業界独り言 VOL362 怒涛の2009

今 年も、また年頭から徹夜交じりの生活となった。まあ、忙しいという言葉は最近では待望久しい言葉なのかも知れないので使い方には注意が必要なのだろう。忙 しいということは仕事があり、人が働く場があるということでもある。昨今の開発事情などからみれば、素晴らしい機会に遭遇しているとみるべきでもあろう。 むろん、その忙しさの先に何があるのかということを考えてみれば、その忙しさの過ごし方についても何か考えを持って戦略を立てて対応していただくことが必 要なのは言うまでもないのだが・・・。実際問題としての認識をそこまで持たれてはいないように感じるし、業界としての仕事の少なさが結局のところ、携帯を はじめとする組み込み業界のスキルセットまでも貶めているように思えるのが最近の実感でもある。

携帯業界では、iPhoneなどの黒船登場と共に、補助金廃止などの政府政策が功を奏して、通信キャリア頼りでいた日本メーカーの脆さを浮き彫りに してくれて結果として政府がいうところの世界に通用するメーカーに席巻されることになりつつある。果たして政府の考えてきたことが、実情として日本メー カーが享受してきた中での甘い?環境でのみ箱庭でしか暮らしえないという実情を明らかにしてしまうことだったのかどうか・・・。韓国や米国では確かに補助 金などなしに物づくりをしてきたのだが、技術大国日本というものが見本市のようにいろいろな技術を展開してきた背景にこそ、補助金施策がありメーカーが限 られた箱庭の中でも結果を出してきたのが世界を牽引してきた流れなのである。

垂直統合モデルとして、通信キャリアが互いの競争としてサービスを繰り出し、その政策に基づき開発が続けられてきたことにはメリットが多かったこと も事実である。世界経済がシュリンクした流れの中で日本の携帯料金がリーズナブルになったとして、By NIPPONなどとでも保護政策の口火でも自らが切らない限りには、立ち行かないのが実情ではないか。採算割れから撤退するということになるのであれば、 日本のメーカーで立ち残れるメーカーはいないことになる。採算割れの原因がどこかの会社のライセンス費用にあるというような論理に基づいて国をあげて動い ている節もある。

日本の通信キャリアの政策で生き永らえてきたのは、実は日本メーカーのみではなく、チップメーカーにあっても同様な状況があり、国策を追求して耐力 のある物づくりが出来るようにしようとすると、実は育ててきた海外チップメーカーも失うことになり、国策として嫌っている特定のチップメーカーに仕事が 回ってきてしまうという矛盾したサイクルに落ちようという流れもみえる。はたして、日本政府が考える政策とは、正しく日本の実情を認識した上でのものだっ たといえるのかどうかは、きわめて怪しいものである。まあ日本が誇る部分がなくなってしまうわけではないので端末メーカーは全滅したとしても、RFデバイ スなどのメーカーは生き残っていくのだろう。政府が考えていたのはそうしたストーリーだったのかも知れない。

オープンな開発環境が広告産業をベースとする、資本家から生まれてきたのは皮肉な話でもあるのだが、日本政府がやるべき政策がムチだけだったとすれ ば、ある意味で今の首相のキャラと読みでは被ってしまうことにもなる。漫画やアニメに基づく日本の若者文化をリスペクトする海外からの羨望の中で日本とい う世界中が注目する日本が主導できる唯一無二の優位性を捨ててしまうことにつながっている。通信キャリアからの補助金政策の中止でこれから活躍してほしい 時期に端末機メーカーというプレイヤーが不在の状況が起こるのが2009という年になりそうだ。

よい意味でのパトロンとして日本政府が機能してくれれば、よいのだろうがとろんとした雰囲気で昔の無条件降伏となったことに思いをはせているとすれ ば明らかな間違いだし、そんなことを繰り出してきた黒幕のマイクロソフトも戦場から離脱しつつある。それでも、日本メーカーは何を履き違えたのか自らのオ リジナリティを追求するといった活きた形の投資を使うことはなく、MSのリリースが遅れることに一喜一憂することを繰り返して、出来上がった端末のオリジ ナリティの追及といったことについてのケアが出来ないままにいるようだ。

ソフトウェア開発をするという人たちにとっては、端末が開放されることになったアンドロイドの上陸を喜んでいるだろうし、いままでの組み込みソフト 開発のうま味を誤解してきた人たちにとっては3月危機のさなかだろう。今、受注してる仕事を大切にしていただきたいものであるのだが、ここ数年培ってきた プラットホーム開発などの成果が出てきたのか、従前メーカーが行ってきた基礎部分の開発が通信キャリアやソフトメーカーに移管されてしまったことなどの影 響が開発現場に起き始めているのは、まだ日本国政府もご存じないことだろう。ソフト開発のいろはがわからないような人たちが現場で蔓延しはじめているの で、首相が漢字が読めないくらいは大したことではなく思えてしまったりする。

端末ソフトウェアの開発提供をして下支えをするという仕事をしていると、組み込み業界の実情が否応なしに見えてきて、それに対応していくことが迫ら れる。そのことをサポートして解決しないと自分たちのビジネスモデルであるところの端末生産をしていただかないとチップビジネスに繋がらないからである。 助成金がなくなり開発力を高めようとして共通プラットホームを開発してきたこの成果は、不必要な質問が減ることに多大な貢献をみたものの、結果として通信 機メーカーの開発力が低下してしまい、開発現場での基礎知識不足に基づくサポートが増えてしまったような印象がある。深いぃ現代の寓話となってしまいそう な状況である。

日本の文化・感性に基づいて培ってきた日本ケータイは、その本質を誰にも理解されないままに消えて行ってしまいそうな状況にあるといえるのかも知れ ない。こだわりの部分を英語で説明できず、またそこまでの感性を持たない人たちにとっては直す余地も見当たらないということになる。日本政府の人たちが考 えてきた端末助成金の削除で海外に伍する端末づくりをするというメッセージは、日本文化を捨てて、適当な端末を作ることに費やせということなのだろうが、 日本企業が達成していた文化・感性・品質が端末の歴史から失われてしまい、iPodなどのテキトーなレベルの端末で良しとされてしまうのは悲しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。