VOL30 クローズソースの共有 発行2000/07/27

オープンソースな世界でのソフト開発の進展は、LINUXやGIMPなどの成果などにも含めて多くの成果をあげていることで知られている。組み込み世界においても、そうした取り組みが為されていけば効果があがるのたろうか。組み込みの世界においてのオープンという意味は、一つは道具という意味があるだろう。利用する道具は共有でもよいという考え方である。GNUのクロスツールなどを積極的に利用していくという姿は確かに存在している。組み込みという、匠の技を各社が保有していると思わせる範疇において製品そのもののソフトウェア自体を共有していくという姿は、なじまないと感じていた。
 
現在、QUAD社では、自社技術の展開施策の中でチップ事業とその上で提供するソフトウェアのソリューションビジネス(?どこかのメーカがよく口にしていた)とを手がけている。ライセンスを受けたメーカーには製品の一切合財を動作検証したソフトウェアをソースで基本的には提供しているのだ。すべてというと語弊があり、自社技術の核というべきDSP内部で実施しているものについては外部からのAPIしか見せていない。チップビジネスの競争相手に対しての対応としては当然ともいえるのだが。ライセンスを受けたメーカーがQUAD社との間で共有しているのだから相互には質問のやり取りがあり、メーカーは自社ハードウェアやソフトウェア構成に対してのインプリメンテーションについてカスタマイズや開発を進めていく。いくつかのライセンスを束ねるとかなりの額になるとはいえ携帯というビジネスのボリュームに照らして開発費用というメーカー裁量の中や部品コストなどへの展開でしのいでいるのだろう。まったく経験のないメーカーもこうしたソフトウェアやチップセットそしてサポートを通じて製品化できていくのだから、クローズな世界とはいえ、成果共有をしているともいえる。今日の開発期間短縮の流れにおいて世界中のメーカーが利用して成果を収めつつ完成度を高めていくビジネススタイルは新たな形だろう。携帯業界のインテルとも評せられるQUAD社が保有する先進のCDMA技術があるが故のビジネススタイルである。
 
しかし、パソコンの世界で互換ボードを開発するというビジネスと携帯の開発は異なる。各メーカーが構築したい端末に向けてQUAD社のソフトとチップを当てこんでいくという事だからだ。Intel以外にAMDやNSがあるという状況で選択する場合に、チップを支えるソフトウェアの比重が大きくのしかかってくるからである。現在、こうしたソフトウェアを自社で開発しうるメーカーは国内では片手もないだろう。また、そうしたメーカーもWCDMAなどの世界標準という夢の踊らされて、現実のcdmaOneなどには手が出せないでいるのも事実である。勢い、QUAD社に仕事が回ってきているという構図なのだと思う。互換機ビジネスを追求する輩はどこにでもいて、同様のチップセットを展開してソフトウェアはイスラエルの会社と共同開発しましたなどという展開を示す。QUAD社も含めてベンチャーなのだから、どれをとってもよいのだろう。しかし、昨年からチップセットビジネスが淘汰の季節を迎えある互換チップメーカーは日本から撤退した。それだけQUAD社が標準となってしまったのである。

期待されるマイクロソフトという構図の大変さ、というと語弊があるがWORDが良くならないと子供たちの教育効率が落ちるとかいわれかねないような構図がQUAD社の技術提供にのしかかりはじめている。日本でのi-MODEやEZといったインターネットケータイ文化の速度や異常さが要素技術の開発提供元のスタイルにも変化を求め始めているのだ。キャリアとの共同開発・研究などというものまでも含めて次世代に向けた技術開発をクローズソースなコミュニティの中で育んでいるのだ。私たちQUADとメーカーの間はオープンだが、メーカー相互はクローズという中でわれわれは問題点や今後の方向性をつかみつつ共有成果として修正や改変を進めている。こうした中でパッチリリースなどが提供する毎に、一部のお客様から「問題を隠していたのか」とか「この問題はどこで再現するのですか」といった質問が飛び交ったりする。回答できるものも、できかねるものもある。クローズなソースの共有という事とメーカー相互のプライバシの問題もあり、混迷しているのも実情である。
 
裏を返せば、まだまだ何か新たな展開が出来そうな状況でもあり、そうした可能性について気が付きビジネスの模索もはじめている昨今である。

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