業界独り言 VOL269 ひらりと書いて変換すると

ひらりと書いて変換するとVOLとなる。仮名入力というスタイルを30年来、通してきたのはカナタイプライターを使っていたりした学生時代からの流儀でもある。まあ、昨今のような状況でひがなコンピューターに触れつつ仕事をする時代が来ることを予見していたわけでもないのだが・・・。さらりと書いてささっとデバッグして、端末ソフトがさらさらと出来ていく・・・そんなはずはないと・・・。なぜかそんな話をすると笑い飛ばされてしまうのは、何故なのだろうか。五年も前だっただろうか、当時オブジェクト指向の徹底追究をされていた日の丸系列キャリアから飛び出したベンチャーの方のデモンストレーションなどを見せていただきブロックを並べるだけでソフトウェア構築を果してしまうという技術成果をみせることで期待した若手技術者からの発奮などは、メーカーとして実践開発を持たない現状の中ではそうした機会を与えたこと自体がメンタルハラスメントになってしまったのかもしれなかった。

「久々に挑発的な内容の独り言を頂いたような気がします(笑)。実は、結構、好きなんです、こういったトーンの独り言が。叱咤激励されているようで・・・。」とVOL260へのお便りメールが届いたりしていたのは、まあ国内にも芽があるということだろう。そんな返事を呉れる知己なども、転職しようかどうしようかと悩んでいた経緯があったらしい。その頃の状況と現在までの変遷を考えてみても、彼にとっては転職先としてその会社を選ばなかったことは悪いことではなかったといえるようだ。何せ外資といえば評判の悪いもので、成果が出なければあっというまに脚切りシュリンクが始まってしまうのも事実である。成果を如何に出しつづけるかということに奔走しているのが、外資に限らず会社活動として目指していく姿なのではあるが国内のバブルを経験してきた大企業の風土の中には脚切りしたくなるような部分もあるらしい。

潤沢に仕事も予算もあるような、幻想を大企業に抱くのかも知れないけれども現実には、色々な条件や足かせがあるもので華やかな転職情報誌や面接での説明内容とは裏腹に期待する職場につけないこともあるようだ。そういった経験をしているという人物が応募してきたこともあったのだがエンジニアとしての職歴からみてみると処遇の事実を首肯するような側面を見つけたりもした。自分が何が出来るのかということを正しく把握できていないということが、彼の場合には当て嵌まったように私には見えた。彼が望むような仕事には、彼のスキルでは割り当てられないということなのだろう、こうした人材の場合には互いに不幸なままにモチベーションも揚がらずに結果として彼自身が望む次のステップへのスキルアップもままならないということになる。過ちを繰り返しつつ本質的な問題認識をしないままに、青い鳥を求めていくというサイクルを続けてしまうのだろう。

さらりと開発をやってのける・・・といった潔さというような風景に遭遇しなくなったのは、複雑怪奇な大規模ソフトウェアが日常化してしまったからだろうか。無理をせず、開発の目的と挑戦の範囲を定めて予定通りに短期日に終えるなどということに遭遇したとしても評価されないというのも事実だろう。設計精度や計画精度の高さなどについて振り返り見極めていくといった余裕が、各人の育成評価のサイクルと合致しなければ個人のモチベーション向上にも繋がりはしないだろう。与えられる環境の中で部下の育成といった側面を考慮しつつ上司としてプロジェクト責任を全うしてくれるようなやりがいのあるチームに所属している人もいるだろう。時代を見据えて攻め込むポイントを明確にした開発に絞って打ち込むといった状況では取り組んだ仕事の達成感は周囲の評価などのフィードバックも手伝ってよい経験となる。かつては、開発スピードのどんじりを行くと揶揄されるようなメーカーとがっぷリ四つに組みニートな電話機を完成させた東医研くんもステップアップの一里塚といった趣だろう。

睡眠時無呼吸症候群といった最近では新聞紙上でも高名になった病名であるが、私自身も軽度な兆候があるようで現在分析としての測定器材を借用したりして病状分析をしてもらっていたりする。確かに気づくとうとうとしている事実が過去にはあったように思い返していて必要な場面でむっくり起き上がって一気にプレゼンに補足説明を英語でしたりという伝説を残したりしているようだ。畏れを抱いてQuad社をさったごく普通の人もいたのだが、やはりQuad社に集うひとには凄い人物がいるようだ。青歯城恋歌の仕様末節まで諳んじていると思しき彼も、最新デバイスの評価用ドライバーを書き上げた一気にデバッグ達成といったことにはQuad社での環境などが少し足かせだったらしい。何せ仕様公開するにつけてもNDAが必要な会社と付き合ってくれる協賛メーカーが作ったボードの完成度がパーフェクトであるとはいえないし、そうした状況下でも分析対応解決が望まれるチームでもある。

