サンディエゴ通信 VOL23 「嵐を呼ぶ男?」

今は6月始め、早くも今年4回目のSD出張である(書き始めからまとめるまでに、3ヶ月以上かかり、結局は10月なのだが…)。日曜出発一週間の予定で、SDを訪問されるお客様へのアテンドだ。

火曜日の夜、お客様と一緒に、おなじみの居酒屋「さくら」で夕食を食べていると、日本から携帯に電話が入った。マルチメディア関連で、いつも二人三脚で仕事をしているシスターJからだ。「東医研さん、実はお客様が、来週どうしても Boulder に行きたいと言ってるんだけど…」と切り出してきた。「何を言おうとしてるかわかるわよね?」という問い掛けに対しては、「まあ一応!」と答えるしかなかった…。Boulderは、コロラド州の州都 Denver の北西に位置し、ロッキーマウンテン国立公園のお膝元の都市である。また、コロラド大学がキャンパスを構える学生の街という面も持つ。ここBoulder には、Quad社の小さな開発拠点があるのだ。水曜日にはBoulderオフィスからも、受け入れOKの返事があり、Boulder 行きが確定した。日本のセクレタリに連絡を入れ、移動のフライトと向こうでのホテルとレンタカーのアレンジをお願いした。月曜日の移動になるので、SD の週末滞在分も延長しなければならないが、こちらは自分でやる事になっている。

ホテルの延泊はフロントに電話をして、あっさり OK となった。次はレンタカーである。契約書の指示に従い、車を借りた Budget の SD 営業所に電話をかけた。自動応答のメッセージに従ってキーを押していくと、最終的に Voice Mail システムに繋がった。契約書番号や連絡先、最後に延長したい日数をメッセージで残せというのでその通りにした。あまりに簡単で「これで、終わり?」という感じだ。若干不安になったが、返却時には何も言われなかったので、多分大丈夫だったのだろう。

さて、このところ、一度に訪問されるお客様の人数が多く、ミニバンを借りる事が多い。最初は、大きな車を運転する事に対して、かなり不安を覚えたのだが、実際のところ車の大きさを意識するような事態は殆ど無い。こういうところは、やはり車社会のアメリカである。今回も、ミニバンとして予約したのだが、結局借りられたのは、大型 RV の Explorer だった。乗客が多いせいもあって、いつもよりも気を使う運転ではあったが、久しぶりに RV 独特の乗り味を楽しませてもらった(以前はRV乗りだった)。

ただ、閉口したのは、燃費が非常に悪かった点だ。いつもならば、一週間でタンク半分ちょっとしか使わないはずなのに、今回は金曜日の夜の時点で、燃料警告灯がつき始めた。翌日は、二班に分かれて帰られるお客様を空港まで送らなければならない。空港まで二往復は到底もちそうもないので、仕方無しに夜のうちに給油をしておく事にした。現在カリフォルニアはガソリンが急激に値上がり中で、年の初めは、ガロンあたり $1.79 位だったのが、今は、$2.25 と三割ほど値上がりしている。結局、満タンで$50 を越え、かなりびっくりした(原稿を仕上げている10月は、さらに値上がりし$2.50を越える状態だ)。一方で、次週の Boulder では、まだ $1.79 位であった。このような違いは、州税の差が原因との事だった。

お客様がお帰りになった後は、お楽しみの週末である(こちらの話しは、別編にしようと思う)。ただ、日曜の夕食は、小窓師匠が来週滞在の別のお客様を連れてSD に入るので、そのお客様と夕食をご一緒する話しになっていた。

月曜日になり Boulder へ移動である。普段使わない United Air での Denver に移動ということで、例のスペシャル・セキュリティ・チェック “SSSS” マーク入りの搭乗券だった(安全のためだから、しょうがない)。手荷物を検査機に通すと、担当者が「ケーブルがやたら入っている」とぶつぶつ言うのが聞こえてきた。東医研も小窓師匠同様に(さすがに、Ethernet HUB までは持ち合わせないが)何処でもオフィスを持って歩いているのだ。大量のケーブルに関しては、追求される事も無く、SSSS のお決まりの、金属センサーでのチェックと手荷物を開いての検査で済んだ。

Denver までは、陸地の上の飛行である。SD を出ると、直ぐに荒涼とした砂漠のような赤茶けた風景になり、それが延々続いた。残り30分(SD から Denver までは、2時間半のフライト)というあたりからはロッキー山脈の上になったが、雲が多くかなりゆれた。そして、まだ、山脈の上だというのにどんどん高度を下げていくので、ちょっとひやひやしたが、山脈が切れたと思った瞬間、前方にはDenver 空港が見えてきた

空港内のAVISのカウンターで手続きを済ませるとバスで広大な駐車場に連れて行かれ、自分の予約した車の前で降ろされた。空港からは、一時間ちょっとのドライブになる。空港を離れると、西にはロッキー山脈(山の上部は雲で隠れていたが)が見え、東は広大な本当に何も無い平原という風景である。車を進めるうちに、山にかかる雲の下で、稲妻が走り始めた。やばげな雰囲気である。Boulder のダウンタウンを通り過ぎ、すごい田舎道を走りつづけた後、Quad社の開発拠点のある小さな町についた。

