業界独り言 VOL126 最初は小粒で・・・

山椒は小粒で・・・が正しいのだが、最近の携帯電話では最初から巨大なのだ。日本 のハイテク機器全体がそうなのだろうが、新製品で新分野に出るものは機能が唸るほ ど入っていて良くわからないものが多い。次の段階の製品でコストダウンを考えつつ 機能シュリンクをしていくという流れは何時の頃からか定着しているようだ。最初の 製品でピリっと効く所があれば、広がっていくのではないかと思うのだが・・・。
 
実際の端末価格が、顧客から見えないように補填されて提供される通信キャリアで扱 われるハイテク製品・・・それが携帯電話である。ユーザーの価値は当初の購入価格 と以降のランニングコストである。幸いにして現時点での激しい通信キャリア同士の 競走の渦中ではユーザーがメリットを享受しているのだろう。通信トラヒックが溢れ て新機軸を打ち出さざるを得ないキャリアと、先行されたキャリアを追走して差別化 した新機能で追い打ちを掛けているのが現状だ。
 
開発技術者同様に、通信キャリアも疲弊している。開発依頼する内容が高度化してく る中で新製品開発での仕様検討なども、標準化作業などとあわせた形での通信キャリ ア間の調整活動なども含めて目白押しだからだ。彼らの評価は、新規契約数の追求で あり、結果が出ない端末の開発依頼は尻すぼみだ。各キャリアともに新しい未来に向 けて見えない方向を模索している。ドッチーモと同様な戦略で複合電話機がまた開発 されている。
 
デュアルモード機が、登場するとは思っていたのだが何故かWCDMAとの両用機ではな く、シティホンとの両用のようだ。確かに米国などではアナログ携帯との併用が当た り前なところもあるので不思議ではないのだが、全米をカバーした利用形態にあわせ るための策でもあった。日本では、そうした必要性は無いはずなのに、あえて狭い範 囲でしかサポートの無いシティホンとの両用機を出すのか。都市部での周波数不足問 題を解決するというのが目的なのだ。言い換えると、これが達成できると当分WCDMAの 必要性がなくなるのである。
 
二つの電話機の機能を足し合わせて倍のハードのコストにはならないのだろうがテス ト項目は倍以上になるのだろう。最近では、PHSもデータの目的として十分な存在 価値が出てきているのは、FOMAなどでのコストが明確になってきたからでもあろ う。収容能力を高めて収益力を高めるという目的で開発されてきたFOMAではある が、PHSや無線LANという範囲での応用が広まってくるなかで期待していた収益 力という背景は変容してきているといえる。
 
テストの効率化を図る為に自動試験装置の開発を行っている知人もいる。キーボード を物理的に押したり、液晶画面をカメラで捉えるというまさしく鉄腕アトムに仕事を 手伝ってもらうような機能ではどうかと思っていたら、液晶コントローラへのバスを キャプチャしたり、若干のソフトウェアの介入を行いシリアルでキーボードのイベン トを挿入するといった工夫で対応されたりしている。これならば、不確実な大規模な ソフトウェアのテストを確実に進められるのではと納得させられるものであったりも する。とはいえ全てのテストが解決するわけではなく繰り返し性の高いテストには向 くものの感性に訴えるようなテストについては人手が必要なのである。
 
当たり前と思ってきている機能にも、疑問をさしはさむ余地があるのではないかと感 じることも多い。携帯電話のソフトウェアの複雑さを考えると触りたくない部分もお おいようだが。DVDレコーダを購入してビデオ代わりに最近では活躍してもらっている のだが、最近のAV機器はパソコン以上に未完成交響曲を演奏しているようだ。確かに 色々な機能があるのだろうが余りにも増えすぎたソース(入力)に対応出来なくなって いるようだ。
 
さて、マリリンマンソンの出演していた今年の夏のイベントの再放送がデジタルBS で行われていたので恐らくとりを勤めている時間帯を狙って高画質で録画しようとし たのだ。むろん流し撮りもしたいのでアナログのビデオで三倍にして全体も取ろうか と考えた。しかし、実際にはデジタルBSの再生出力は、デジタルレコーダであるD VDレコーダにのみ結線していたので、AVアンプでビデオ同士のダビングモードに してアナログ側でも録画が可能になった。
 
落とし穴は次にあった。高画質モードで録画しようと考えた最後の時間帯を狙っての タイマーが仕掛けられないのだ。タイマー録画をセットするとビデオのダビング回路 までもシャットダウンしてしまうのだ。従来のビデオの概念で言えばタイマー録画と いうものは、そうしたものであったのかも知れないのだが色々な世代の機器が共存す る中で果たす役割というのは、新しい機器の機能がその橋渡し役だったりもするので こうした矛盾に遭遇する。ソフトウェアの制御でいえば、ダビング機能を利用してい るクライアントがいる場合には、電源切断をしないようにするためには、オブジェク ト指向的な考えで設計しておくことが大切だったりする。
 
他方、そうした設計手法で開発されたモジュールを従来の概念でしか設計できない人 から見ると理解しにくいというクレームに繋がったりもする。まだまだDOS的な考 え方での設計が組み込みでは主流をしめていて、Windowsのようなイベントやコールバ ックといった概念での設計にはなり得ていないようだ。デジタルAV機器ということ で需要を喚起しようとしている電機業界なのだが沢山存在している各ユーザーの資産 との共有を図りつつ使いやすいものを提供していくためには、まだまだプレークス ルーが必要だと感じる。
 
「そんなことも出来ないの・・・」と冷たくあしらわれてしまう最新型のデジタルB Sテレビやレコーダ達を見ていると開発の裏側も見え隠れするために「しようがない な」と一人思ってしまうのは間違いなのかも知れない。何かまだ革新が足らないのだ ろう。次世代携帯という契機に、こうした革新を確実に進めていきたいと思うのだが 山ほどもある機能リストに埋没されている現状も見えてきて、支援するポイントを模 索している。
 
体制の刷新やらプロセスの改善やらというのが、各メーカーでは前にも増して表に出 てきた。知人の名前がマイコン開発センターの所長という人事通達として新聞に載っ ていた。四半世紀オリジナルマイコンの開発に費やしてきたことを知っているものと して、彼がこの時代のなかでどのようなコンセプトのマイコンやソフトを繰り出して くるのか楽しみでもある。お祝いに茶菓を送る事にした。所長さまならば部署は明確 なので届くだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。