業界独り言 VOL324 いつも気温は、華氏70度内外

毎朝、サンディエゴのホテルでの朝食では、オムレツを焼いてもらう間に確認するのは新聞の気候の欄であのだが、いつも相変わらず同様な気温を示している。最低気温は華氏69度内外で、最高気温は78度といったところだ。年中気温に変化は殆どないのが特徴といえるのは、特徴の無い特異な気候の地域といえる。ここのところ、毎月の如く訪れているのが現状なので、日本のじめっとした蒸し暑い梅雨の気候とは比べるまでもなく快適な気温でありカラッとした乾燥したところで仕事がはかどる筈だということになる。

ある意味で能天気とも言える、良い気候の中で季節感もなく過ごしている仲間達のメンタリティと太平洋の向こうでじめっとした中で仕事をしているお客様達との間に齟齬が出やすいのは致し方ないところでもある。時差を越えて対応しようとしている実務が時として最近のIT技術の進展により遠隔試験あるいはデバッグといったことも実現できるようになったのにはインターネットの進展の恩恵を受けているからだといえる。何時間も打ち合わせしつつの状況にはSkypeベースでチャットあるいは話をしながらというのが最適だ。国内の通信キャリアであるお客様向けの開発支援をIP電話で実践しているのはおかしなものであるが・・・。

今年は色々な意味でいつにもまして革新が続いているような状況となっている。この業界で生き抜いていくという事自体が革新なのだろうと思いもするのだが・・・。当然の結果なのか、通例が通用しない状況に身をおきながら新たな視点や観点に立ちながら技術プロバイダーとしての責任を全うしていくことに腐心しているのでもある。身軽な判断と行動力を伴わない状況では、この業界の変遷に勝ち残っていくというよりは生き残っていけないというのが実情である。五月の連休明けを皮切りに既に三度目の訪米サポートになっている状況で、サンディエゴの仲間も「本当に帰っているのか・・・」とか「またお土産が来ているぞ」とかといったリアクションになっている。

日常化する米国の仲間との仕事においては、一体化がより進んだ形になっているのは事実であり互いに仕事のプライオリティを高めていく仲間意識が向上するのも事実である。インタラクティブな互いの理解を高めあう関係にたどりつけるのかどうかは大きな課題でもあり、今回のこうしたフリーケントフライヤー状態はある意味で仕方が無い状況でもある。新しい取り組みについては今月中には明かされる状況とはいえ、実体として実践していく内側においては明かされる以上に革新的な部分を感じながら内外との摩擦を引きずりつつの実践作業となっている。関係する人達との仲間作りが必要な枠組みの中で、彼ら自身の実は自立が求められているのが本当の意味での革新であるといえる。

ともすれば、気温が恒常的で最適なぬるま湯とも映る暮らしぶりの中にあえて嵐を起こして、新たな革新を求めていくという姿はアゲインストとはいわずに強力な順風という状況でもある。自立してリードしていくスタンスが求められている、何が足らないのかを提示して行動を起こしていくことが必要なのだと思う。通信モデム屋というスタンスあるいはマルチメディアエンジン屋というスタンスでの追求という取り組みに画龍点睛を欠くようでは仕上がりとして端末がイマイチになってしまうのである。この点をノウハウとして押さえてきたOEMの経験をも共通のプラットホームに展開しようというのが大きな挑戦のテーマとなっている。

切れ味鋭いインターフェースに基づいてアプリケーションがマルチタスクに展開されていくというトータルな流れをプラットホームとして実現していくことの難しさというよりも、必要不可欠な基本的なことを正しく認識しているのかどうかが課題だともいえる。プロジェクトを通して、そうしたポイントにメスを入れていくことに挑戦するのが私の存在意義だともいえる。そうしたことが出来ないのならば老兵はただ消え去るのみということになってしまうのだ。自分の子供たちのような世代のメンバーで構成されている開発の流れの中で、システム開発の基本的なことを噛んで含めて理解させるという仕事は重要不可欠な役割といえる。

超フラットな組織で構成されているQuad社ゆえにCMMでいうころのレベル5の如くに必要に応じて組織体制も仕事の仕方も変わっていくのが特徴でもあるからだ。端末作りのノウハウとしてごく当たり前のように日本では捉えられてきたことが、昨今の世界市場での端末競争で負けていく中で見えてくる市場に投入されるグローバルな商品像の完成度には荒さなどに目がつき日本のエンジニアからすれば許せないレベルということにも映るようだ。しかしそうしたことを追求して完成度の高い物を実現していく方法としてはコストの観点から否定されてしまい、閉塞感は増すばかりのようだ。中身をよくわかったエンジニアがアーキテクチャを見直しながらプラットホームを整備していくことに取り組もうという流れがひとつの日本の救いかも知れない。

現在の国内メーカーの端末開発費用の現状からの脱皮をしなければビジネスとしての終焉にたどり着いてしまいかねない状況があるのは事実かもしれない。また、新たな方針に基づいて新たなチップセットメーカーとの協業活動においても実務としての方向性を決めていく流れを御していかなければ意味がないことにもなる。ともすれば現行のビジネスの流れに飲み込まれて現状維持の中でのアーキテクチャをとってしまいかねないことも起こるだろう。まったく新しいアーキテクチャを必要とすることを新しいカスタマーであるところの国内グループから要求されていることは大きなチャンスだといえる。OEMの方たちが協業に賛同していく流れを目の当たりにしつつ、Quad社としての全体を手綱さばきとして御していくことと協業ビジネスグループの指導を通して革新実現に繋げていきたい。

こんな伝道メッセージに呼応して、通信キャリアから参画してくれた若いエンジニアやOEMメーカーの中核エンジニアがスタンスを変えて参画しくれようとする流れも大きな力となっていくと期待している。今年もさらに伝道を広げつつ進めて生きていきたいと感じる。

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