業界独り言 VOL112 ワールドカップに向けて

次世代携帯が、華やかな情報と昨今の回収問題との狭間でゆれている。期待に満ちた動画ケータイが投入されてめくるめく魅力的なコンテンツが出回るのだろうか。試験運用からシステムの運用上の技術的な課題が解決されて、端末のプライスも安く抑えられた「すごいケータイ」が登場する筈なのだ。顧客は、皆待っている筈なのだ。

さて、次世代ケータイのターゲットは、当然ワールドカップなのだ。中村俊輔のフリーキックの瞬間を誰かが録画した内容が「俊輔くーん」と叫びながらメールに添付されて、送付されたりするのだろう。メインスタジアムの最上段で観戦している人たちにとってはフェンス越しに誰かが撮影したMPEGの瞬間ムービーが、あれば超嬉しい。

面白いコンテンツが増えて今までよりも高速にダウンロードが出来ても、その請求書をみて更に縮こまってしまうのでは、致し方ない。ワールドカップの開催会場である韓国で使えるようにWCDMAに乗り換えてくださいというのはメーカーの勝手な言い分である。しかし、横浜国際スタジアムで利用できるような動画インフラは無い。

動画をサポートしていく上でWCDMAでの帯域幅が不足してしまう事実は否めないもののセルサイズを小さくしていくことで対応は可能であろう。セルサイズを小さくしていくのであれば、次世代PHSの方が現実的だ。あるいは無線LANという選択枝もある。WCDMAから無線LANに向かっているキャリアもあるやも知れぬ。

そもそも、予想以上の増えてしまったセルラーユーザーの収容力向上が目的であったにも関わらず導入ストーリーで始めたIMODEが火に油を注いでしまったのが現実の状況であり、カスタマーは先送りされた負債を払う気持ちはさらさら無い。かかるコストを請求する公社時代からの気風では、もうやっていけないはずだ。

公社時代の気風を良しとしているのは、メーカー側にもあるのだろう。電々ファミリと称せられた時代の仕事にあこがれて来た通信機メーカーでは一極集中で自社のコスト追求もあまり無く生産販売に預かれるということを望んできたのだろう。いまは、そうした原資となる電話の需要は冷え込み、新入社員も携帯しか持たない時代だ。

電話の交換機の費用が基本料金から賄われているのであればみかかもジリ貧で溜池テレグラムにすがるしかないのだろう。ISDNからアナログに逆行しているとも見える中でもいまだに在庫しているISDN機器を売り込みに走っている姿は、在庫を不良債権にしないための方策なのかもしれない。解約されたTAの使い路はなさそうだ。

ブロードバンド化が進む状況で、通信費用は下がる一方だ。携帯電話が次世代に向かう中で通信費用の検討が課題になっているのは現在の電話機が高すぎるからだ。一年毎に買い換えるというような風潮を生み出してしまったのは、通信キャリアなのだがこうした点はアメリカ以上の浪費大国に日本がなってしまったことを意味している。

物の対価をキチンと払う。という当たり前のことを忘れていると、通信費用の中身などが見えないままになってくる。使いつづけたいインフラがいつか突然なくなってしまうということさえ起こるかも知れない。顧客満足を得られない通信キャリアは撤退していくのは携帯業界の将来の一つの可能性でもある。

「面白い端末は作りたい、しかし面白すぎる端末は考え物だ」と話す関係者がいるのは業界全体として財務上の体力勝負になってくるからだろう。とはいえ、キャリアによっては、増えすぎた顧客はいつまでも電話の通じない携帯電話を持たされて、彼らから基本料金のみ収集する姿はさすがである。繰越サービスなど有りえないのだろう。

本当の意味において、顧客を満足させる次世代電話の商用化サービスに切り替えられる時期は何時になるのだろうか。時間をかければ、ソフトウェアの開発も端末の開発も追いつくのだが目指しているサービス内容は果たして顧客の求めていたものなのだろうか。護送船団方式で取り組んできたことのツケは誰が払うのだろうか。

低価格な通信費用の実現と適正な価格の端末開発の双方とが達成されるのが、まさに次世代携帯のスタートなのだろう。現在の携帯電話の実情価格が明らかになり、これよりも高額な次世代携帯のサービスが始まることで現在の電話機を大切に使うという日本から失われたモラルを教育しようというのが、その底流にはあるのだろうか。

ADSLで高速低価格は当たり前になった顧客にとって「高速・低定額」は当たり前となり高機能の電話機を使うのも流行にはなるだろう。トータルでの通信費用が下がるのであれば買い換えるということはありえるのだろう。ただしこうした変革が起こることで通勤途上の車内でのモラル低下と衝突はますます増えそうな気がする。

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