VOL103 携帯電話の多機能化は何処へ 発行2001/5/14

携帯電話の回収騒ぎが続いている。高い完成度が求められる電話機の中に不透明な機能となるJavaなどの搭載をメーカー個別に進めていく流れの中で今後もこうした事態は続くのだろうか。日経エレクトロニクスに掲載された「人海戦術の破綻」特集は、携帯業界に良い意味で影響を及ぼしているのだろうか。

現状の流れからの刷新ということについては、第三世代携帯からという話に結び付けたいという流れも実際の現場にはトップレベルからの方針を実践していくマネージャの取組みとして積極的に取り組んで行くことが求められているのだろう。今はチャンスだと理解してもらいたいものだ。CMMの取組みなども時を得たといえるだろう。

携帯電話というビジネスがQUAD社のいうようなミドルウェアベースに置き換えることでPCのようなうまみの無いビジネスに置き換わってしまうのだろうかという話も記載されていたが、現在の各社で投下している開発リソースと、その製品生産による利益とのバランスシートがどれほどなのだろうか。回収騒ぎの台数も大きくなっている。しかし堅実に回収騒動に至らずにベストセラーを続けている会社もあるのだ。

奇しくも溜池テレグラムの決算が最高益を達成した記事が掲載される時期と重なり、FOMAのサービスインの遅れを試験サービスの開始としてあくまでも前向きに見せていくスタンスと相俟って携帯業界を支えているキャリア先導の図式の破綻というきな臭さも見え隠れする状況でもある。この利益を支えているのは通信料金なのである。

その通信料金の月額が800円減ったというニュースがあった。これだけ減ると、どこぞのキャリアの採算もおかしくなるらしい。つこうてなんぼの世界である。次世代携帯で向かう世界はお客の夢見る世界なのか、キャリアの夢見る世界なのか。周波数が不足する事態から、お客さまが要望するのに繋がらない電話機を売るしかないのが現実でありパケットでしか使わない文化を生み出したのが現状認識なのではないか。

回収で利益を失うのは当然として向かう姿は、開発完成度を高めようとして機種絞込みというOEMの道になっていくのも致し方ない。他社の設計ベースに上位機能だけを乗せこんでいくというスタイルも流行しそうな勢いだ。こうした実情が巷には理解されないだろう。もう携帯電話を製造するという仕事と開発するという仕事は分離されはじめているのだ。これはPCのきた道と同じなのかもしれない。

ハードウェアからソフトウェアへの転換をベースに考えていくならばソフトを動作させるための仕組みとしての技術追求の手綱をさばくことが必要だろうし、キャリアへの納入による利益追求を求めていくのならば、限られたハードウェアリソースでソフトウェアを稼動させるための技術追及といった手綱も緩めるべきではない。

品質問題をベースに捉えていくならば、一度山ほどある機能リストのスリムアップも考えてみては良いのではないかと思う。携帯を買い換える都度ついてくる説明書の厚みは如実にその機能と複雑さを思い知らせてくれる。最近、カシオのCDMAを購入した人が、電話帖登録と電子メールでの利用に辿り着くまでの苦言を呈してくれた。

かつてマックが独特のオブジェクト指向の使いやすさを持って、坂村先生の仰るような共通の使い勝手を見せてくれたことなどが達成出来ればと思うのは身勝手という物だろうか。使うの天国、作るの地獄というのが当時オブジェクト指向への地動説を唱えていた時代の状況を表わした合言葉でもあった。そんなブルーな気持ちをミドルウェアでクリアできれば・・・。

開発のサポートをして、次世代の計画を練っている我々にしてみれば若干の閉塞感すら漂う最近の携帯状況は、順風ともいえる。堅実な範囲で実装適用できる物の選択として仲間の開発した技術が採用される方向に風が吹いているからだ。コストを抑えて機能拡充やサードパーティへのオープン化などの実現が望まれているからに相違ない。

いずれにしても開発スタイルの転機が技術者とメーカーの相互に訪れていることになる。乗り切れない会社や技術者にとっては厳しい現実に直面していくだろう。会社を辞めて考え直している技術者の方などとコンタクトをとって支援技術という分野への転身などについてアプローチを考えてもいる。転機を乗り切ろうとしている元気な会社の技術者達とは、顧客先としての支援をより深めていこうとしている。

携帯という端末開発自体が、開発方法論、開発言語、搭載機能、デバッグ方法論などいずれをとっても広範な技術を要求しているのは事実だが、ベースとなる組込みソフトという世界で電池で長く動作してコンシューマで使っていくという形態が求める、ソフトウェアの完成度の高さは、組込みの世界でも厳しい状況である。

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