VOL162 FFAで3GPPワールドカップに参戦

第三ステージの第三世代がやって来た。FOMAとCDMA2000に続く欧州規格のW-CDMAである。インフラリーグに参戦しているのは、北欧メーカー二社と国内メーカー一社である。都内の清掃工場のそばにある相互接続性試験の現場には、これらの端末機器メーカーも加わり国際的な顔ぶれが集って試験を進めている。昼時にもなれば、周辺の食堂には国際色があふれてくる。無論、ワールドカップ状態である日本にとっては普通の光景なのかも知れないが、町の食堂のおばさんの方が先に気分を満喫しているようすだ。そう携帯の3GPPワールドカップは来月から試験運用開始なのである。

国内で既に、始まっていた旧規格と何が異なるかといえば、ユーザーからは見えない部分である。無論、見えない部分であっても開発している技術者にとってはやり直し作り直しという事になってしまう部分も多いだろう。慌ててメンツのスケジュールに間に合わせた感のあるシステムには、修正部分も多いようだ。目まぐるしく変わっていく3GPPの規格と開発スケジュールを合わせて追従していくというかじ取りは大変であり、打ち切りつつ未確定の部分を仮定して開発した大変さは評価されるべきだろう、しかし実際の評価はユーザーから受け入れられるのかどうかという点でのみ決まるのである。

残念ながら、国内の事情からいえば通話や通信が捌けない事情は都心部に限っている。過半数を占めているトップキャリアの電子メールシステムの不具合などはユーザー同志の実際の電子メールの通信速度でのみ評価されてしまい国内最大の通信プロバイダーでもあるトップキャリアの過半数のユーザーからの評価は揺るぎないものであった。不具合メールなどの対応策で、ますますインターネットからのコネクションのスループットが低下しているこうした通信キャリアでは、ユーザー同志の風評が転ずることのみに留意していけば良かったのである。幸いな事に大勢を占めている通信キャリアのユーザー同志のメール速度に限っていれば問題にはならないのである。提供しているコンテンツにユーザーが満足している限りは安泰というWinWinモデルを突き進みたいというのが本音だろう。

通信プロトコルで技術的な戦略に走った、対抗する通信キャリアはIMAP4などのモバイル向けとして評価される本格的な電子メールを導入した。しかし、過半数以上の大勢を占めるユーザーは素人さんなのであってそうした人たちに効率のよさ悪さなどを理解してもらうのは意味のない事でもある。第三世代として競ってみたところで、結局インターネット側の遅さを身に染みてしまうのだと思う。則ち第三世代とは、通信キャリアの効率を上げることにより顧客を増やすコストダウン策なのではないだろうか。ブロードバンドで通信速度が保証できないのはサーバー側が遅いことが支配的だと目立ってきているように見える。

さて、表題のFFAとは、FIFAのTYPOではなく、Quad社の試作電話機の略称である。Final Figure Accurateというのが正しい呼び名らしい。所謂、最終外観見本のようなものでありQuad社ではブレッドボードでチップ評価を果たすと、試作電話機に仕上げてフィールドテストをするのである。ビジネスとしては、過去に国内某メーカーと一緒に端末ビジネスを立ち挙げてきた経緯などがあり、数年前にはそうした端末ビジネス自体を独立して、やはり国内メーカーに売却して純然たるチップ・モデムソフトメーカーに変貌してきている。自社チップを用いた評価用電話機の形状は、そうした過去の雰囲気を残した金型を使い続けているようだ。

CDMAに関する通信チップは、既にCDMA2000や1xEV-DOなどに対応するものも出しているのだが、ここ数年間の開発で温めてきたW-CDMA対応のチップも登場した。欧州インフラメーカーが、熱望しているレファレンス電話機として選択したのは、この最新仕様に対応したFFAである。既に韓国も含めたアジア地区メーカーが採用してテレビ電話機能を搭載した電話機として仕上げてもいる。コアネットワークも含めた第三世代電話機の開発規模は、分散構成になった各システム間の通信なども含めて完成度を高めることが難しいらしく、またそれを確認する為の電話機の完成度に依存している点も影を落としているようだった。

じっくり議論の好きな欧州メーカーの開発ペースと第三世代の規格策定作業の進行は時間がかかっていたようだ。規格策定をベースにもの作りをして検証して、規格の修正を行っていくという仕事の進め方から見れば、先行して実用化せざるを得なかった国内キャリアの実情とは乖離していたようにみえる。各メーカーも、ある意味確信犯でありつつ、もの作りを進められて世界最初の第三世代携帯電話の稼働を昨年果たすという栄誉を得て国際派として名乗りを上げるのが国としての戦略だったのかもしれない。しかし、途中の暫定規格でもの作りをしてきた経緯なども含めてでき上がった初期システムでの問題点を解決していく為には多くの課題を積み残してしまったようだ。

そうした状況を規格策定現場からの成果物である規格をトラッキングして静かに開発を進めてきたQuad社のW-CDMAチップセットとソフトウェアは、他のCDMAやGSMなどの製品と同様にFFAと呼ばれる評価用電話機の開発が最初の目的であった。この評価用電話機をもって世界各国の交換機メーカーとの相互接続性試験というワールドカップに参戦して、開発が重荷となっているがメーカーに向けてのチップビジネスチャンスをというのがQuad社が携帯ワールドカップに参加している理由でもある。全ての交換機インフラメーカーとの相互接続性試験をクリアすることで端末機器メーカーの開発リソース削減の効果を上げるというのが戦略である。1994年頃から開発している先進のメーカー達とのギャップは5年以上あるのだが。

