業界独り言 VOL348 コミュニケーションの障壁は文化の壁?

新しいお客様を迎えて、開発をスタートするにあたり所謂、開発着手打ち合わせ(kickoff)を申し出ていた。何ヶ月も前のことである。携帯電話の開発支援というビジネスをどのように達成するのかという点については、Quad社は及第点をもらえる会社だと思っている。

Quad社の開発支援というビジネスが、チップセット販売のためのサポートということで運営されていることから、お客様のビジネス達成に向けては頑張ってサポートするというものであり、お客様との利害関係がより鮮明に出てくる。お客様の成功が当然の帰結であり、それを如何に早くにスマートに達成するのかということになる。

素人のお客様を一から教育してくれというような要請を呑むわけにはいかない。それはお客様自身の問題であり、ある程度、端末開発というものが判っている前提で、プロ同士としてのサポートを互いに要請するというものである。リファレンスデザインを提供しているという立場からもお客様がどのようにカスタマイズして、そのデザインを利用しているのかということを理解しなければサポートなどは出来ない。

かくして、開発スタート時点で、お客様のカスタマイズ点や開発スケジュールのキーイベントを共有させていただくということになる。部品配置の問題に起因する感度劣化などの現象なども含めて、さまざまな段階でのデザインレビューなどにも対応させていただいている。回路図をあられもなく提供されることもままあるし、カスタマイズ情報などをキャリア提案以前からも共有させていただきチップベンダーとして対応する開発アイテムなどについての相談をうけているということをうまく利用されるのが一般的な私たちの期待するお客様像でもある。

お客様のデザインを受けてチップ開発をしているわけではないので、必ずしも同種の半導体ベンダーとは趣きを異にしているのだろう。自社情報をヒタ隠しているという会社風土のお客様もあるらしい。ソリューションプロバイダーとしてのQuad社に対してチップセットのIPコアを開示しろというお客様もいるようで、中身がわからないと使用する立場としてのデザインレビューが出来ないというのだ。そうしたお客様には弊社のチップビジネスの根幹として反対側の立場にいらっしゃるようでお引取りを願うしかない。ARM社ならば、ライセンスビジネスとして出すのだろうが・・・。

Quad社というソリューションビジネスを利用するというのであれば、如何にリファレンスデザインを使いこなして、自社としての拡張をどのように果すのかという点をスマートにまわしてもらうことで開発費用も含めてお客様の端末ビジネスを利益をあげる形にしていただくというのが、Quad社の願いでもある。

新しいお客様が、キャリアによるリファレンスデザインを活用しての端末開発に乗り出そうとしている話を聞いていたのだが、一向にキックオフ会議も無いので冷かしのお客様なのかしらと真剣に思っていた。ところが、年明けには端末が販売されるらしいという情報までも飛び込んできて、お客様担当エンジニアも質問も中々出てこないので今日はお客様を訪ねて確認してくるというので、同行して実情を聞くことにした。

行く道すがら、キャリアの担当者にもコンタクトをとり、当該のメーカーさんの開発状況について確認することにした。何より質問が来ていないことから開発が進んでいるとは思えないのと、キャリアからもサポート要請が来ていないということが気がかりな点でもあった。レファレンスデザインの完成度が、通信キャリアがさらに追加部分もパッケージ化してデザイン提供するというビジネスモデルが結果として問題を産み出していないということであれば素晴らしいのだが。

二時間ほどの会議にお客様から期待されていた議題は、最新開発情報のアップデートということで、実際に進んでいるはずのモデルに関する問題についての議題は一切無かった。こちらから開発サポートに際して御願いしているカスタマイズ項目や開発工程についての情報などをお知らせいただくことについてのご理解が頂けていないという事実がまた判明した。お客様の開発プロセスの中でQuad社の提供する開発支援プロセスが相当異質だということなのだろうか。

お客様にレファレンスデザインを提供してアプリケーションやカスタマイズの違いから出てくる問題についての情報共有をしたうえでセキュリティを担保しつつのサポートをしていくという開発支援プロセスを理解されていないということが、ことの本質だったようで文化の違いということになるようだ。ワールドワイドでのサポートをしていく上で、スマートに仕事を回していく上での必要な情報をあらかじめ共有するという概念が、大きな文化の差なのだろう。

英語よりも何よりも、文化がコミュニケーションの最大の障壁のようである。

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