業界独り言 VOL226 メーデー メーデー

SARSが原因で戒厳令前夜とでもいうような事態が、隣国である中国や台湾で発生しているらしい。わが導師のKさんが花粉症を逃れてこの季節は台湾で仕事をされていたのだが、SARSの展開で急遽日本に緊急避難してきたのである。緊急事態での事の対処の仕方ということについて正しく認識されていないらしいのは、ソフト開発業界に限らない共通の話のようだ。マスクをしないアテンダントは日本の航空会社だけのようだった。中国・台湾では十日以上の様子を機長・アテンダントともに拘束されたりというのが、実情だと思うのだが正しい情報アナウンスが徹底しなかったりというのたが・・・。世界のそうした渦中でありながらも、成田から帰国するひとへの対応が遅れてしまう様が実情だ。

エレクトロニクスの事実上の供給基地である台湾や農作物供給基地である中国がこうした状況にあることは、日本ではもっと危機感をもって対処する必要があるはずだ。さて、風邪を治そうとラーメン屋にいっても中国ねぎが手に入らないのでねぎラーメンが手に入らないというような事態になるかも知れないが、それはそれでSARS対応としてはよいかも知れない・・・。台湾のセミコンダクター事業なども打撃を受けているはずなので、チップセット業界にも影響は必至かも知れない。ほかのメーカーと同様にQuad社の中国支社の仲間も自宅作業に切り替えられている。サポートという目的だけでいえば、大半はそれで済んでしまうのであるから、ここには問題はないが危機管理としていち早く米国からの指示が徹底しているのである。

「この人について知らない?」と問い合わせがくる。聞けば、第三世代の開発中心の技術者らしい人だ通信キャリアとの共著のパブリシティもあるような人材のレジメが人材情報会社から送付されてきたらしい。危機管理が出来ているかという視点に立つと、開発中心と思われるエンジニアが転職データベースに登録しているということなども注目すべき点であるといえる。危機管理の出来ていると思われる、こうした人材と、その人材が流出しようとした段階で会社がとるべき舵取りとしての危機管理体制もそうした事と同じようなことかも知れない。自分の会社の状況と自分自身のやりたい仕事の可能性を信じている人は動き出そうとしているのかも知れない。あるいは、それを担保に次の一手を会社に要求するという策なのかも知れない。

日本的な開発体制は、破綻してしまったのだろうか。開発を続けていける姿とは、物づくりの企画や技術を持ち合わせている信念あるメーカーと、開発経験を生かして通信機メーカーやソフトハウスから集まったベンチャーシステムハウスとが協業して物づくりを取り組み、基礎技術となるコア部分についての開発リソース分担をQuad社などとシェアリングするという姿が見られるようになってきた。この仕事の仕方は、自分たちの得意な部分を活かそうという意味において中立的なシステムハウスという形態がマッチするようだ。逆に今まで、一社で賄おうとしてきた日本的な開発スタイルを志向してきた会社とタッグを組んできたソフトハウスの懊悩は深いようだ。開発受託をベースとしている彼らには自ら次の一手として、その業界に取り組むことが出来ないからだ。

食品会社に勤めてオマケの企画開発に勤しんでいるという表現に近いものが、最近の通信機メーカーに見受けられる。キャラメルの味で勝負するのではなくてオマケで勝負なのである。食玩という言葉が適切なくらい最近ではお菓子に重点はないようだ。赤外線とカメラで機能が満たせるシステムに連絡用に電話が掛けられます・・・というような仕組みだといえなくもない。企画を考えている人たちにしてみれば、電話の需要だけでは食べていけないのだということになるらしい。カメラにつけるモデムなのか、電話につけるカメラなのか・・・。最近ではオマケ機能が強すぎて、本業の電話では送れないというような商品も出てきたようだ。街角のゲーセンで赤外線で送る、互いに赤外線で交換するといった使い方らしい。カラオケとテレビなどのリモコンにも使える・・・、使い方同士の脈絡のなさについて言及しないのは不文律なのだろうか。

