業界独り言 VOL189 Where is Starbucks ?

京都の知人を訪ねた後、大阪に入っていつものウェスティンではないヒルトンに泊まった。いつものウェスティンが一杯なのである。会社の枠で安く泊まれるということや米国のメンバーにもアクセプタブルな部屋のグレードなどが気に入っていたのだが残念だった。いつもよりも一万円以上高いホテルになってしまったのだが・・・大阪駅からの地下街で接続されているという便利さで一万円高いだけのようなホテルでもあった。地の利が楽であるということから地価が高く、結果として料金に反映されているように思える。

ウェスティンは、操車場の向こうにあり歩いていくには遠く、タクシーでいくには気の毒な距離である。いつもはシャトルバスでいくのだが、今回のヒルトンは便利な場所ではあった。ホテルに着くと、既にチェックインしていた米国の仲間達と合流して貸し出し用の携帯電話を各自に渡した。今回は同時にハードソフトのメンバーが来日していることもあり貸し出し携帯も不足してしまっていたのだが、丁度評価用に加入しているテレビ機能のあるWCDMAのハンバーガーのような端末が二組あったので流用することにしていた。

カメラ付き携帯が二台あり、更には着せ替えタイプが一台と残りは問題のWCDMAの端末だった。とはいえWCDMAのチップソフト開発をしている仲間にしてみれば興味があるようで、どれにするか希望をとったところ偉い順にこの端末二台を所望されて作戦は成功した。実際に使ってみて最初の映像を確認した一分後には飽きてしまい、残りの利用では時間の短さと厚さに閉口していたようだった。アメリカ人にもあの厚さは受け入れられないようだった。技術追求のみに走ってしまった成果が無理な時期に開発したことも相俟って難しい状況を作ってしまったのだろうが・・・。

そうした轍を踏まないようにも進めている地に足をつけた開発をしているお客さまの商品は時期的にも無理がなくなってきてアクセプタブルな状況になりつつある。商用化端末のリリースに向けた技術リリースの説明会でお客さまを訪問するのが今回の目的であった。既に前回の三週間の米国滞在で大半のメンバーとは顔合わせをしていたので、スムーズにチームに溶け込むことができたのだが、あいにくと京都で食事を済ませてから大阪に到着した時間が九時少し前だったことも手伝い、私に夕食の斡旋を迫る仲間達に押されて大阪の地下街に繰り出してみたもののバラバラの志向の仲間達と閉店近い時間であることなどで閉口してしまった。

席がありそうな店に入ると、もうラストオーダーだと言われて慌てて一気にオーダーをしたのだが、よく見ると鳥料理の店でありベジタリアンの仲間が一人いて彼にはサラダと枝豆くらいしか該当しなかったようだった。適当に生ビールなどで誤魔化してみたものの不満が募っていた様子だった。不人気のオーダー結果を取り繕いつつシェアしつつひと時を過ごしてもらいホテルまでつれて帰ったのだが・・・。飲み足りなかったことも手伝ったらしくホテルに戻ると最上階のスカイバーで夜景をみつつ飲むことで少し気を紛らしていたようでもあった。明日の朝の時間を確認して集まる場所の指示を行った。

お客さまのオフィスまでは通常は地下鉄で行くのだが、朝のラッシュアワーで駅の係員が押し込むような光景に仲間を晒すわけにも行かないので予め大きなバンのタクシーをオーダーしていた。また、アメリカ人の時間感覚もあるので集合時刻も15分ほどサバを読んでいたのだが、実際問題としてそんなサバの値で収まったにも関わらず表題のようなわがままを言い出す始末であった。朝から珈琲をのまないと始まらないという次第なのだ。運転手にお願いしてスターバックスの店に向かおうと運転手の知っているスタバのある本町を目指したのだが、途中に出来ていた新たな店を見つけて買い込むことになった。オーダーをするのもサイズやミルクの指定など細かくて店員の方が英語対応してくれたので助かった。

この浪費した時間の穴埋めには高速道路を使うことになった。まあ風景も変わり、仲間達にとっては朝の珈琲をのみつつ大阪のビル街を高速で走っていく光景を楽しんでもいたようだった。お客様のオフィスは元家電工場の跡地であり、雰囲気は倒産した会社のようにも見えるのだが内実は日本で一番活気のあるメーカーである。跡地は一部を地元の市などに売却したりしている。もう国内の生産コストではやっていけないのである。ある意味で倒産しているのは家電品の国内生産という事業なのかもしれない。携帯電話で気を吐く、このメーカーは、こうした米国ベンチャーの開発力をフルに活用して製品作りにまい進しているわけであり自分達の持分を明確に認識することで実をあげていらっしゃる。

デュアルモードのシステムチップの提供というものが2G端末であるGSM機能と、3GであるUMTS機能とを併せ持つということになりソフトウェアの構造も大きくバージョンアップが為されてきている。そうした流れの中でGSMとUMTSの組み合わせ技術のデュアルモードが最初のモデルとして離陸し、韓国メーカーでの採用などが話題となってもいる。つい先日までは、そんなものが動くはずが無いと足蹴にしていた他の国内メーカーの方の意識もようやく変わるようになってきていた。UMTSの始まり以前からGSMの開発にも苦労してきた国内メーカーの方々は、自身での開発経験などを通じて簡単ではないIOTなどの取り組みを不安視してきたのも事実なのだろう。

