業界独り言 VOL179 有望な?履歴書

携帯業界の元気の無さとは裏腹に、今Quad社では求人活動がホットなのである。といっても求人雑誌に大々的に打ち出すといったものではない。というのも昨年一度やってみたりした成果からもアプリケーションエンジニアという呼び方で私達の仕事を括るのがどうも難しいらしいということ。また、必要なスキルというものが中々満たせないものであるらしいこと。そうしたモノを満たす人は、日本的な風土の会社に結構染まっていて転職しようなどと考えないという事などが判っているからでもある。

といいつつも、この三年余りの間にソフトウェアのアプリケーションエンジニアの規模は7dbも向上しているし、ハードウェアのアプリケーションエンジニアも6db向上しているのである。我々のビジネスモデルというものに照らしたバランスを取りつつの拡大ということがひとつの足かせでもあるし、先に述べたような日本の技術者の保守性などが理由にあげられることだろう。私も以前の会社での自分を振り返ったり当時の周囲の状況などを思い返すことで納得したり吹っ切れたりしているのも事実ではあります。

CDMAの技術によるチップソフトの開発提供と方式ライセンスで、食べているQuad社というものの実像は実はあまり書籍にもなっていないのが実情でライセンシーの方々が特許開示やら技術契約に基づいてチップやソフトのサポートを通じてしか知りえていないというのが現状かと思います。私達の会社での常識とは、ソフトウェアの技術者であれば、C/RTOSの知識を保有しているという前提に立ち、携帯電話を構成する通信方式のプロトコルあるいは無線制御、デバイス制御、音声音源制御といったことなどの何か要素技術を核としてひとつ以上保有して英語圏の会社としての開発活動をフラットなオープン組織で進めているというものです。

じゃあ具体的な数字で示せといわれれば、こうした活動を進めていく上で必要なTOEICやTOFELのスコアで英会話能力を示したり、典型的な事例として簡単なCの関数をその場でコーディングしたりすることで文法や組込みの勘所を掴んでいるのかといったことを探り、システム構築に必要なRTOSの知識を問題の発生するケースなどを示して対応策を質問して確認するといった極あたりまえのことをまずは行い、個別の人の得意分野の技術について対応する我々の開発技術者とのテレビ面接を通じて検証するということが求人活動であります。かといって現在の自分自身がTOEICのスコアが満たしているのか不明ではあります。

無論こんな一方的なものでは決してなく、最初にいただく履歴書そして必要な英文としてのレジメを通じて応募者の方たちの技術者人生の系譜に思いをめぐらせて辿りつつ、必要な質問や私達の要求しようとしている基礎用件を満たすのかということを考えます。筆が達筆で雄弁な方もいれば寡黙な方もいるので遭ってみなければわからない部分もあります。三年間の求人活動でお会いした応募者の方々の事例を通じて最近では、会って見ようかと思わせる人にしか会わないようになって来ました。経験を通じて見極めることの難しさをより認識してきたことが背景にはあります。自分の限られた時間を費やして、見込みの無い人の面接をするのは無駄だからです。

大会社のように採用人事セクションの機能がそうしたことを果たしてくれていれば楽なのですが、精鋭主義というよりも自分達の仕事をより楽にしようとするからには、要求する水準の技術者を探そうということに徹したいというのがQuad社の採用の真実なのでしょう。日本の会社ではありませんから、事業が左前になればレイオフというのは外資系としての前提ですし、そうしたことによる退職金はなく、給与の一ヶ月分を与えてノーティスが出れば来なくてもよいという部分でもあります。しかし、そうしたことを当たり前と捉えて、自分が技術者としてどういったストーリーでキャリアアップや生甲斐を見つけていくのかということを自前で持つことが最重要なことでしょう。

ヘッドハンターの会社には必要条件として幾つかのキーワードを与えて探してもらったりしますし、Webページに直接申し込んでくるつわモノもいれば、営業マンに個人メールで申し込みをしてくる人もいます。基本的に必要としている人材はアプリケーション技術者という仕事で幾つかのジャンルでQuad社の顔としてやってもらうことが仕事になりますから・・・。最近では細分化された仕事の仕組みで協力会社などと分担して仕事をするのが携帯業界では当たり前になっているらしく私達の用件を満たす技術者というものが稀有なものなのかと思ったりもしていました。

