サンディエゴ通信 VOL7 米国で気になること

発行2001/8/3

夏休みも始まり、朝夕の電車は少し空いて来たこの頃である。展示会とお客様を招いてのトレーニングなどが重なり多忙な中に急遽の如く本社への出張指令が下った。前回の轍を踏まぬよう、ノースウェストに戻しての航空券手配をお願いしたのはいうまでもない。 日本航空でのビジネスクラスで、いやなのは日本人が多くてビジネスクラスでお行儀の悪い方が目に付くからである。それだけリラックスしているのかもしれないのだがリラックスしたいの私も同じでお行儀の悪いひととは居たくないのである。 日曜日の午後の出発であり、のんびりと横浜まで出掛けると成田エキスプレスは満席で立ち席乗車しかないとのこと。成田エキスプレス以外には快速でグリーンという選択のほうが美味しかったかも知れないが、気がせいて立ち席乗車で乗り込んだ。 最近の特急では禁煙が当たり前だが、連結部は喫煙可なのであり大学生と思しき男子が座り込んで吸っているのは致し方ないことだった。東京からは立ち席乗車で米国人が乗り込んできてラゲージコーナに陣取って座ってしまった。彼らは煙草を吸わないのだが自動ドアが開いてしまって連結部の若者のたばこの煙は容赦なく座席にも充たされていった。 飲み物を片手に歓談している彼らに外交交渉に臨むものは出てこなかった。この中の女性から第二ターミナルは次なのかどうかを聞いてきた。次の駅ですよと答えると一人の男性が親指を立てた。彼だけが違う航空会社で帰るらしいのだった。同じく東京からは東洋系の若い女学生と思しきチャーミングレディが乗り込んできて、連結仲間に参加していたが、彼女は何かそわそわしていたようで、私が外交交渉に応じたのが目に止まったのか乗車券の買い方を私に聞いてきた。そのうちに車掌がくると思うから待っていたらと説明すると安堵した様子だった。夏休みに入った中国に帰る留学生とのことだった。 煙草を吸っていた若者は、彼女の素性か明らかになったので当然煙草を止めてアタックに入ってきた。窓際にたった二人は、大学の話や地元の話を互いに始めていた。日本の学生にしては、積極的だと思っていると彼も帰国子女の経過が小学校のころにはあったらしい。 先に第二ターミナルで降りるといっていた米国人の彼は、自動販売機は無いのかと私に聞いてきた。昼の時間帯なので成田エキスプレスの編成が短くて連結部に自動販売機はないようだけど・・・と説明すると前の方に眼をやると車両の中まで結構な立ち席乗車の人が増えていて視界もままならなかったようだ。 しょげるのが判ったのだが私にはもうすぐ着くよとしか返す言葉見つからなかった。しかし立ち席乗車の人の波をラッセルしてきたのは車掌と共に車内販売の売り子さんだった。中国帰国の彼女も米国へ帰国の彼氏も二人とも満足げになったのはいうまでもない。改札の案内の後には乾杯が始まっていた。 千葉県が反対しようとどう思うと成田空港が決して便利でないことは明らかなのだが、時間を潰すという目的であれば成田空港のほうが羽田よりは良いそうだ。これは、中国の彼女をなんぱしている大学生の彼氏の受け売りだが。空港の上空で順番待ちしている様は中々理解されていないのかもしれない。複数の空港あるいは滑走路が増えるということで解決してほしいものだ。 成田空港の第一ターミナルも半分のウィングは閉まっていてなんとなく最近の不況の中で見ると余計に日本が貧相にも映ってしまうのは私だけか。滑走路の増設が決まり両ウィングがオープンするのはいつなのだろうか。 ノースウェストは便数が少ないのでカウンターが開いている時間が限られる性もあるのかいつもチェックインカウンターは混んでいる。予め席は先頭の席が取れていたので心配はなかった。ビジネスで席の心配があるのではこまるが。出国審査では書き込み手続きが無くなったので単に行列のみが長蛇になっていた。夏休みなのでいたし方ないところだが、ポイントはここである。出国審査窓口の空いてない側に一番近い列に並んで、窓口が空くのをすかさず察知することである。私は早々に先頭に陣取ることに成功した。しかし、パスポートの読み取り装置が私のパスポートを読み取るのに手間取りまだ手続きが慣れていないことが見て取れた。帰国するときにお手前拝見といきたいものである。 機内サービスもノースウェストに戻りほっと安心してゆっくりと休みつつ過ごすことができた。和食はなかなかお勧めなのだが、ボリュームという点では、不満かも知れない。そうした方にはあとの夜食スナックタイムにおにぎりなどが配給されるので心配はない。そのあとに二度目のデザートタイムも別途ある。さすがに朝の到着メニューではバナナだけもらって済ました。残すのはいやなのである。これは日本人の気質としてあるのではないだろうか。