さらりと書いてから仕上がるまでに紆余曲折はあったにしても、時機を得たプレゼン戦略の素材として国内協賛メーカーにケイ佐藤ともども赴いて対外デビューを果したようだ。同様な成果自体は東医研さんの超遠隔デバッグ手法に基づいて国内端末メーカー達が達成していたのであるが、完成されるべき内容とはいえ新たな協賛メーカーの最新チップを駆使するドライバとなった。このドライバ開発により得られた成果は、デバイスメーカーにとっても利用する端末メーカーにとってもリファレンスデザインとしての重責を担うにたるもののようだ。ドライバー担当として彼が以前開発して口ずさんできた青歯城恋歌などもの歌詞となる仕様書を読ませたりしても睡眠学習状況を引き起こしてしまうのもご愛嬌かもしれない。そういえば、以前の職場で実験室で測定器を借り集めて自分の席に積み上げると安心して睡眠学習状況に陥っていた先輩がいたのを思い出すのだが、みな実は同様な病気を持っていたのかもしれない。

感性が研ぎ澄まされる状況というのは、エンジニアとしては幾たびか経験するものかもしれないが、そうした状況に達したひとにとってはサラリと書いたコードが一発で動作して所望の問題を解決したりするのも起こるべくしてのことといえる。コンパイラの開発でコード生成に悩んでいた頃は、気がつくとハンドコンパイルしてコードを書き上げてデバッガから直接機械語入力していたりもしたのを思い出す。ソースコードの流れを最近では高機能エディタでサーフィンしつつお客様の問題解決と自分達の仲間が設計した成果とのインタフェースミスマッチを探し当てるのがサポートという仕事である。さらりと解決するのには、経験に基づく直感や洞察力が必要でありお客様からの入力されたデータの不足を推察して補填するための電話やメール作業で、設計主体となっている仲間達の思考に結びつけるための仕事をしているのである。さらりと解決していく姿には、残業などは似合わないのであり自分の効率を最大限に活用するために必要と思われることには足かせを掛けない職場でもある。

霞を食べて生きている仙人と呼ばれるような心境に達することなどおぼつかないという人もいるかも知れないが、これはその人の考え方や努力次第だろう。国内トップキャリアの影も踏めないといった雰囲気のメーカーにあっても仙人然としてマイペースでエンジニアライフを暮らしている知己もいるようだ。Quad社だからといって仙人然として暮らせるわけではないが、結果さえ出せば各人のマイペースに構うことはないのが会社の風土でもある。多様な文化や国籍の人たちと一緒に仕事を進めていくわけで全員がカリカリとした仕事の仕方をしているわけでもないし、そうした文化を共有できるわけでもない。互いを尊重しあった上で自分達の開発成果の完成度を高めてお客様が利用できる素材として提供していくことに意義を見出しているわけである。会社としてプラットホーム提供を社是としているわけだから、社内でプラットホーム開発に意識の低いお客様とのインタフェースに際してはむしろ大変だというべきかも知れない。この辺りは誰かがもう少しレポートを呉れそうな期待をしている。

「さらりと書くのは最近ではコードではなくて独り言だけですよね・・」と野次も時差の向こうから聞こえてきそうである。早起きなのか、時差ぼけが続いているのか不明な仲間からの書き込みがあったりもする。独り言を届けようと腐心してはいるものの、エンジニアという仕事に生甲斐を見出せないままに自暴自棄になっているような若者がいると聞くと、いつまでも書き連ねることだけでよいのかと悩みもする。最近では悪名高いSPAMメールリストにも登録されているらしいので必ずしも届いているとはいえないのも実情である。届かない理由がメールボックスのオーバーフローなら良いのだが、アドレス変更で転職された人やISPが変わられたのでとメール変更をいただける人がいるのも救いではある。哀しいケースもあって最近続いていた配達不能な返送メールをよくよく調べたらサイレントキーとなっている知己のものであった。合掌

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