お客様であるメーカーで、毎日のようにQuad社との窓口としてそのメーカーのCDMA携帯のソフトウェア上の問題点について対応していた技術者の方は、実はメーカーの方ではなくて傍系のソフトウェア会社の方でした。実情は、その設計部門に常駐しているという姿なので実は私達は知らなかったりもします。まあ通信機業界では普通の姿なのかも知れません。急激に成長した分野なのでソフトウェア技術者を十分に育成できなかったりしたことなどが背景にはあるかも知れません。昔はFAXの開発をしていましたという技術者の方なども携帯業界には多いような気がします。

何年かQuad社のソフトウェアやチップを使い込んでいくことで構造にも理解が深まり、知識が蓄積されるということが本来は起こると思うのですが、会社によってはそうしたスキルが協力会社にのみ蓄積されて、肝心なシステム設計をしたりする立場のメーカー技術者に残らずに問題を起こしているような状況も見え隠れします。うまくいっている会社は、そうしたノウハウを社内の方が共有するような仕事の仕方をしていますし、うまくいっていない方は、いつも担当の協力会社との打ち合わせばかりに終始しているようなことも散見されます。

うまく仕事を回している会社では、わざわざリスクを冒して辞める必要もないでしょうから技術者としての生甲斐などを感じてよいお客様として付き合っていくというのが私達のスタンスです。うまく仕事が回せていない会社では、仕事に不満が溜まり自分に蓄積した技術とは違う方向に転籍させられたりする際には転職してしまったりする技術者も多いものです。こうした中に良い技術者がいればQuad社に迎える事で結果としてその会社との縁戚関係が出来たような雰囲気も出てくるのがこのQuad社というところの不思議なところです。そう書きながら、最近うまく仕事が回っている会社とも縁戚関係を結ぶようなことに陥ってはいます。技術者の向上心を満たすところとして映るのかもしれません。

さて最近あった幾つかの履歴書から見かける携帯あるいは組込み業界というものでは、二つのタイプの技術者が少なくともいてこれらの二つのタイプの方は優秀ではあるけれど、今募集している私達のアプリケーションエンジニアという仕事には向かないようでした。ひとつは、色々な組込みの開発経験をもち、外資のマイコンサポートをしたりして英語にも堪能で、最近のあり地獄であるところの携帯メーカーに経験を買われて無線機能ではない部分で携帯プロジェクトに参加しているといった人です。この人の場合は、英語の問題もなく経験豊富なのですが募集をしているWCDMAの経験というところが肝心の無線プロトコルではなくてWCDMA端末プロジェクトの経験なのです・・・。ヘッドハンターへの用件が不適切な日本語だったかも知れませんね。

二人目の方は、3GPPの通信プロトコルは規格が読破されていて、これにともなうソフトウェア構造の上位層をすべて設計してASN表記も理解してシグナリングや必要な仕様改版項目などの検証をしつつ実際の通信キャリアや基地居ベンダーとの相互接続試験なども欧州のチームとの間に立ち電話会議やメールで日々に仕事にまい進されているミスター3GPPというような方でしたが、相互テストなどを果たすためには3GPPの規格などを理解した方が必要なのですが、この会社ではそうしたテスト部隊といった職能の方では3GPP規格までは紐解けないために彼が中心になってテストの仕方などに立ち入って進めていたとのことでした。まさに彼の履歴書を見たときは色めき立ったものでした。

しかし、彼が売り込もうとしたスキル経験は確かにマルチベンダーとの相互接続試験を行う上で役に立つ技術ではあるけれども設計されたソフトウェアをお客様が実装した上で発生する問題の解決や、続く製品への機能盛り込みなどのプランニングやお客様とのQ&Aからのフィードバックなどといった実務を進めていく上ではASNを紐解くまでの仕事はなく、むしろ展開された結果でのコードとしてお客様のアプリケーションと結合した状態でトータルな機能を満たしていくということが求められることなのでC言語やRTOSの知識をもたない上位設計を進めてきた彼には残念ながら優秀すぎて該当しないということになりました。

今、採用候補に残っている人は、組込みでC言語ベースの実務開発を少なくとも5年くらい前までは現役でやってきていてRTOSにも明るく、最近のWCDMAの開発においては3GPPの規格などを紐解きつつ実体としてはチップベンダーが提供するチップやソフトを使いつつシステム開発をチームとして成し遂げる中でレイヤ1の動作やレイヤ2/3の実装開発などに腐心してきた方です。面接の過程で、「各社が一からすべてをこなせる仕事とは思えません、Quad社で私の経験を生かせれば自分達のような会社でも使いこなせるようなモノとして世の中に貢献できると思うからです」と言われました。彼の課題は英会話の能力ではあるのですが、理想とする仕事に根ざして進めていく上で必ずや早い時期に彼の英語の能力は飛躍的に向上すると思うのです。

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