VOL95 新年度が始まる 発行2001/4/1

携帯電話のソフトウェア開発の問題がクローズアップされるようだ。業界独り言で咆哮するだけでは、いけないらしい。といっても各メーカー殿で進められている現状から脱却するまでの影響力があるのかどうかは別だ。いってみれば、総理の訪米で外国の大統領から「苦い薬は、早めに呑みなさい」と言われるようなものだ。

業界雑誌である隔週発行の例のものからのインタビューである。良く判らないが指名をいただいたらしい。インタビューには指名料は不要であるし。会社としての取組みの中でチップ提供の会社ではあるが、昨今のミドルウェアの事業化などの取組みが評価されてのことであるらしい。多くのメーカーの実情を知るものとして差し支えない範囲での問題意識を紹介するのが対応の背景でもある。

業界でのこの雑誌の占める位置はわからないが、最近では開発ストーリーとして各メーカーの革新的な製品開発の裏舞台を紹介しているのが流行しているようだし、逆に業界内部からは美化しているとして嫌われてもいるようだ。横並びの姿の業界の中で革新的な話が表面的に出てくることはないものだから聞いた話での範囲で革新的な事由があれぱ紹介をしていこうというのが誌面のスタンスでもあろう。

革新的な話でいえば、CDMAが出てきた時の誌面は扱いとしては苦慮しつつの内容であったろう。二度目くらいの特集において、たまたま誌面を当時PHSの開発で苦労していたときの開発スタイル革新について書いたのだが、表面的な内容にのみ反応をいただいたようだった。シミュレータの精度向上と共に実用化の域に達してきたことを示したのが目的であり、RTOSのシミュレータを開発環境に作ったりしての開発の階層化あるいはパラレル開発に取り組んできたことはあまり業界の方にはも、止められなかったようだ。

要は、皆が意識していないときに書いても注目も影響もされないというのが実情なのだと思う。今回の携帯開発でのソフト開発方法論についての問題は、皆が意識しているだけの大事件が起こり、ソフトウェアの開発での問題が世間の携帯バブル崩壊の発端を呼び込んだようなところもあるからだろう。「一機種開発する為には100人のソフトウェアエンジニアが必要だ」と語るメーカーもある。

その会社のトップいわく「1300人のソフト開発体制を構築する」という話などからみるとこの会社では13機種の開発が平行して行われていることになる。開発周期が短くなってきたことから実際の開発期間が短縮されているのではなくて開発を平行して行っていくことで出荷時期を開発期間とオーバーラップさせているのが実情なのだろう。

無論、そんなことで全てのメーカーが開発をしているわけでは決して無い。携帯開発でのモジュール化が進んでいれば機種毎に新規に開発する部分が多いわけで決してないはずだから差分の開発だけをしていけば、可能な線なのである。こうした素直な開発をしているメーカーもあるようだ。こうしたメーカーでは100名もいない開発体制で両手ほどの機種開発を進めているようである。

数少ない機種開発をしているメーカーでは自力がつき機種展開が増えるまでは、スムーズな開発が出来るようだ。順調になり機種展開が増えてくるようになると共栄会社を使ったりするようになり混乱するようになる。開発プロセスが稚拙だからなのだろう。開発プロセスをうまく作り上げたメーカーでは、機種展開拡大が順調に行われてもいる。共通部品化の推進などが進められるからでもある。自前のミドルウェアの整備などやることはいくらでもある。開発投資が活きた形で使えるのだ。それとて内実は大変であるらしい。彼らが開発してきたミドルウェアが世に出ることはない。売るチャネルが無いのである。

ここ数年はまともに週末休んだことがないというようなのが開発プロセスが確立し、ミドルウェア開発も進んだメーカーでの実情でもある。通信キャリア毎の機種対応にまでは中々うまくいかないのが実情である。無論トップのキャリアに対応していく事のみで業界が成り立っていくという考え方もある。開発プロセスが確立したという点からすれば、そうしたリーダーが会社を辞めてもカバーできるようになるのだから会社としては開発プロセス改善あるいは開発プロセス作りに投資するのは無理からぬ事でもある。

ミドルウェアの構築が出来ないのは、開発プロセスの確立が遅れていることや多くの通信キャリアへの対応などが理由の一つでもある。国内モデルだけでもPHSがありPDCがありCDMAがあり更にFOMAもありインタフェースやプロトコルも多様である。彼らが構築したいミドルウェアとしての呼処理のAPI等が異キャリアでの通信プロトコルへの対応などにおいて課題を残したりするのだ。携帯電話自体が通信プロトコルに依存して動作するために待ち受けといった概念の部分の処理の工夫などが電池の持ちなどに繋がることがありこうした問題がおきやすい事も技術的な要因である。

QUAD社で始めたミドルウェアを無料で配布するというビジネスモデルはCDMAという分野での突出したシェアに依存しベースとなるチップ制御を司る部分のAPIが同一であるという点によってたつものでもある。QUAD社では、搭載するプロセッサのリソースをうまくアプリケーションサイドで使いこなしてもらうというのが今までのスタンスではあったが、日本などの深化した利用形態おいては提供しているユーザーインタフェースなどが不足していたという反省にも拠ってたつものでもある。

本来、こうした部分こそ各メーカーが持っているソフトウェアの勝負どころなのだと思うのだが実際にCDMA以外にも多くの開発をしているメーカーにおいては、開発プロセスのばらつきや搭載すべき機能盛り込みの過当競争などが生じているために起こってきたのも背景にある。元もとの理由に遡ればそうした機能競争を引き起こすだけの脅威をPDCのキャリアがCDMAに感じ取ったからに相違ないのだろう。

技術者が流動的になっている現在では、開発プロセスをうまく構築できなければその会社で働く技術者はいなくなるだろう。お客様の間での技術者の異動は良く見かける。同様な他社に移るのは、働く場所として携帯業界が電機業界においては逼迫しており移りやすいのが実情だからだろう。逼迫している実情からは、毎晩タクシーがお迎えにくる会社もあるようだ。タクシーを呼ぶと行き先も告げずに自宅まで届けてくれるらしい。

厳しい中で新年度が始まる、電機業界を引っ張っている携帯開発の業界では、夢幻の中から覚め始める状況になるだろう。開発リソースを無駄遣いしている状況のツケは、開発投資の積算という不良債権処理が始まるのではないか。次に繋がるような仕事の仕方などを始めることが必要だろう。業界競争なのだが、開発競走に陥っているのが実情だろう。

不良債権処理で始まるのは、ソフト技術者のリストラである。開発プロセス確立により少なくとも開発ラインのように作られた電機メーカー内部のラインは縮小を余儀なくされて有効に相互作用を果たすような仕組みに変わるだろう。電機労連の会社によく見られる条件では一度会社を退職したものは元の会社の系列の会社には入れないというのがあり、開発プロセスの出来ていない会社から辞めた人材をそのまま流失して失ってしまうのだ。欲しい人材が、自分達の開発プロセスの手薄で失ってしまうのは悲しいものだ。

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