業界独り言 VOL178 Who Moved My Jobs ?

あの携帯の溢れるニーズを支えていたのは、アプリケーションだったのか、端末性能だったのか。高性能な端末に高機能なアプリケーションを搭載して買い替え需要を満たしつつ新規顧客を確保していくという戦略を駆使してきたはずなのだが。高性能な3G端末に高機能なテレビ電話というアプリケーションや高速な通信速度という端末性能を果たしてきたのだが、気が付くとユーザーニーズとは乖離していたようだ。ニーズはどこかへ消えたのだろうか、それとも元々無かったのだろうか。携帯電話ビジネスを支えているのは利用者の納める通信費用なのであり、それを支払うユーザー達を取り巻く環境自体は不況の中で支出は縮こまっている。

新しい楽しいアプリケーションを創造してみたところでユーザーが支払う支出額が増加してしまうような流れでは、使い方自体が伸びるはずはないのである。端末ユーザー数で圧倒的優位に立つことの不利益は、周波数問題などからくる新規ユーザー収容力の低下である。トップキャリアが選んだ策は二つであり、一つはデュアルバンド化により1.5Gという周波数に対応すること。二つ目は今後の世界の展開として認識していたIMT2000対応である。残念ながらブランドイメージの確立などを狙って世界最先端ではじめたIMT2000への対応は規格の未整備などから見切り発車の独自規格となってしまった。誰かがいみじくも言っていたが最先端とはパッチだらけな状態であると・・・。

「正しいものは、必ず勝つ」と戦略も無いままに過ごしているプロジェクトも在るようだが、無謀な要求に映るこうした3GPPの技術論を「正しいと信じて遵奉する技術者」と「確信犯ではあるが戦略として推進する人たち」とに分かれて推進が為されてきた。無論IMT2000の規格として提案してきた自社方式に近づけるという戦略や、CDMAの基本特許を回避するといった戦略もあったからだ。仲間と信じてきた北欧メーカーとの第三号選択を採択したCDMAのオリジネーターの方策に対する戦略の中で、政治的な戦略として日本からの排除を国を挙げて行おうといった取り組みすらあったようだ。「正しいと確信した上で戦略として推進する」方策の結果、事なかれ主義の日本での政治的決着は崩壊し国内にも3G-1Xはローンチした。そして今、冷静に見ても形勢を誰もが正しく認識するような状況になった。

護送船団方式で始まり進めてきた政治決着を最終兵器とする方針が瓦解するなかで、技術者達の意識改革にまでどのように経営トップあるいは技術トップが進めてきたのかは興味深い。二年前にある国産IMT2000仕様に向けて推進している渦中の会社に飛び出していった技術者は「日本におけるその道の本流で仕事をしてみたい、どこまで出来るか試してみたい」と言い残して転職したようでした。残された若手連中はかなりショックをうけたと聞きます。そんな彼が目指してきた日本におけるその道の本流の行く末には、今では暗澹たる状況が横たわっているように彼には映る様で、また次の活躍できる舞台を求めて飛び出そうとしています。タイタニックの史実ではありませんが、母体である会社自体を取り巻く状況を含めて正しく認識できるのかどうかという点は意識を持たない技術屋さんが多いようです。

知己である携帯を中心とするメーカー技術部門の課長さんも「時代の流れで大変です」と溢しつつも何とかなるでしょうとタカをくっているという印象でした。課長さんとなると残業は、もともとありませんし、会社の業績から賞与などには大きく減額されたりするのが実情のようで大変な時代になっているようです。何か新しい仕事に燃えているという印象が無いのは残念でした。別の会社で営業を務めている知己も、大手の顧客が業務用無線から離れて携帯電話を各人が保有するという最近の大きな変革と映る事象にも、あまり切羽詰まった意識ではないようで「いゃぁ、あれは使えないでしょうね・・・今、いいシステムを開発しているので完成したら絶対帰ってきますから」と目を輝かして話してくれた。

お客様のニーズの変化や、自分達が提供できる技術の正当な認識をほかの対抗技術との上で持ちつづけているのであれば良いのだが、MVNOなどの登場が始まった現在において通信費用の対価なども大きく様変わりしている事実がある。1.5Gと800MHzの二つのバンドでの対応をしてまで、まだ拡張しようとしている携帯電話の世界と、これらに押されて「国の天下り先だから、実際の周波数利用率という禁断のテーマで追及されない」と考えていたりしなければ良いのだがと思う。発展する携帯電話と衰退する無線という光と影の姿の中で、新たな技術開発で、この無線の世界に光をあてようという若武者達もいる。彼らは、携帯電話の繁栄の影でのタイタニックな状況を認識して自立すべく進めようと腐心しているのだ。会社としてあまりにも携帯に傾注して失ってしまったバランス感覚を、彼らの熱き心が支えられればよいのだが。

自分達の会社の状況、あるいは業界の状況を認識するという力あるいは視点といったものは一度転職した人には、その転職のリスク対価として備わるようである。ひとつの会社のなかでもある意味で転職を続けているような状況の人にも備わっていると思うのだが、なかなか本流として長くいる先輩達の文化を変えられずに表向きは同化してしまっているようだ。こうした仲間達や、状況を認識しうるまでに育ってきた若手技術者達への指導という点で臆せず隠すことなく語れるようなオープンな技術屋の先輩として、指導が出来るような心の余裕を持てる職場であるべきだと思う。日々の仕事の消化にのみ終われて心を無くしてしまうことは何よりも避けたいものだ。

技術者が夢を持たなくなるような、仕事の進め方では仕事すら消化できないのではないだろうか。超大量生産でライン切り替えに腐心するような時代から、短期間に機種開発を望まれる時代に入り高機能・高性能な端末を低価格で提供していけるようなソリューションで仕事を進めていくことが必要なのである。ソフトウェアという大きな魔物を真正面から捉えて逃げることなく改善していくために必要な研究投資という観点が現場の仕事との連携に立って進められているのか。また、その方法論はユーザーからみても有益なものなのか。スパゲッティからペンネパスタのような開発に変わっていればよいのだが。かっちりと詰めた幕の内弁当が互いに侵食しあって味を台無しにしているような状況も見え隠れする。

行く先に待ち受ける3GPPのパンドラの箱、後ろには現在の端末ソフト開発の複雑さに起因する開発力の問題で前進も後退も出来かねるというのが現在の通信機メーカーに見られる光景のひとつである。3GPPの基本技術を仕上られるメーカーは、世界のメーカーとして楽観的に見ても片手で足りるような状況である。GSMとの共存であることも含めて今以上にアプリケーションからも複雑になることは否めない。やはりもう会社として既に恥を捨てた方針を示したりすることを実際の現場技術者が受け容れることをまずは考えるべきなのだとおもうのだが、いかがなものか。まだ過去の開発計画などに根ざした開発を進めるべきかどうかの判断を冷静に下すべきだと思う。

例え、3GPPのパンドラの箱を開けなかったとしても残されているアプリケーションの複雑さを解決するのは別の視点が必要なのである。アプリケーションの相互連携と相互不干渉を達成するためのソリューションが必要なのは疑う余地が無い。この為の方策として二個のプロセッサだというのかも知れないが、その上にたっても組み込みOSとしてのアプリケーション開発スタイルについてはITRONで進めるだけでは不十分なのだと理解していないのではないだろうか。一つ一つのアプリケーション完成度を高めるだけで全体の完成度が上がるような仕組みが必要なのである。携帯ショップでFEPやメーラーを選択してアップグレード購入が出来るというのがあるべき姿なのだと確信している。

そんな夢を共有できる仲間を探しているのだが・・・。

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