サンフランシスコ経由で三時間あまりを空港で待機するのだが、この間に例の日本食コーナーで饂飩とカリフォルニアロールをつまんでいた。残念ながら、箸が品切れでフォークで饂飩を食するという珍妙な経験をした。やはり食べにくいものである。 サンディエゴ行きのジェットは発着口の変更のアナウンスがあり、暫く待っていたメンバーは口をへの字にして移動を開始はじめていた。柔道部の集団かとおもうような坊主刈りの一連がいたのだがU16と記載されておりサッカーには見えず何事かと思っているとアメフトだった。さもありなんという一団が、親善試合という名前でサンディエゴまで行くようなのであった。 エコノミーの席とはいえ三時間も前にチェックインしていたので席は先頭の窓側だった。最初のアナウンスで呼ばれてさっさと乗り込んだ。アメフトの一団やら初めての海外個人旅行でどきまぎしている風情の学生やらでごった返していた。サンフランシスコから空路はジェットでは揺れも少ないのだが、最近ではロサンゼルスからのプロペラ機に慣れてしまったのもありバスに乗っているような感覚になっていた。地上に見える風景には、これから進学する甥が行く大学町もあるらしいのだが、まだ地理的な位置はハッキリとは知らなかった。 実は前回の出張の際に、甥の進学祝いで彼が必要とするパソコンの半額を負担しようという申し出を姉にはしていて、半額は彼が今まさにバイトをして稼いでいるはずだった。振込先の銀行口座を教えてもらうように電子メールで姉には何度も催促をしていたのだが梨のつぶてだった。成田空港で買い求めた土産の餅菓子の箱二つは実は最後の秘策であった。 サンディエゴに到着すると後から到着する仲間が借りるレンタカーに乗せてもらうために彼の到着するコミューターターミナルに移動する必要があった。しかし、実際には到着したものの荷物が見つからないのである。荷物が出始めて辺りに人がいなくなるまでバゲージクレームの中で待ち受けたが見つからず困ったなと窓口に行きかけると既に到着していたと思しき荷物が脇に寄せられており、その中に私の荷物は待っていた。三時間待たされた主人とは別に先の飛行機に乗せられてしまっていたのだった。 時間的にロスをしてしまったのだが、コミューターターミナルへ行くレッドバスに乗り込み遅れた説明をしようと思いつつ降り立つと、荷物が到着しないんだと文句をいっている仲間と落ち合えた。彼の場合は、人が多すぎて荷物が積み込めないということでありこうした事態は普通のことなのだという事らしい。空いていれば次は混むから早めに積み込んでしまえという判断もあるようだ。幸い、次の飛行機が到着して降り立つ人影の中に事務所の別の人間もいた。日曜日の移動するのが常とはいえ、同一時刻に三人もが空港で出くわすのは珍しいことであった。待望していた仲間の荷物は最初に出てきたので一安心し、更に期待した三人目の彼の荷物は、同時に到着していた・・・。 レンタカーを借りるために連絡バスに乗り込むと、運転手は特別メンバーの人は居るのかとアナウンスしてきた。三人連れのなかの男がラストネームを告げ呼応すると、運転手はモトローラの業務用無線機に接続されたコンピュータ端末にタイプインして、応答表示されたスクリーンと照合してファーストネームを読み上げて男と照合が完了した。これも一つのプロトコルである。 特別メンバーの車は予め全て用意してあるらしく、バスはまずその地点で止まり三人はすぐさま車に乗り込んで移動していった。合理的な事が大好きな米国の考えそうな差のつけ方である。特別メンバーがまだ取れていない仲間は、カウンターにならび手続きを進めて実際の車を見て確認をしたりしての通常の手続きをだらだらと踏んでいく。こうした長い手続きに慣れているのも米国人の感性として評価すべき点だろう。それだけに特別メンバーなどの合理的な方法を考え提示するのかも知れないが・・・。 借りたコンパクトのキャパリエは冷房・ラジオ以外には何もオプションが見つからない仕様だった。ドアも個別にいちいちロック解除しなければならない。一人でのるのならそれでも気にならないのだが、二人で乗るときには不便であるようだ。当然窓の開閉は手回しである。 サンディエゴの強烈な青空の下で、涼しい風を浴びつつの車窓には、もっと開放的なオープンカーで走り回っているご老人の夫婦の車が何台か追い抜いていき人生を謳歌しているさまが綺麗な絵になっていた。燃費を気にするでもなくバックトゥザフューチャーの60年代に戻ったかのような車が快走しているのである。キャバリエに乗り込んでいる我々は、エンジンの音がゴロゴロいって気にかかるといった日本人っぽい感覚の話に終始したりしている。 今回のホテルは、この仲間が選んだヒルトン系列のエンバシーである。ホテルの概観はずんぐりした印象なのだが中は中空で中庭になっていて天井は明り取りが付いた不思議な空間のホテルであった。中庭をぐるっと囲んだ形の客室棟は12階まであり中庭はカフェとなっていて五階まで届こうかという大きな木も茂っており池には緋鯉が泳いでいる。