そうした状況の下で、日本各地で開催される試合会場を転戦しているわけである。FFAという小形筐体に入った形を実現していかないと、こうした相互接続性という試験会場への参加資格とはいえない。ソフトウェアのみを開発しているメーカーであれば検証試験を自身で作成するシミ ュレータで行うのかもしれない。しかし、実際に機器に実装して確認していく上では、そのソフトを採用したメーカー自身が行い自身で計測して解析していくという手順になる。CMMレベル5の会社であれ、そのソフトをシステムとして検証していくというリソースは大変な物と映るようだ。チップビジネスの会社が通信ソフト会社を買収し纏めあげて一つの完成したビジネスモデルを仕上げることに賭けたが、肝心の初期ユーザーを失い破綻してしまった。しかし、その会社自身を高く売りつけるという戦略が功を奏して、携わったトップの方々は悠々自適らしい。買わされた会社の目利きはいかな物だったのか。

Quad社では自分たちのテストクルーがインフラ機器メーカーのサイトに乗り込み確認試験を行い、インフラ納入先である最前線の日本などにも乗り込んでいるのである。試験した成果は、すぐさま交換機メーカーとの相互のバグ出し切りわけを行い端末機器メーカーに引き渡されていく。計測器メーカーとジョイントしてあらゆる条件のテストスクリプトを開発するという専任テストチームを作り上げてきた。標準化作業チームとの緊密な連携によりテストチームのメンバーは、3GPP規格をそらんじているかのようだ。彼らとシステムエンジニアのコンビネーションが北欧地区予選でのウォームアップを行い、本選である日本に乗り込み大型のバンで走行試験をしているのである。歴史の長いインフラメーカーの出先での対応は末梢神経になることもあり血の巡りや反応がきわめて悪い。結局開発チームと北欧チームと試合会場の三点で同時進行で検証試合は進んでいくのである。

W-CDMAのプロトコルは難しく仲々商品としての性能をたたき出せる会社はない。ようやく製品としての出荷を始めてきたメーカーも相互接続性試験合格のレッテルをもらうというシチュエーションには至っていないようだ。暫定規格で疾駆する国内メーカーの戦略を欧州勢が国として受け入れる様子もない。日本で商品性能をたたき出せていない実情などから見ても、中国市場にごまかして参入していくという戦略も成立するとは思えない。最先端の要求が出てくる日本で中途半端な物作りをして、最先端の要求をしている国民の真贋認定をクリアしていけるという雰囲気もない。マスコミは、そうした状況を認識した上で臭い物に蓋をして見てみぬふりを決め込んでいる。

サッカーのワールドカップは開催される。同時に国内キャリアによる欧州規格に基づく携帯ワールドカップも試験運用が始まる。だれもマスコミが注目しないこの事実にこそ、携帯業界の真の姿が浮かび上がっている。携帯ワールドカップを制覇することは、打ち切りになった某民間テレビのサバイバルゲームの頂上に立つようなものかも知れないのだ。しかし、こうした事実が公になることを望まない人たちがマスコミや政治家を通じて封鎖しているとしか見えない。目先の切り口を変えて、その場しのぎに走っている通信キャリアの姿にかいま見るのはW-CDMAという国を挙げて世界に宣言した日本が技術立国という看板を下ろさざるを得ないという姿がかいま見得るのである。

日本の技術者に蔓延った管理志向の耳年増な感覚は、「異能を認めない」という事実などから自分たちがやってきた上での難しさに立脚して判断を下すことが多いようだ。ARM7で実現されるGSM/W-CDMAの共存世界の登場は、こうした感覚に鉄槌を下す結果になるのかもしれない。フットワークも軽くなった日本のメーカーもある、戦場を上位層に移したのである。自分たちでするべきことの見直しなどが出来るのが、本当の意味の管理志向だと思うのだが技術的な視点のフィードバックが根本的に欠けているメーカーが多く誤った認識に基づいたまま「管理が暴走している」という状況を、平準化した従順な技術者たちが自虐的に受け入れているというのが実情だ。

通信キャリアから提示される、商品性能や価格の実現の為に特急技術開発というぬるま湯のサイクルを回して不良債権を増やしていくというデススパイラルに陥っているという事実を認識する技術者や経営者はいないのだろうか。Quad社でのビジネスがいつまで続くのかどうかは不明だ。ユーザーであるメーカーがこうした不良債権状態の育成を続けている現在からは、どこかで破綻の音が自分の腕から聞こえるまで暴走するお客様であっても見守り適切な助言を続けていくというのが奔流である。折しも閉塞感の打破をねらった物作りとして渦中の中年管理職や技術者に向けたボクシングと野球の往年コミックが雑誌として登場した。読み返してもういちど間違えた分岐点に気がついてもらいたいものだ。

多種多様な異能や人格や個性によって、多様なお客様に受け入れられる商品開発や技術開発は進められていく。レッテル貼りに終始するのみで自分たちの個性を磨くという地道な努力を排していては最終ユーザーから見放されてしまうのではないだろうか。「この☆マークの電話機を信頼しているんです」というような事をユーザーからいわれ続けることの重みをもう一度見直すべきであろう。開発者達のモラルが下がっているような会社の商品をお客様は敏感に察知するものである。ビッグマックを食べて麻痺してしまった感覚を、いまいちど味わい深い、松花堂に戻して多様な味のハーモニーを実現していくことに取り組んではいかがなものだろうか。さあ、今日も台湾とエチオピアとパキスタンの混成チームでハーモニー良く北欧戦が始まる。決勝リーグに残りたいものだ。

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