VOL93 無謀とチャレンジの狭間 発行2001/03/27

日経バイトに業界独り言の一節を書くことになった。独り言というネットワークを通じて色々な人たちと非公式な個人的な接点を持ちつづけているのが、そのきっかけでもあった。バイトな時代の戦友たちとの宴会で紹介されたのがきっかけだ。私を紹介したのはベンチャーの走りを行っていた私の恩師とも言える先輩からの紹介である。実際の仕事においての接点は数少ないのだが、彼との出会いは幾つかの転機を支えてくれたものだ。

コンパイラとの出会いは、UNIXやCとの出会いそのものであった。そしてそれを実用実施したのは当時、身をおいていたとあるメーカーでの上司の理解に恵まれていたことにも他ならない。当時の電機業界では、開発マシンとしてのVAX導入が流行りでもあった。そうした開発環境に早期から携われたことを感謝している。入社7年目といっても永い研修期間のために学卒の方たちの5年目と考えてもらえればよい。転機として訪れたチャンスを楽しませてもらった。

必要な道具はアセンブラやコンパイラ以外は、自分達で整備するのがunixでの当時の形式でもありデバッガへのダウンローダもCで作ることになった。最近のMSな世界と異なり全てシリアルまたはコマンドあるいはCURSESな世界であった。スクリーン端末に設けられていたプリンタポートも実はシリアルでありこうしたポートを利用して周辺機器との接続を実現して道具だてを作りつつの開発であった。

開発したコンパイラをDOSベースで使えるようにしてくれたのは、TurboCによる所が大きい。これを日本にリリースしてくれた私の恩師に感謝している。このコンパイラー以前には、ペンギンCも使ったのだが・・・。それ以前というと、専用ワークステーションにモデムをつけてリモートでコンパイルしていた時代でもあった。ラージモデルでようやくコンパイル環境がDOSベースで構築できて高価なリモートアクセスの電話代金を浪費していた時代を笑うことが出来る。

UNIXからDOSになりSDKとして製品化してしまうということも経験した。当時の会社では、全くの未経験の事態であった。出荷する工場部門としては、取り扱い説明書とフロッピしかないのは異常なことだった。QA部門がタッチできるはずも無く自分自身で全国のお客様を回って説明や指導やサポートをすることになった。SEを指向する社内部門からの協力関係が出来て実際にはあたることになった。SDKとしての開発費用など計算のしようのない自分の設計工数ではあった。無謀な取組みでもあった。

組込みソフトをお客様に開発してもらいダウンロードしてデバッグして、出来たソフトに会社が提供するハードウェアの端末を買ってもらいシステムアップしてもらうのである。情報部門という職責の人たちや出入りのシステムハウスといった方たちが私のお客様であった。ハードウェアがお客様の利用で発生した故障で動作しなくなった場合のデータの救済などの仕組みや解析などの経験も出来たが、そうしたことを自分自身の経験値向上にしか利用できなかったのは残念でもあった。

SDKで製品化したことも手伝いコンパイラの改善などについても更に自由度が増したので、自分で改善するループに落ち込み周囲との溝は深まっていくばかりでもあったが気にはしていなかった。日常的に無線機器の開発で利用しているコンパイラ性能が良くなれば、仲間の仕事の成果も良くなるからでもあった。隣人愛でもある。Cをベースにしたリソースの少ないOSも開発し、それをベースにBASICコンパイラの開発にも着手した。無謀な取組みでは、あったかも知れないが、前向きに取り組むことが出来てその中で多くを学ぶことが出来た。こうした状況を突き抜けてしまってからは、知らない自分を知ったことで恐れが無くなったようだ。

そうした世紀を超えて、今は携帯電話の開発支援をしているのだが、メーカーの方々の挑戦といった内容は大分変わってきたようにも思う。納期を恐れて保守的な見積もりや仕事の仕方をとられていた方々も今は変革を求められているようだ。恐れることは無くチャレンジしてみるべきだと私は思う。プロセス改善にチャレンジしている人たちは、今の状況はやっときた順風なのだと思う。何もしなければ生き残れないのだから・・・。恐れる必要はない。チャンスを活かして色々と取り組むべきではないだろうか。

昨今、恩師の仲間と語り合う機会が出来てきた。会社を移籍してみて余計に、当初から米国の会社と渡り合ってきたこの恩師の言葉がより理解できるようになってきた。彼が長らく言い続けてきた「どうするのこんな事がわからなくて、この会社は・・・」業界を憂うというフレーズを最近は相互にMLで話している。雑誌出版の編集の方や出版社のトップの方も同様の様子であるらしい。現役で会社に居る人たちには奮起してもらいたいものだ。明るく、前向きに、仕事には取り組んでもらいたい。

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