業界独り言 VOL243 ユーザーインタフェースは文化

携帯電話の開発支援をしている中で、ユーザーインターフェースも、それなりのものを提供しなければ、昨今のマルチメディア機能の実装などの確認評価すら出来ないというのが実情でもある。既に5×7のドットマトリックスキャラクター表示からグラフィックスベースに移行はしているものの、とりあえずのサンプルという程度にお客様も思っているのだろう。ユーザーインタフェースは文化の表れであり、お客さま自身の製品特徴でもあるからだ。プラットホームを開発提供していく上で、昔のワークステーションでのMotifやSunviewなどのスタイル提供などの領域にまで持ち込んだとしても細かい使い勝手は中々決めかねるのだろうか。

最近M社の端末からT社の端末に携帯電話を切り替えたのであるが、使うことの多いメールでの操作性などの使いにくいと感じている点などには、端末操作の慣れ以上に端末設計へのポリシーベースでの相違を感じてしまう。マッキントッシュのような使いやすさを追求していくことが、端末開発にこそ求められているのだと思うのだが、こだわりを持つUI設計の追及をしているメーカーが結果としての端末を効率よく開発していくことは難しく永遠のテーマのようにも映る。端末開発をプラットホーム化して、PCの如くにまで分離した開発を可能にしようというテーマにも取り組んではいるものの、まだその域にはお客様の文化改革も含めて時間が掛かりそうだ。差別化と共通化の矛盾するなかで、まだ未成熟な分野といえるかもしれない。

通信プロトコルをカバーする機能として、通信キャリアからの仕様提示を受けて推奨ミドルウェアの提供を受けて実装されている通信機メーカーもあれば、自社実装している会社もある。自社実装しているからといってユーザーインターフェースにまで力が入っているかというとそうでもなかったりする。こだわりの使い勝手を追求しつづけていくにはテストや仕様化などの作業に手間取ってしまいリーズナブルな開発コストにならないからなのかもしれない。とはいえ、アプリケーションを支えるプラットホームとの独立性が保たれていれば移植は容易なはずなのだが、全てをこなせる会社は中々見当たらないようだ。ここのアプリケーションの評価というものと製品が叩き出した利益などからみた評価などが独立して行われないからなのだろうか。

こだわりの企画担当か、開発推進担当がいてプロジェクトをその人の視点で監修していけるようなことが映画作りのように行われていれば良い使い勝手の統一感のとれたものになるのかもしれない。かつてジョブ制御文などによりコントロールしていたバッチ処理ベースのコンピュータシステムでも、革新をもたらしたソフトは、こだわりを通したエンジニアが設計完遂させたものだという話を出向先のコンピュータメーカーで聞いたのは四半世紀も昔の話だが、今でも仕事の仕方に差異はないのかもしれない。グループ作業としての仕事形態が取れるようになったLinuxなどのオープンソース的な手法は、時間軸を越えた成果を提供してくれるものかも知れないが・・・。

日本が生み出した?親指メール文化を支えているのは卓越した若い世代のユーザーそのものだろう、まずは日本語変換のしやすさ、賢さがキーになって評価されてきた。差別化の入力デバイスなどの開発も盛んである。カメラ機能が一般化されていくなかで、ユーザーインタフェースがブラウザと同一線上になってきたりもしているようである。斬新なユーザーインタフェースが出てくるかもしれない予感もある、創造性を発揮できる場所は、ユーザーインタフェースになってきているはずなのである。Quad社などはある意味黒子であり、出来て当たり前の部分の機能を提供していく立場でしかなくなってきている。802.11とWCDMAとCDMAとBTが共存できなければならないとお客様が思うのであれば実現提供するのがQuad社のようなチップソフトのビジネスとなる。

そうしたプラットホームを得て、如何に端末としての仕上げに持ち込めるのかというノウハウを持ち合わせつつ製品開発をしていくというのが、今の時代に求められるメーカーの技術屋であろう。各機能分担の専門技術の技術背景を理解しつつ使える端末に魅せるように仕上げていくことは、メーカーの中に必要なコンサルティング能力を持つSEなのだと思う。こうした技術者が求められているはずなのだが、実際には機能分担を任せた協力会社の間にピンポン状態になっているような風景も見られ、製品開発のプロセスを見直すべき段階に入っているような会社も散見される。

若手の斬新な感性に基づく、あらたなユーザーインタフェースの創造なども期待したいところなので、どのようにそうした仕様をプロトタイピングして見せるのかといった点も鍵なのだろう。うまく若手の意識を高いマインドで位置づけて推進させるのかという仕事の進め方には管理も重要ではある。あまりに任せ過ぎて、音量ボリュームの設計を左に回すと大きくなる設計をさせてしまったような会社も過去にはあったようだ。設計ガイドラインといったものの整備もした上で、こうした飛びぬけた感性の新人を活かす様な職場にしていきたいものである。最近驚いたユーザーインタフェースにはガスのクックトップのノブがある。フランス製のクックトップのそれは、左にひねるとガスに着火して最初は強火でひねっていくと弱火に変わるというものである。少ないひねりで強火で始まるというのは不思議である。果たしてフランス人はセッカチなのかと仲間の顔を思い浮かべるとそんな気はしないのだが・・・。

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