業界独り言 VOL236 ベンチャーと大企業 発行2003/6/7

友人の無線屋からメールが届いた、相変わらず忙しいらしい。前向きな忙しさなら良いのだろうが、どうもそうでもないらしい。まあ忙しいとメールで打ってくる場合には、少し心亡くしている状況であることに違いは無いだろう。メールを打つ気持ちまでも失ってしまうような状況では無いのが救いともいえるのだろう。メールを打ってくるのはある意味で彼の心の防御弁でガス抜きがてらの様子だ。SMSで労苦を詠んだ狂歌を送付してきたりするのは、渦中からだったりもするようだが。休日には自分自身に戻りつつ始まる週にあたり気持ちの整理や対策を考えてのことで心情メールとでもいえるのかも知れない。日本自体の製造業での閉塞感にあって、さらに焦燥感を推し進めるのはそうしたなかでの無意味な競争やデフレに伴うコスト圧縮要請などにいままでの開発成果を含めたビジネスモデルが破綻していることなのかもしれない。

いまやお客様毎にメーカーがカスタマイズした仕様で無線通信システムを開発納入システムアップを出来るような状況には国情が達していないというように感じるのだがいかがなものだろうか。言い換えれば、今ある製品群のみで対応していくしかないので、今自社に無いものはOEMするしかないのである。新規開発投資していけないだろうということである。あるいは、未だにそうしたビジネスモデルで動いている部分があるとすればバブル後遺症のメスが届いていないセクションといえるのだろう。親方銀行あるいは親方日の丸といった感性で開発を続けて納品したりしてきたSE集団が、ビジネスモデルの変遷に向けてどのように対応をしていくのか悩みは尽きないのが現場のようでもある。地方で無線システムの構築などを進めている知己なども、そうした波及を受けているらしく現在取り得る選択肢の中で旧来のお客様の運用してきた姿をどのように取り入れていくことが出来るのか悩んでいるのが実情らしい。最初に落ちるのは従来のビジネス用無線システムであり、いまやPHSやPDCあるいは無線LANを駆使しつつどのような形で提案できるようなものをシステムアップ出来るかということになっているようだ。

電波法令から違法なのかどうかは不明なもののISMバンド用のビームアンテナが売られていたりするのは、そうしたシステム展開などに呼応するものなのかもしれない。無線LANのシステムで全てが解決するわけではないし、距離も伝送速度も実際の業務に照らしてみると使い物にならないので新規にプロトコル自体を開発しなおさなければならないとい取り組むベンチャーもいるのである。こうした状況で使えないからといって取り組まないのは、冒険をしない大企業といえるのかもれしないのだが。前向きな挑戦をしていくのがベンチャーといえるのだろう。大企業が取り組んでいるのは、後ろ向きな挑戦になっているようで単なる件名消化の受注実績にのみフォーカスした中で日本一のコストダウンへの挑戦といったフレーズを件名消化の中で出来よう筈も無い。無線システムはアナログからデジタル化に移行するなかでメーカーとしての対応力を明らかに失ってしまっている。想定していない業務に向けた適用などを考えていく上ではハード・ソフト・法令のいずれもが障害になってしまっているからだ。

無線システムを通じて社会に貢献したいという目的で自分自身の将来を考えているのならば、いまはメーカーが独自にシステム開発しうる時代は終焉してしまったといえるのではないだろうか。基礎技術の追求を果たしている部隊がいて、将来を見据えて技術方向性を現場SEや技術者からの要請などとの連携に基づいて追求してきたという自負が残っているのならば良いのだが。明日売るものが無いからといって赤字を生み出すような仕事をするくらいなら出荷しないほうが赤字は生まないのであって、それでも取り組むというのには、赤字に見合う勉強や技術蓄積の意義があってこその仕事が会社での取り組みというものである。会社の在籍している自身の責任評価の範囲で、実績を上げたいという目的で会社の浪費を使い込んでしまうというような姿が糾弾されないのは破綻していく大企業の姿といえるだろう。糾弾しないということは破綻を甘受しようとしていることなのだろうから。

エンジニア自身が思うところの世の中の将来像を、自分自身の会社自身でのロードマップにマッピング出来ないでいるのならば、新たな会社でも興すべく社内ベンチャーでも起案していくことが必要だろう。自身の考える理想と現在の会社がミスマッチしているのならば、どこか変えられない部分が会社にあり、例えば特定のお客様とのリレーションなどがあるからに相違ないからだ。このことを会社としては否定できないのも事実であり、存在しうる解は別立ての会社として過去を精算した形で新事業としてはじめていくことだろう。このことは無線システムに限らず、携帯電話の開発などでもいえることなのかもしれない。通信キャリアが例えばクリーン端末仕様を打ち出してマザーボード型の電話機とアプリケーション分離を果たしていこうというのが将来のあるべき姿だとすれば、販売するチャネルも含めて通信キャリアから踏み込んで変わっていくことが必要である。そうしていくには、そうした技術提案をしていくメーカーあるいはベンチャーが登場してロードマップを説きつつはじめていくことが必要である。そんなことの雛形にはアクセスやアプリックスなどのケースが挙げられる。

これからの通信機器の在り様を変えていくベンチャーが、そろそろ現れても良いようなのだが残念ながら無線屋・ハード屋・ソフト屋いずれをとっても手配師に向かっているのが通信機メーカーのありようなので突然PhoenixのようなBIOSメーカーとして登場したり、携帯電話の必須ソフトとしてのOfficeのようなものを提案して会社から独立していくぐらいの状況になるのではないかと思っているのだが中々きっかけがつかめないのだろうか。また外からの変化を待ち望んでいるのだとすれば、高いライセンス費用を払ったりしつつも今の古家からの変革も望めないままに無いものねだりをしている現在で歴史を終えてしまおうというのだろうか。アジアからの新しい技術の登場に期待を寄せているのは、むしろ米国であったりしていてベンチャーファンドの設立などを公にしているのだが、そろそろ携帯電話のOfficeメーカーに相当するような会社が勃発するのではないだろうか。

大企業の中で、ベンチャー精神旺盛に取り組める人もいるだろうし、渦中のベンチャーから突破口を探している人もいるだろう、JavaやWebを通して必要となる経験などは重ねてきた現在、次の段階に移ろうとしているのが携帯業界でもある。教育段階からの着手を始めた会社もあるだろうし、開発現場の集約自立化を目指している会社もあるだろう。次代の開発の在り様についてのロードマップを整理して着実なる一手を打とうとしているのではないかしらと考えて、必要なソリューションを期待されている側として考えているのだが、開発者あるいは開発スタイルの維新が起こるのだろうか。電話線の基本契約を結ばずに光ファイバーのみに集約できないかと考えていたのだが、そろそろそうした時代になりそうである。とはいえ、自宅の移転には電話番号の移設やらFAXの処置やら解決しなければならない問題は色々あり結局ISDNとFTTHの二本立てでインフラ構築をしようとしている。世の中の銅線の進歩は30Mbpsを超えそうであり、光ファイバも1Gになるらしい。拙宅などSOHOスタイルの仕事にシフトしたりしつつ考える将来の姿の青写真とマッチしているかもしれない。

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