業界独り言 VOL130 MIPSは幾つ必要なのですか

知人である初芝電器の立川氏が退職されることになり、挨拶のメールが届いた。立川氏は、転職顛末に登場もしてきた私の尊敬するソフトウェア技術者で、初芝電器に閉ざされず幅広く仲間の輪を広げられてきた方でもある。同期である好田氏のもとで初芝ネットの立ち上げに尽力されてきた。ソフトウェアハウスである前職から初芝電器に転職されてきた方であり組み込みマイコンソフトで製造業界で起こってきた現在までの流れに携わってこられたわけでもある。

大阪への出張の機会が重なり昼食訪問などを企画したものの、実際の当日になると場所の問題などから叶わなかった。初芝時代の上司の方が大阪に来ておられるのは存じていたのだが同様に機会に恵まれずご挨拶に伺えずにいたのだが、こちらは先方との同期も取れてひとしきりお話を伺うことが出来た。閉塞感のある現在の携帯業界の状況についての危惧は私以上に認識しておられた。ISDNの二の舞になるのではないかという認識は私一人のものではなかった。

一面華やかな第三世代携帯のマルチメディアの端末が破格な価格で携帯ビジネスの舞台に登場してくる様は、「これが二万円!?おかしいよな」と思う人たちと、「凄い物が出てきたみたいだから次回の交換で変えようかな」と思う人たちに分かれているのではないだろうか。期待を込めるそうした端末が出回るほどに失血が進むのが現在のキャリアなのかもしれない。誰かがカメラを付けたので、次はビデオカメラが付くらしいとか・・・噂や予測だけで先を決めて破綻していく姿はバブルと呼んだのではないだろうか。

噂を生み出して帯域不足を補う新たな市場を開拓したのはさすが設立十年を迎えた歴史の有る携帯専業のキャリアさまである。帯域不足をパケットで補ったのもつかの間に、パケット自体が成立しなくなるほど混んでしまう盛況ぶりでもある。回線不足と相手の話中の区別も曖昧な若い恋人達は電話が通じないことによる疑心暗鬼での破局になったり、メールが通じないだけで切れたりするほど重要な公共インフラとなっている。無論昨今の不況風で子供達から携帯を召し上げたご両親様も出てきたようだ。(これを契機に子供達が自立してくれればよいのだが・・・。)

そんな問題を拭い去る救世主は欧州からのワークシェアを重んじる人たちが運用するキャリアが打ち出した写真付きのメール端末である。大人気である。おかげで溢れ返ったトラヒックを代わりに賄ってくれるキャリアのオーバーフローを分担してくれる良いビジネスサークルが出来ているようにも映る。キャリア間の競争は有名無実でないものねだりを互いにしているような状況である。であれば、メーカーの方は落ち着いて次代を見据えているかと思うと日常の糧となっている現在の収益源となっているキャリアとの関係を重んじて同様に混乱に追従されている。出入り禁止になるような不義理は出来ないらしい。

WCDMAの端末も続々と投入されていくるのだろうか。MPEG4でない動画が始まったり多様なサービスが次々と繰り出されてくるのだろうか。やはり標準化よりもデファクト規格に走るのが最終的なはお好きなようだ。新型端末の投入で早くも出たばかりのWCDMA端末もおまけについてくる時代らしい。おりしもSIMカードの装着は、ユーザーのTPOに応じて端末を使い分ける時代の到来を告げているのだろうか。これでは端末1台で個人に対応しているという収益モデルの終焉も告げているようだ。

コンテンツだけでみれば、EDGEならぬH”で再生したほうが安価かつ地下鉄でも見れるというメリットさえ生まれる。ちなみに現在のTV電話のモードでは東京駅から品川駅までで切断されてしまう。大変な開発内容であるのは事実だし、また現在の収益を崩してはならないのも、確かなのであくまでも現行の電話機で対抗キャリアからのユーザー奪取に走る姿に固執しているのは時代錯誤だろう。既に溢れ返った携帯は、需要の鍵となる顧客層が目減りしてくる人口ピラミッドの影響を受けている。そうした光通信の時代は、昨年破綻したはずだ。