光の国から正義の為にやってきたかどうかは、知らないが電力会社が自前の光ファイバーを駆使したブロードバンドサービスで切り込んできている。ユーザーとして安くて速いは願ったり叶ったりであり、これから始まり始めたIP電話サービスでインフラサービスとしての電話代ビジネスモデルにより成り立ってきたNTTの経営基盤は破綻してしまうだろう。儲け頭の携帯電話会社に出向させるとか、新規ビジネスの子会社を興してリストラクチャリングとコストダウンとを果たしていくというのが最近の流れである。数年を待たずして、IP電話により電話代金は半分以下になってしまうだろう。続く競争が起こるのは携帯電話でも明白であり、現在の通信料金にインフラ代金も全てコミでいる流れが引き起こす携帯電話の通話料金にメスが入る日も近い。

「携帯電話は不要だ」と説く仲間がいる。そうした個人的な意見と彼のサポートビジネスには矛盾がある。実際彼の携帯はいつも電源を切っている。お客様にも電話番号を教えたりしない。会社のデスク番号と留守番電話で十分なのだと彼はお客様に説くのだ。彼は、自分のアイドル状況では頻繁に出先から自分のボイスメールをアクセスするのだ。「私は、会社で仕事をしているものなんです。会社の番号に電話を掛けて出ないのであればどこか他のお客様をサポートにいっているんです。あなたの会社にだって頻繁にいっているのだからそうしたときに他のお客様の要請に応えるのはおかしいでしょう。最善を尽くして終わり次第対応しているんだから・・・」と彼が個人として望むのは、インセンティブの解消と、それによる通信料金の引き下げである。

彼は、このように自分の仕事の意義については矛盾を感じ、そこを考えながら暮らしているのである。きっと彼は自己の持つ意識から、携帯電話ビジネスというものの中での自分のジョブセキュリティが満たされなくなることをいち早く察知できるだろう。自分の仕事の必要性についていつも自問自答しているのかどうかという点は、エンジニアとして必要なことといえる。これも一つの危機管理である。インセンティブがなくなり携帯ビジネスが破綻したかといえば、隣国の例をみると方式が統一されているのが理由なのかそうはなっていない。日本の特殊性ということでいえば、通信方式の違いと寡占の二つからインセンティブをベースにしたアンバランスな競争に陥っているという見方も出来る。

携帯電話の番号割付が自由になれば、公正な競争になるという意見があるらしい。確かに番号が変わらずに通信キャリアを替えられるのならば、手控えることもなくなるだろう。しかし、2Gと3Gの間の親和性が確保できないままに異なったサービスを利用させてきた互いの通信キャリアの差別化策がかえって足かせになるような気がする。今の時代は実は、携帯電話の番号が変わらないことよりもメールアドレスが変わらないことのほうが意味を持つように思うのだ。電話を使っているという光景よりもメールを書いている風景のほうが最近では、一般的となっているのだから。マルチメディアとして更に周波数リソースを拡大利用していく道を選択していくのが正しい姿なのかどうかは、今はわからない。毎日充電するのが当たり前になってきた携帯電話のユーザーである若い技術者たちに低消費電力の意義は伝わりそうにない。

毎年それでもやってくる、黄金週間は、今年も爽やかな気候だ。つい先だってまでの電機労連の会社からみたメーデーは麻痺しきった単なるお祭りだったのだが、ようやく危機意識が身に付いたメーデーに変わってきたようだ。労働者として、単なる雇用安定やワークシェアを謳っても自分たちとして、どのように仕事を開発していくのか、社会的意義を見出していけるのかがカギなのだろう。日本病と云われるウィルスが、ドイツの会社にも蔓延していると聞く、接触感染なのか、勤勉の果ての怠惰が生んだ一般症状なのかは不明だが、仕事の意義を問うて進めていくことが実践されている会社ならば感染はしないはずなのだが・・・。憧れた暮らしが安定志向の、親方日の丸系列への参入だったならば、目的が間違っていたのだろう。

緊急事態になった時に、何が出来るのか、たとえばインターネットが途切れたときを考えると、今こそアマチュア無線をしておいたほうがよいのではと感じている。無論ベアフットかQRPで十分だという感性で楽しむのがアマチュア無線の長続きの秘訣なのだろう。ご近所とのコミュニケーションを良くするために電器屋さんのごときサービスをしている人もあるようだ。思い返しながら、モールスコードやマイクで時差越えの無線通信をすると気が晴れるかも知れない。確実に通信できることが当たり前になってしまったインターネットから、アナログなノイズの中から拾い出す信号を楽しめるような気持ちになるのは、ゆとりといえるかもしれない。コールサインの復活申請を調べていると最近ではFDで申請が出来るのだという、お役所も変わりつつあるようだ。

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