業界独り言 VOL119 夏休みの終わりに 発行2001/8/20

携帯電話にJavaやC++で書かれたソフトウェアが提供される時代になろうとしている。初期のパソコンと違うのは機種の相違を出来るだけなくそうとしているとしていることである。もともとプロセッサが多岐にわたっている通信キャリアと、プロセッサが特定メーカーに極端に偏っている通信キャリアでの取り組みではあるが、プラットホームとしての考え方でJavaに向かうものや、偏っていることを応用してC++に向かうものに分かれている。

ソフトウェアを移植していく側とプラットホームを構築する側との双方がメジャーを目指そうとすることが、そこには現れてくる。特定CPUに偏っていることをベースにしているとPCで言うところのx86アーキテクチャのように捉えることもできる。溢れ返った様々なソフトウェアを組み込むことが必要とされる機器メーカーにとって似て非なるライブラリを各々が抱え込んだ形のアプリケーションを集約すると儲かるのはFlashベンダーになってしまう。

機器メーカーと通信キャリアの歪んだ未来の見せ方により尻すぼんでしまった形の現在では、フラッシュベンダーも当てが外れてコスト的には更に買い叩かれてしまうのかも知れない。APIを整備していないプラットホームあるいは既に完成されたソフトウェアの集約のみを目指した成果としてはコスト高を生み出してしまう。APIを企画した人たちは、そのAPIで実際にアプリケーション構築をしてみるのが効率的な姿だと思うのだが・・・。

Linuxなどの世界で魅力的なアプリケーションを少し纏めてみた結果集積されたAPIをベースにしてデスクトップのAPIを纏めていったGNOMEのような進め方は実質的に良いものになっていくのかも知れない。まあAPIを企画している人たちが自分達の仕事を最小限の作業に抑えようと考えるのか、ユーザーにとって最大限の効果を得るように考えるのかという観点の違いで大きく内容が異なってしまうのだろう。

いま、プラットホームを整備していく人たちにとってはアプリケーションベンダーと再構築をして次世代商品としての魅力の中にコストダウンというものも織り込んでいこうとしている。通信時間と端末コストと色々な制限下で行われている携帯電話の上のソフトウェア競走というものは、大変ロジカルな世界で挑戦のしがいがある分野だと思うのだが機器メーカーで感じる時間は少ないのかも知れない。

機器メーカーは、競合メーカーとの共同戦線に入り拡大してきた路線からの変更を余儀なくされている。様々な端末やサービスを期待しているユーザーとの格差は広がるばかりだ。離陸しない次世代電話と新製品の閉塞感のある現状の携帯のながれをブレークする新たな風が欲しいところだ。通信キャリアと組む限りにおいては、中々強い戦略が打ち出せないのが閉塞感の源流ともいえる。通信キャリアの買取すら辞さない外圧を求めているのは顧客自身なのかも知れない。

絵空事よりも、日常に使えるサービスをコスト安でサービスして欲しいのはブロードバンドだけではない。携帯の通信キャリア自身が、機器メーカー以上に大企業病に蝕まれているのが挑戦できない体質なのかもしれない。日の丸通信キャリアから迎え入れた経営トップの方が、競争相手として日の丸弁当からランチボックスに切り替えられないのは自明の理なのかもしれない。

政治的な戦略兵器と技術的な戦略兵器とをあわせて持ち出していかなければ、携帯デフレの夏休みから新学期に向けて溌剌とした仕事に入れない技術屋が増えてしまうのかも知れない。キビキビと動作するライブラリやアーキテクチャを抑えた上で様々なサービスを提供していけるように新たなチップやアーキテクチャ整備の流れに香辛料としてのバランスをつけて低消費電力でサクサクというフレーズを目指している。

モデム屋なのかシステムアーキテクトなのかという観点でいえば、QUAD社が目指しているのはアーキテクトであり必要なインテグレーションを果たしたチップセットの提供を志向している。ワイヤレスPDAというような世界で言えばイネーブルカンパニーとしてのスタンスであり開発してきたプロトコルスタックもパッケージとするビジネスなども進めている。偏ったチップの世界ではあるがソースコード共有をしつつアーキテクチャの壁を越えようと挑戦するメーカーも現れるかも知れない。

プラットホームを整備する・・・ということの重みをどれだけ理解しているのかは実際に開発に従事したメーカーでなければ理解しえないのかも知れない。そうした開発に投じてきたリソース費用を理解したうえでパッケージの価格に思いをはせるメーカーと、無理解な中で土木工事に殉じようとしているメーカーとの間には隔世の感がある。そのツケは最近の携帯回収の不具合で露見してしまった。機器メーカー同士が共同戦線を張る時代なのだろうか。

日の丸キャリア向けに、iMODEのプラットホームの開発整備をすすめてきたリーダーが、チャレンジしているのは新たなプラットホーム整備を全く異なるスタンスで始めている。チップやプロトコルのノウハウとパテントによる大きな意味でのプラットホームの中での上位層のプラットホーム整備が彼の戦場であり、アプリベンダーの自立という大きな取り組みでもある。

提供できるチップで少しでも性能を改善向上するアイデアを模索するのもそうしたプラットホーム整備の立場の中の低位層での取り組みである。システム的な捉え方をローカライズした上で為しうるオプションを考えていくのは日本オフィスの仕事でもある。DSPとの分担やスクラッチパッド領域の設定などもあるだろう。液晶ベンダーと組んでカラー液晶での画面スループットを模索している仲間もいる。中々楽しい職場だ。

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