さて、そんな実情に照らしてみるとCDMA2000を映す対の鏡として開発してきたWIDEのチップや技術が離陸する時期であるのも微妙なものである。近未来の破綻をベースに始まった開発ストーリーなのだが、現在のまま別のHDRなどの回答が見えてきたりしたのも事実である。御客様から通信に見合ったお金を戴くというビジネスモデルではインフラ費用がその原価構成に大きく影響するのは事実だろう。新幹線よりも航空料金が安いのはインフラの維持費用からなのだろう。不動産としての線を交換機経由で利用するのではなくダークファイバのままルータに接続するのが正しい姿なのだろうか。

ともあれビジネスとしてみるとまずはチップを買ってもらうことが必要である。当面の競走相手はWCDMAでは実は無くてPDCの電話機なのである。枯れた技術となったPDCのチップセットは無線部分の実装がハード化されていて同一次元のマイコンを接続する限りにおいては必要な処理量が軽くて済むのである。このためにアプリケーションが高機能化に走る余地が残されていたのである。無論コスト重視で16ビットマイコンに囚われていたメーカーがJavaの速度などで泣きをみたのもつい最近のことでも有る。

そんな相手と戦うQUAD社のチップは32ビットのマイコンを搭載するもCDMAの処理に割かれるためにアプリケーションが鈍いとか言われている。果たしてそうだろうか。WCDMAと比較されるべき内容で対等に戦うことなく先の無いPDCとの機能競走の矢面に立つのは第二某という時代の名前に引きずられている印象のトップランナーに成りたがらない性なのかも知れない。CDMAのチップとしては殆ど独占になってしまっている現状からJavaなどのアプリケーションに対抗すべくバイナリで提供してPCのスタイルでという戦略に無理はないと思う。

しかし、無理があるのは実はメーカーの技術力なのだった。Cソースと生成される処理速度のバランスの判断推察が出来ないような状況で限られたリソースで勝負出来る商品とは成らないのである。言語のみならずRTOSでも同様で80186の時代に能力を搾り出して実現したCDMAの処理構造はRTOSの機能についてもシンプルな実装で実現している。この技術でWCDMAですらARM7で実現したことからも理解されるべき内容であると思うのだが、こうした力は各メーカーには最早無いらしい。日経某の雑誌CMと記事の区別も付かずにWCDMAには100MIPSが必要などという話だけが受け売りされてくる。

自社で物作りをしないために感覚が失われてしまっている。仕事が潤沢にあったためにそうした感覚を研ぎ澄ますこともなく期日までに仕上げるということのみが横行してしまった事が主因なのであろう。評価されない技術はなくなってしまうのである。QUAD社のようにじっくりと技術の追求を出来る環境は珍しいのかもしれない。しかしこうしたメーカーの方がお客様であり対応支援していくためにオーバーヘッドの大きいOSやJavaなどの言語を動作させるという実情も受け入れなければならないのは致し方なさそうである。

御客様のOEM層と呼ばれるグラフィックなどの部分にもQUAD社で手を入れて格段の速度を実現してみせて圧倒的な速度を実現してみせたりするのも最近ではQUAD社の仕事になり始めている。次の世代のチップには無論ハードの機能なども格段に強化するもののこれが出てくるまでの繋ぎでスマートな解決策を優れた人たちのノウハウや英知をいれて仕上げている技術者としては、とてもマトモナ会社なのだが何故か求人に応えてくれるようなマトモナ技術者もいない。みな今の環境でのサイクルを回すことに安住しているようだ。

力任せに別のプロセッサをつけてITRONを動作させるのもよいだろう。お客様が価格的に満足されるのならば、また消費電力で満足されるならば。そんな事よりも携帯電話を購入するキャリアの要求を満たすことのみに走っている自分自身の考えを持たないメーカーもまた病気のように思われるのだが生憎と自らが端末を売れないので致し方ない構図がここにはある。皆が無いものねだりをしつつ不平不満のみをいっている。そんな中でマトモナ仕事をしていると自負しているQUAD社が異様に見えてしまうのは少し悲しいものだ。

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