業界独り言 VOL326 台北の暑くて気軽な時間

中国シフトから台湾シフトに切り替わったわけではないのだが、偶々私の仕事の回り具合のギアが台湾に合致したということだろう。沖縄のちょっと先の国は、中国とはやはり異なった感性の国であるように思われる。Quad社のメンバーにも台湾出身のメンバーがいるのだが、今回の訪問は丸一日の説明訪問のために延べ三日間の出張となった。月曜の午前中の会議に出席した後に成田エキスプレスに乗り込み、夕方のフライトに向かった。米国フライトと異なり、国内航空会社の系列のフライトとなったのは、成田からの直通便が無いからだ。北京の午後の会議の為に、関西出張と掛け合わせて仕事をしていた時代に比べればゆっくりとした時間が流れているようにも思う。延べで10回も、足を運んできた北京出張では、一度もホテル・客先・事務所・空港の間の移動しか経験がないのも事実だし・・・。

まあ、中国との歴史論議を始めてしまうと混乱の極みに陥りそうだし、そうした教育を施されてきたメンバーとの共同活動を通してお客様にサポートを提供していく流れの中で無粋な話をしてもしかたがない。そうはいっても発注先であるところの日本のお客様が、受諾先である中国の開発会社との協業作業を進めていくという流れは、とても平和な風景でもある。しかし、こうした活動自体が、そのお客様自身の変容あるいは変質の一端を作っているというのも事実だし、それをしなければならない事情もあるようだ。錦の御旗を掲げて、政治色を主体にして経済活動としての会社活動の中に、国が立ち入っていくのもおかしな話となるのは、既に日本の国情としての各開発メーカーの事情は国から逸脱しているということになるのかも知れない。

いわゆる、開発コストの圧縮で中国に開発委託をしたいと考えているメーカーは、自社の開発の空洞化にさらに拍車をかけるようなな流れを起こしている。そうした結果を受けてか、国内での設計活動という範疇で少なくとも活動してきた所謂ソフトハウスという業態に対しても大きな波を起こしている。国内メーカーが、事業の合併を国内外のライバルと行ったりしている動きの影で起こっている実質的な切捨てコストダウン要請などを考えていくと日本という国自体のコストバランスが既に失われているというように見えるのだが・・・。所謂年収300万円というスタンスで生活できるような国のシステムにするためにバランス制御を行うということは資本主義の世界では達成しえない話でもある。1/3ぐらいのコストにしないと引き合わない仕事ということから中国に仕事が流れてさらに失われていくのでもある。

中国自体もコストがバランスしているのかどうかは、疑問であるのだが国の実態が自由主義国家でないということから、歪な形で隠蔽されているように見える。自由に見せている部分と独裁を続けている共産主義国家としての部分が残るのは、多民族国家が制圧を繰り返してきた歴史の上に立脚しているからだとも思う。すべてを自由にして農村部の人間が都市部に流入してしまうといった事態を引き起こさないようにするためには、仮想敵国としての共通の対象を置いておく必要があり、そうした対象として日本を置いているのである。正しい歴史議論が出来ないのは中国という国自身のオペレーションの方向性から出来ないということでもある。中国は秩序ある状態なのかといえば、疑問であり虚構で塗り固めた歴史でとにもかくにも10億の民を抱える大きな国なのである。国を破綻させずに指導していくという流れの中で方便も必定ということになるのかとは理解しているのだが・・・。

今回の出張は二度目ではあるが、正確には過去に二度ほど台北経由香港行きというルートでの出張を四半世紀前くらいに来ていたことがあったのだが、今回の出張までは、そんなことすら忘れていた。まあ空港からパスポートコントロールを経て国に踏み込んだのは二度目ということになる。キャリアガールの同僚との出張であり、北京に行くのとは異なり気楽な感じの国柄と映るのはいたし方ないことでもある。米国のフライトであれば、ビジネスクラスの適用ということにもなるのだが、身近な出張でありエコノミーでのフライトになるのはいたし方ないところだ。また、適用する航空会社が異なることから貯めていたマイルの恩恵も得られずラウンジの適用にすらならないのは寂しいところだったが、今回はJALご用達の同僚とのJAAフライトだったこともあり、逆同伴という形で行きも帰りもラウンジでゆったりすることは出来たのである。

JAL自体は、運営が固いのか燃料の効率的な手配といった経営的なセンスにも欠けたりすることなどに代表される経営受難状態ということになっている。まあ、親方日の丸といった雰囲気があるのはいたし方ないとしても、吸収したJASのDNAなどが良い影響を与えたりするといったことにはなっていないようでもある。ちなみに、私が利用しているノースウェストのマイルで国内便のフリーフライトに引き換えることは出来るので、それには感謝はしているのだが・・・。マイルを使い切ることはあるまいといった懸念からなのか国内航空会社は、あの手この手で期限を切ったりクーポンで利用させたりといった方向にもっていこうとしていることで良心を見せているようにしている。実際のところ期限で切れてしまうことで負債を背負うこともないので良い方法なのかもしれない。ノースウェストでは無期限であることにはするものの、ブラックアウトと称してフリーフライトの適用口数を制限したり、使える日程に制限を課したりしている。無論倍支払うことで適用を容易にするという良心的な配慮も見せてはいるのだが・・・。似たりよったりということでもある。