実際問題、このデュアルモード端末の開発に先行して同一チップをGSM専用として利用する開発を行ってきた部隊と3GPP専用として利用する開発を行ってきた部隊の成果をマージしてワンチップで実現することが出来たわけでそうした陣頭指揮を行ってきた各リーダーが今回のセミナーでは講師としてお客様の製品開発への指導にやってきている訳であった。それぞれの持分を説明しつつお客様のソフトウェア技術者の方たちを一同に集めて行うトレーニングと称するこうしたイベントの支援も私達の大きな仕事となっている。お客様の製品開発スケジュールとのすり合わせなども含めて、その場での説明をポイントを押さえて伝えることが重要な意味をもってくる。

朝から初めて夕方にはきっちりと終わらせるというのが、Quad社のスタイルなのであるがお客様の開発最前線の中での専用説明会ともなると日本独特のねちっとしたネバリッコさというかダラシナサというようなものが出てきてメリハリに欠けて最後の時間がずるずるとしてしまった。気が付くと八時近くなっていて五時に終えると言うスケジュールからみると私自身の責任追及にもかかってくるものとなっていた。まあ開発渦中のお客様の中でリーダーであるお客様のキーマンが最後つかまらなかったのが敗因でもあるのだが、そうしたお客様の評価を得て国内に向けて技術提供の口火を切っているのだから善しとすべきであろう。

最後に予定していたセッションはWebベースに移行する新たなQ&Aシステムの説明であったのだが、あいにくと日本の実情である実開発者の多くが協力会社にゆだねられている実情などからすると米国の会社で作った認証の仕組みなどがお客様の社員であることを前提としていることなどが引っかかり夕刻にの時間帯には社員の方が一人もいらっしゃらないというような説明会の実情に照らしても叶わなかったのでもあった。実際の運用移行が来月予定されていることでもあり後日別途説明を実施することにしてお客様の承諾を得て米国メンバーを引き連れて帰りは少し空いた時間帯の地下鉄に乗せて梅田まで戻ることにした。

梅田に到着すると昨日ほどには遅くなっていないこともあり、タクシーに分乗して見知った居酒屋に移動した。多彩な人種である米国人にとってベストな料理屋とは、実は居酒屋なのである。ある意味で小料理を沢山の種類食べると言う習慣になれていない彼らにとってはたとえば一口の牛肉を美味しく仕上げた串ものと新鮮な魚や中華といったものを次々と堪能できるシステムがベストマッチするのである。米国ではこうした豊かな食材や料理を堪能することは難しく、ましてやベジタリアンが混じったり宗教上の理由の人などで構成されたりするグループでは難しいことになる。こうした技術開発をしている仲間達の多くは世界中から参加していることも手伝い食事という視点では日本の居酒屋が脚光をもっと浴びてもよいものだと思う。

明くる朝には、新幹線で東京まで皆を引き連れて移動して、東京駅からはあらかじめ手配しておいたバンに乗せて恵比寿のウェスティンまで急行して早々にチェックインさせてから、青山の事務所近くで青空の下でインド料理店のナンとカレーを楽しんだ。サンディエゴでのフードコートとの違いはあるものの東京の空の下でパラソルのテーブルを囲んで食事をしているのもおかしなものだなぁと皆と意見が一致した。既に試験運用に入っている山手線内の地域を借りたバンで走行しつつUMTSの端末を使って実際に開発をしてきた仲間たちに実体験をしてもらった。今まではシステムチームやテストチームが何度も訪ねて試験をしてきたコースであり、都内での走行試験の成果がインターネットを通じてデータやソースコードとして飛び交った結果を確認しあった。

一通り堪能した後は新宿まで繰り出して、ガジェットストアと彼らが呼ぶビックカメラの西口店で彼らのガジェットへの物欲を堪能しに向かった。豊富だけれども不足しているというのが米国のこうしたデジタルガジェットの部分だろう。確かに日本から出荷される最新型のデジタルカメラはあるのかもしれないが、それらに付随する豊富なアクセサリーの数々までは網羅されないのがアメリカの実情であるようだ。キャノンのデジカメのカメラケースが欲しいというものもいれば、奥様からの要請でWLAN内蔵の小型ノートが欲しいと言うものでした。シャープの最新型などのニートでクールな端末が魅力的にみえるのでしたがXPの英語化という課題について店員の方からは否定されてしまい諦めたようでした。

世界的に見ても稀有な状況の今の日本の実情は、危ういバランスの上に成立しているようで、いつまでも続くとは思えないですね。第三世代が三番目のキャリアの登場で活気付くのであれば良いのですが、一番目のキャリアの変調で国内全体がおかしくなっているように思われるのはいかがなものかと思います。ただし、これからのUMTS端末の実情をみていくとGSM/UMTSの試験場所として日本が使えなくなる事からもアジアでの仕事が増えていきそうな予感を感じるトレーニングとテストであった。中国で試験するようになったとしても表題のようにスタバがないと始まらないといっている仲間達も少し考えを変えないといけないだろう。

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