VOL09 2000年5月発行2000/05/15

梅雨までのひとときを楽しんでいたのだが、もう雨がちな陽気に変わってきそうである。半年の研鑽期間を経て、とりまく環境も大きく変わろうとしている。巷ではブラフと言われていた弊社の基地局参入騒動だが、実際問題としてブラフなんかではなくて、まさに国際化の流れの渦中にいることを郵政省自身が気づいたのではないだろうか。国内三社のぬるま湯的な状況においてIMT2000の割付を進めてきていたところに、「無償でチャネルの権利を入手できる」というおいしい話を米国と共同で焚き付けたのだから大変だ。日本の通信業界は官民馴れ合いとなっていて、天下りを受け入れつつ仕事の人脈を広げていくまさに日本式のロビー活動なのかもしれない。ベルを分割して競争させ、周波数権利もオークションにかけている米国の状況が参入してくるとは考えてもみなかったのだろう。結果はDDIの技術トップの間違った判断を是正することで解決をみてしまい、面白みにかける展開となった。DDIを買いとるという選択枝もあったようだが、免許申請をすることの方が容易なのだった。

今回の波紋は、今後の日本の無線行政に大きな一矢をはなったと思われる。NTT法が改正され外部への展開が進むだろうという事とともに、双方向の大きな流れをまた産んでしまうと考えられる。こうした法の庇護の下で暮らしていた、ある種の業界にとっては大きな転機を迎えたともいえるだろう。

ベンチャーのよい特性がまだ残っているこの会社の前向きな取り組み姿勢は、私の意識にも共感する。無線機器の開発に限らず多くの製品・サービスは、ソフトウェアの介在なくては競争力を産まない。物づくりとしてのソフトウェアの力と先進な要素技術としてのソフトウェアの二面を追求していかなければならない。仕様書を定義してくれれば生産としてのソフトを構築出来るという感性の仕事と、サービス・製品の技術方向性を見定めつつソフトウェアの基礎研究を進めていくということが求められる。私自身もメーカーに在籍して四半世紀近く技術屋として暮らしてきた結果としてそういう事を認識してきた。日本では、そうしたサイクルを回すよい土壌としてNTTと各メーカーとの関係があったのだと思う。

メーカーとNTTとの関係を支えてきたのは、互いに補完しあう相互技術があったからに相違なかった。トラックの荷台に装置を積んで自動車電話の開発を進めてきたベンチャー精神を私は尊敬する。またそうした流れにのっとり子連れ狼ならぬ乳母車に積んだPHSの開発などもそうしたものに違いはない。そうしたベンチャー精神に支えられてビジネスモデルを提起して一事業を興してきた業務用無線の歴史なども興味深い。いまそうしたビジネスモデルの考案をしていくことも研究テーマの大きな範囲であろう。ビジネスモデルが特許になる時代なのだから。豊かな端末の提供で、PHSなどの価格100円や無料の広告などをみると「通信の水道哲学の領域にまで達したか」という見方もあるだろうが、サービス費用や能力などの面から昨今のi-MODEのサーバーダウンや投資効果という観点での技術力などにおいても、もっとシステム的な観点で取り組むことで道が開けると思うのだがトラック3に入札することで精一杯になってしまうのではまずいのだろう。

超高速なマイコンの開発というテーマが最近では、単位面積あたりあるいは投資コストあたりの最高速なマイコンの開発というテーマに変わりつつあるようだ。インテルの命令をバイナリーコンパイルしつつ自分の考える合理的な命令に置き換えて効率よく低消費電力で実現するこうした技術を、さらに利用して群体で動作するシステム提案が出来れば、ビジネスモデルの改善につながり顧客満足につながっていくのである。

端末の開発のみで手一杯という状況ではお先真っ暗というのが現在ではないだろうか。幸いにしてこうしたインフラサイドの問題提起は社会からの要請もあって順風になってきた。おもしろい素材もあふれてきた。しかし残念ながらそうした面白さを伝える仕組みがなくなっているように感じる今日この頃である。仕事や技術の本質に好奇心を持つことが大きな鍵なのだが難しいのだろうか。いろいろな創業の時代に出会っていろいろな好奇心を大切に育てる事ができて今に至っている。これからあらたな創業を自分自身からの提案も踏まえて周囲の方々の力添えももらって進められそうである。こうした楽しさを少しでも伝えて、メーカーの方々にご理解いただきエンドユーザーへのサービス提供をはかっていくのが
当面の私の存在意義である。

そうしたメーカーの方々への支援作業において、あらたな創業の芽がありそうで諸先輩のお知恵を拝借し自分自身で咀嚼しているのだがよく噛まないと腹ごなしが悪い物である。一つのアイデアがメーカーと同一レベルの開発部隊を擁して日本サイドで先行開発の雛形を示していくということである。このことにより、各メーカーで競合する開発の部分の合理化が図れるというものだ。しかし、米国と日本の相互で仕事を依頼できるようなソフトハウスでデジタル無線の技術力があって英語に問題がなくて、独立系というようなところはなかなか見つかる物ではない。今は、W-CDMAで日本では技術屋がショートしているのが実状である。Y2Kが終わってあぶれてしまったような技術屋を掴まされるのがオチでもある。ソフトハウスの紹介にいって逆に「すぐに、優秀な人材を100名そろえられますか」と京都で問いただされた事を思い出して苦笑した。30名でも良いのだが無理な状況であろうか。ソフトハウス詣でをするのは、メーカーがFLASHROMなどを求めてさまようのとにている。

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