台北のお客様は、いわゆる窓際族を生み出そうというタイプの端末メーカーということになる。国内のキャリアに対してもそのキャリアの打って出ている方法論は、まず気にせずにマイペースで自分たちの世界を提案しているのは、物づくりへの冠たる自信でもあるのだろう。彼らの弁を借りれば、日本の国内キャリアが要求する各種周辺機器の仕様は、窓際族として高く捉えられている端末以上の仕様を要求されてコスト高になってしまうというのである。自分たちの経験から導かれている製品設計を進めている流れの素直な延長線上でのビジネスではあるのだが、中々キャリアの思いとは相容れないようである。まあパソコンと同じ仕様とまではいかない手前のPDAと呼ばれる競争世界で暮らしてきた製品群ゆえのことでもあるのだろう。そこそこの機能を実現していくという要請には応えていけるプラットホームではあるのだろうが、国内の競争の中では素人な新たなキャリア以外では中々適用できないと思われているのも事実である。

そんな台北のお客様に、国内最先端の取り組みを進めているキャリアの新しいビジネススキームについての紹介ならびに技術的な紹介というのが今回のミッションということだった。窓際族の端末作りで培ってきた台湾メーカーのコスト力を国内キャリアが地道に自社開発して構成しようとしているものと融合すれば、より新しい展開になるのではというのが私たちの期待値でもある。門前の小僧ではないのだが、何度となく米国メンバーと顧客の間に立ち技術指導という連携作業をする中で理解し到達してきた共有意識の中での次世代戦略の説明なども、メンバーよりは少しわかりやすく説明するようにということに心がけてもいる。とはいえ、苦手な英語を介してのコミュニケーションということには八年目を迎えるこの時期でも苦手意識はぬぐえない。まあビジネスをまわそうという意識が勝つことでどうにか回っているのに過ぎないのである。最近では、Quadジャパンを立ち上げた創世の会長までもが、通信キャリアに転出してしまう事態を迎えてしまい、窓際族の侵略などが強化されてきそうな予感もあるのだが、私はQuad社の良心としてバイナリ環境での世界貢献をしていきたいのである。

午前半日を使ってゆっくりとチップ戦略と国内キャリア対応の戦略を説明して、午後は私の持分の新世代バイナリ環境の開発取り組みとこれによる新しいアプリケーション世界の構築についてのレクチャーである。間にゆっくりと昼食を挟んだのだが、茹だるような暑い台北の残暑の中を近くのモールのレストランまで移動して一時間ほどたっぷりと食事を楽しんだ。どのレストランも混んでいるのだが、気に掛ける様子はなく待ち時間を聞きながら物色をして結局最初のレストランに戻り予約に名前を連ねることになった。このあたりの感覚は、ちょっと日本人にはないゆとりのように思えた。レストランで待ちながらも会話を楽しみながら過ごし、席に通されてからも、終わりの時間を気にするのではなくて頼んだ食事を楽しみ完了させることを主眼に後のスケジュールを調整しているといった様子だった。日本人だと、時間がないから早くできるものを頼んだりするように統率したりするものだが、デザートの完了までしっかりと堪能してから会議に戻っていったのである。

待たされていたと思しき、当のエンジニアたちもむくれることはなくたっぷりと午後の時間を費やしての新世代バイナリ環境の効能と過去との差異・進化・互換といった点を中心に語りとおしていった。窓際族の設計手法やバイナリ環境の機能特性などの相違なともあり、双方のエンジニアが感じているギャップがハードソフトの費用や構成の柔軟さなどの点で意見が分かれていることも認識が深まり有意義な訪問となった。過去の互換性に囚われながらも、新機軸を打ち出そうとしている弊社の取り組みの一端も、興味を抱いてもらったのも双方にとってのギブアンドテイクといったことになった。一日のたっぷりとしたミーティングは、日本のメーカーやキャリアとの間では感じない不思議なものであり、その後の夕食は小龍包で著名なレストランを予約してもらい早めの時間に向かい、ここでもゆったりと食事を楽しむことが出来た。スープたっぷりの小龍包もさることながら、最後にいただいた点心スイーツが小豆餡が入っている蒸し点心で、とても素敵な食事を最後にまた素晴らしく締めくくってくれた。ゆったりとした時間になったのは私だけではないらしく、同僚はお土産にお茶を買い求めにダウンタウンにウォーキングして出かけることになっていった。

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