業界独り言 VOL150 桜の花咲くなかで

無線LANの活用は一般化してきた。例えば自宅においては、無線LANのクライアント二台に対してアクセスポイント三台という状況ではある。近々プリンタ接続をネット化しようと考えているのでバランスが取れるかもしれない。先般の周囲環境との干渉問題はアクセスポイントの増設とローミング対応とでクリアしたのだが既に無線LANのカードとしては一式交換する羽目に陥っている。光ファイバーが到着して現在では端末からのアクセスでは実際の処FTTHを使いこなせてはいない。ホームサーバーの実現で外部からのアクセスには当分応えて行けそうである。FTTHの速度を端末で実感するためには802.11aへの切り替えが必要だが。

802.11である無線LANの標準化活動に参加してきた過去の経験でいえば無線LANの課題はやはり干渉問題であり、裏返すと周波数帯域の問題でもあった。何色で塗り分けられるかという課題で通信業界では良く取り上げられる古典的な話題ではあるのだが無線LANの席上で課題となったのは隣接ビルからの輻射あるいは隣接ビルを反射してくる階下あるいは階上のシステムとの混信である。2次元の話題から三次元に移り結局の解決策はビルのシールドの技術になった。大成建設が保有するという新技術の適用やら輻射しにくいガラスの話だとかである。

たかだか15組位しかないバンドをホッピングして逃げ回るのが現在の802.11bの無線LANなのだが直接拡散してパワーコントロールするようなCDMAのような使い方とは似て非なる物である。これから離陸してくるであろうHDRとの親和性は高いのだが、本質的に同時には利用させるのかどうかという点で簡単になるか複雑化するのかという事に繋がっている。無線LANの開発時点で危惧していたコストは既に解決を見ていて、消費電力の点は解決の目処もないようだ。消費電力に対して留意して設計された同様な仕組みであるブルーテュースとの差は、明白である。無線区間での相互干渉については課題となって浮上してきた。

使い勝手から言えば、ワイヤレス化の恩恵は良いのだとおもう。自宅で細君が机の上でパソコンを広げるというシチュエーションでは電源ケーブルと電話線あるいはLANケーブルが電源ケーブルに減ったのでありケーブルレスではない。各階に設置されたアクセスポイントは、自宅周囲のブロックでは圏内になるようでありセキュリティ対策も同時に必要と感じる。逆に言えばご近所向けのISPを始めてもブロードバンドの帯域は確保されそうである。いわゆる、井戸端ホットスポットなのかもしれない。ご近所インターネットで掲示板や回覧板がなくなると独居老人の動静はインターネットポットによるaliveメッセージに頼ることになるのかも知れない。

何故かビジネスモデルの見えないなかで携帯通信キャリアがホットスポットに参入するという宣言をしたのには何か背景があるのだろうか。IMT2000の意義が問われていることへの対応なのだろうか。モバイル環境に向けたインフラ整備は多種多様になってきた。固定課金のサービスがもう少し増えるとビジネス用途に利用可能になるのだろうが、落下テスト一メートルといったグレードや防沫性などの追求とは相いれないのが現在の携帯である。中にはカシオや日本無線といった会社がレジャー用途の携帯を出して堅牢性という点にも及第点は、とれそうな状況になってきているのかも知れない。一年間利用してきた私のカシオの防水携帯は、すでに黒の塗装は剥げてきて頻繁なメール入力に釦もひしゃげてきている。

さてビジネス用途に持っていくためには、自由な端末開発が必要だろうが現在のコンシューマだけを見込んでいるキャリアの戦略では無骨な限定台数の端末などは見えてこないようだ。数の理論だけでいうと携帯ゲームマシンとの接続に触手が動くのはそうした理由だろう。端末接続が出来たとして課金問題などを解決していくためには別のアプローチが必要だろう。ハード開発に必要な壁は通信キャリアに買い上げてもらうというビジネスモデルがあげられる。通信サービスのみを提供するというメニューが加わればモノ作りという点からは目処が立ってくるのかもしれない。無骨なケースに堅牢ボディという端末が存在するためには、ソフトウェア自体もそれに耐え得る必要がある。

現在の携帯電話の複雑さは、通信キャリアの端末仕様に根差していると言われているがオープンな開発環境の提供などを進めるという方針を打ち出した通信キャリアなどでは斬新な解決策を打ち出さざるを得ないはずである。「使い勝手が機種ごとに違ったってよいぢゃないか」というのは実は大英断だったりするようだ。携帯電話というオブジェクトを簡単に作らせるためのモノ作りが複雑な端末仕様や開発方法論に根差して破綻しているのは事実なのだが、こうした認識を持てないのは通信キャリアへの原価呈示あるいは必要な開発工数の公開などが出来ないからかもしれない。我が儘かも知れないが買ってくれるお客様なのであり、この壁をクリアして初めて市場に端末が出せるのである。

携帯開発の現場にオブジェクト指向の開発方法論を持ち込もうとしている端末メーカーが増えてきたのは、そうしたことも背景にあるのかもしれない。従来の開発方法論では端末仕様マトリックスが複雑化した段階で指数関数的にテスト工数や機能同士の衝突などの回避などに更にリソースが必要になってきているという背景もあるだろう。システム件名の開発に腐心してきたそうしたSE的な人材を携帯開発に投入しようというトップ判断も少しいかがな物かと思う点もある。ビジネスモデルの改革をして通話料の安い携帯電話として無骨な電話機やら高いけれど個性的な電話機を投入していくというのも一つの方法だとは思うのだがいかがなものか。

個性的な携帯電話が満を持して登場する、特徴ある端末の投入に派生する大きな壁を乗り越えての完成にはエールを贈りたい。次代の端末の方向性を示すエポックな位置づけになる筈である。汎用な多機能から特徴ある高性能化という点は、スッキリとした中の端末群からは光って映るはずだ。この特徴ある高機能化には新たな開発方法論が結実しての成果でもある。その意味においてもエポックな製品となる予定だ。Javaの投入で始まった自問自答から導いたネイティブDLL政策は、この製品で結実するのだがアイデアを出してきたのは実は、その端末メーカーのOBだったりするのも人生の妙だ。Quad社の位置づけだからこその取り組みは、携帯からプラットフォームへの答えにもなっている。

頃は、桜の季節を迎えて新しいフレッシュな感性を呼び戻すよい時期でもある。次世代の端末商売を根底から見直す時代に入っていこうという英断を持つ通信機メーカーの登場を期待したものだ。現状を是認しつつの改革にあたってはコミュニケーションが大きな課題となるだろうが、自由な意見交換が社内で出来るインフラの仕組みとともに有志によるそうした活動を助長する寛容さが経営陣には求められるだろう。単にデータ流量が厖大だからといってNetNewsの配信を止めたという会社には、社内の情報流通源を失ったという喪失感がないようだ。プロセス改善などを追求してくると、そうしたインフラの必要性を余計に感じるのだがいかがなものだろうか。

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