Highwayという名の田舎道Quad社開発拠点

Quad 社の開発拠点の場所を確認した後、そこから車で3分ほどの宿泊先の宿にチェックインした。Quad 社の開発拠点のあるブロックは、ベンチャー系の企業の集合しているリサーチパークのようなところであり、隣は Ericsson、向かいは Kyocera という大手企業であったが、それ以外の二十以上の企業の名前には全く見覚えが無かった。以前、金沢の先端技術大学院大学の近くにある、ベンチャー企業にスペースを貸している建物に出張で行った事があったが、ここも、コロラド大の近所という事で、このような場所が設立されたのであろう。

宿泊先のホテルは、ニュアンスとしては民宿で、部屋数も少なく、住み込みの inn keeper がいるようなところである。そこで、応対に出たのは、腕にタトゥをいれたリーゼントのロッカー風兄ちゃんだった。親切に応対してくれたので良かったが、街中で出会ったらちょっと避けて通るかもしれない。金曜日の夜に会った際には、黒の皮ジャン・皮パンツという完全武装であり、やはりそっち系の人だったようだ。チェックイン後は、早速近所のモールのスーパーまで地図を買い込みに行った。ところが、ホテルに戻ると、急に頭が痛くなってきた。天気も、激しい雷雨になってきたので、「今日は夕食をご一緒できない」旨お客様に連絡を入れ、何もせずにさっさと寝てしまう事にした。

翌朝は、頭痛もおさまり食欲も出てきた。どうやら、1700mという標高に一時的に高山病状態になったようだ。TV のニュースによると、昨晩はDenver近郊で、Tornade が8個も発生したとのこと。結果的に昨晩の選択は間違っていなかったようだ。ある日の夕方にテレビを見ていると、急に「ピーガリガリ」というモデムのような音がし出した。放送事故か?と思うと、放送の音声が途切れ、画面の上部に 「Tornade Alart : ○○ county と×× county でトルネードが発生しています。この警報は8:45 まで有効です」というテロップが流れた。緊急災害放送である。そういえば、空港でも、トイレの入り口に Tornade Shelter の掲示が掛かっていたのを思い出した。一瞬、頭の中を映画 Twister の場面よろしく宿や自分の車が空に舞い上がる映像が頭をよぎった。発生地点の county は、Denverをはさんで Boulder の反対側ではあるが、その晩も食事に出るのをどうしようかとしばらく悩むこととなった。

結局滞在中の一週間は、ほとんど毎日雨で、夕方 Thunder Storm という天気が続き、最高気温が摂氏10度にいかないような気温だった。実は、このような天気は非常に珍しいらしく、年間300日以上が晴天で、夏は暑い日が続くというのだから、現地の人間は相当びっくりしていた。結局、東医研がDenverを離れた土曜日の午後ぐらいから、天気が良くなったという話しを後から聞いた。

初日に昼食を食べに行った近くの街並み後の日は雲が低く垂れ
込めてました
Denver airportの建て屋は
吹けば飛ぶよなテントでした

話しは変わるが、火曜日の夕食で入った、Sunflower というオーガニックレストランで、いきなりウエイトレスが日本語で「いらっしゃいませ」と切り出してきた。さすがに、流暢な日本語とい訳にはいかないが、「飲み物、どうする?」、「注文、決まった? もすこし待つ?」等、いろいろなバリエーションを繰り出してくるので、ちょっと驚いた。(「学校で習ってんのよ」という答えを期待して)「どこで、勉強したの?」と聞くと、「サイパン」という答え。どうやら、しばらくサイパンで過ごした事があるらしい。「あそこに来る人の90%は日本人なのよね」言っていたが、確かにその通りである。昨年の夏休みを過ごしたグアムも似たりよったりで、げっそりしたのを思い出した。初海外出張の時は、日本人が居るとホッとしたものだが、最近は日本人を見てもほっとするよりも、ちょっと避けたいなと思うようになってきた。ちょっとはグローバル化できたのかなぁと思うのだが、食事だけはどうしても日本食から離れられない。こちらは、グローバル化とは別次元で、単に歳をくってきたからなのだろう。

Boulder での食事は、内陸だし、(日本人が多いとは思われないので)日本食レストランも無いだろうと、全く期待していなかったのだが、Sunflower で食した、「期間限定のアラスカサーモンのグリル」は、絶品の「とろサーモン」だった。学生の街であり、リゾート至近の街でもある事から、食べ物に関しては、大雑把なカリフォルニアよりは洗練されているようだ。

さて、Boulder は、晴れていればかなり景色が良いところだそうなので、今回は非常に残念だった。スキー場も近くにあり、スキーシーズンに合わせて出張を組みたいと思う反面、やっぱり無理かなとも思う。それは、実のところ、お客様が来ると、開発が完全にストップするという理由で、Quad 社 Boulder のメンバーはあまり歓迎してくれていなかったように感じられたからだ(前職の会社で、当事者として悩んだ、開発とサポートの両立という課題が、Quad 社に移っても、付いて回っている)。恐らく Quad社 Boulder の面々には、いろいろな意味で、嵐を呼ぶ男として映った

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