお客様方が成功して達するのであり現在のWCDMAのような見世物であっては困るのだ。ビジネスモデルとしてコンテンツ屋とチップ屋(ソフトもあるが)と製造屋さんと方針を決めていただくキャリアという構図である。

自分達の技術ロードマップに自信を持ちつつも現状の動きとの綾なす中、激論を太平洋を挟んで戦わせているトップマネージメント同士の戦いの記録なども非常に参考になる。記録が残るメールの仕組みで戦いあうのは相互に確たる自信や意見があるからに相違ない。電話で説明をするような類のマネージメントとは一線を画す。

みな、次世代の現状と未来について色々な意見があるからだ。色々な方式を開発している人たちの状況などをみているとまだまだ判らないというのが正直な感触だ。サンディエゴで大学のセミナーコースを一日受講してGSMのおさらいなどをしたが、インフラ構築の話などが中心で既に欧州をカバーしたことの裏返しだった。

もう技術論ではなく、政治の話となっているような気がしてならない。技術論から展開を予測していた人たちがいるとすれば、その予測は外れてしまったようだ。GSMとCDMAの両用機がワールドな答えになってしまいそうだ。その次のワイドな展開に繋がれば良いのだが、技術論の好きな欧州人の議論とビジネスは別だ。

次世代のキーフィーチャーとして画像センサーやユビキタスコンピューティングの為のシンクロナイズ技術やマルチフォーマットのビューワなど楽しいテーマが盛り沢山である。提供する側、使う側ともに大変なボリュームの仕事になりそうである。RTOS開発していたメンバーもアプリを含めた広がりを楽しんで(?)いるようだ。

日本語のアプリケーションを実際にデモしたいので実機で開発させてほしい・・・と単身、サンディエゴに乗り込んできたのは彼であり、おかげで二週間の滞在の後半も車に不自由することはなかった。渡航決済などの手続きはメールの返事のみでOKである。マイペースな中で時期を得た開発を分担して、彼は光っていた。

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