そんな中庭を一望する展望エレベータが壁に露出する形で四本が運行しているのだ。 マリオットホテルはどちらかというビジネスが多い印象なのと比べて、エンバシーホテルは旅行客が多く子供も多いのが夏休みのせいもあるかも知れないがそんな第一印象だった。朝食は込みで付いているのはありがたいことだった。毎日、ベーグルショップに朝食を食べに寄っていたのがいつものことだった。 大きなモールにも面していて不便さはない。部屋は二つあって寝室とリビングである。リビングにはソファが四人分と低いガラスのテーブル、食事に使える丸テーブルに四人分の椅子、そしてテレビと冷蔵庫と電子レンジと珈琲メーカーがある。寝室には親子三人で寝れるほどの大きなベッドとテレビと洗面があり、あとはバスルームがあるのはいうまでもない。部屋の入り口は中庭に面した回廊側にあり、こちらには窓が設けられていて開放的な感じがある。 私の部屋は、エレベータから程近い便利なところだったが、ひっきりなしに動作しているエレベータの低い周波数の振動が気になったりもしていた。何か、不思議な感じのする中庭を見下ろす天井付きの広い空間は、子供達が飛び回ったり遊んだりするのには適しているようだった。子供ははだしで歩き回っている。洗濯機も低層階には配備されていて四台は無料だった。上層階の一台は、逆になぜか75セント必要だった。乾燥機も当然ついているのだったが仲間はいつもシンクで洗い風呂場で乾燥するので十分だともいっていた。この地域の乾燥具合からいえば確かにいえるのでもあった。 到着した日には、サクラメントの姉には電話していた。彼女の長男すなわち、私の甥が大学進学を決めてアルバイトにいそしんでいるというのが、私の理解だったのだが、彼は、ハイスクールの卒業行事のイベントシャツを企画して収益をあげたらしく、叔父さんの理解とは異なる方法で収益をあげて残りは叔父貴からの特別仕送りを期待しているわらしべ長者状態のようだった。振込み先の再確認を電話でも告げたのだが、翌日になっても電子メールの連絡がないので諦めて強制代執行に移り、土産の間に100ドル札を挟みFEDEXの一番不安全な方法で送付することにした。受取人がいなくてもドアに置いてくればよくて早く着けば良いというような選択である。結果、かえって何も怪しまれることも無く無事送金の目標は達成した。 例によってほとんどコンボイ通りの和食系のレストランで夕食をとっていたのだが食べる量は半端じゃないというのが毎度のことだが驚かされる。チョップスティックという日本食堂でとんちカツ定食というのを頼んだところチキンと豚のカツがハーフアンドハーフで出てきたのだが、そのトンカツだけでも日本では定食の量なのだと思う。 中華レストランでは、4人で行き4人のコース料理を頼んだのだが、ウェイトレスのお姉さんは、もう一品頼まないのかと引かなかった。実際に4人で食べて更に少しだけ残る程度で「ほらね美味しかったし十分だよ」と説明して漸く納得したようだった。 最近は日本でもあるFRIDAYというレストランに入りステーキとエビフライとポテトというプレート料理を頼み、スープにはオニオンスープがカップという名前の小さなボウルに入って出てきた。仲間はポークスペアリブとオニオンリングとエビフライのプレートを頼んだところリブの骨の分もあるのだろうが山盛りの料理が登場して、彼はさすがにドギーバックにしてもらい、翌朝食べたようだ。 今日は最終日でもあり、海の見えるデルマーという海岸地区の日本食堂に向かった。店内ではなくテラスで青空の下で夕食を食べて酔いの回った顔に夕陽が映えるといった中で寿司のコンビネーション弁当というプレートを各人が選んで食べた。私は照り焼きチキンと天ぷらとカリフォルニアロールのプレートで当然ご飯は寿司とは別に盛ってあり、味噌汁がつくということだ。六人ほどで食事をしてビールとつまみを食べたのだが$200ほどだった。まあ、出張中の食事は、全て会社の経費となるので建設的な意見交換が出来るビジネスミールとしてはお安い費用だろう。 ホテルに帰ってくると回廊の部屋の入り口には、食べ終わった皿や料理が置いてあり食べ散らかしたという印象の食べ方のまま残してあったりする場合も多いようだった。ともかく沢山盛っていないと気がすまないというのが米国流の感じ方のようで、それを食べきる人もいるし、食べきれず残すのでドギーバックにするという習慣もあるし、そのまま残してゴミにしてしまうという姿も、普通にある。さぞやゴミが出て漁るカラスで困ると思いきや日差しが強すぎるかカラスは全く見かけないのだ。普通ならカラスが氾濫して外のテラスで食事などできないのが日本なのだが、こちらではやせたすずめが落ちた食材を食べたりしている。 気になることも多い米国なのだが、そうしたことが気にならなくなっていくのが米国なのかも知れない。

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