VOL43 おもちゃとの戦い 発行2000/9/27

日曜の朝、AOLにアクセスしていると知り合いがログインしているのに気が付いてIMでチャットを始めた。某ベンチャーの社長さんである。無線通信ユニットなどの開発を最近は手がけているということでQuad社との接点などもありそうなものであるが、まだ互いのビジネスモデルがすりあわないというのが実情である。さて、そんな社長さんとももう長い付き合いになる。Cコンパイラの開発に伴い周辺機器の開発に着手したころの当時の初芝通信の某事業部は、さながらベンチャーのような勢いがあった。そんな中で、この社長さんと出会い、この会社を通じてOEMという商売にうっていこうとしたのである。

当時は、出来たばかりの端末にソフトウェアをダウンロードするのに適当なパソコンがない時代であり社長さんが米国の見本市にもっていくときに現地でダウンロードをしてデモをしたいというのが要請でもあった。PC8021というラップトップベーシックのパソコンを用いてソフトデータをダウンロードするように週末を使ってソフトを書き上げた記憶がある。幸い無事に現地でも動作したようだった。この社長さんは開発したこのCコンパイラを気に入ってくれてワークステーションを購入して開発環境のなかにインストールして欲しいといわれて応えてあげた。自作の心が共有できる世代の「かつて無線少年だった」時代を共有している世代なのだった。

さて、社長さんと話をしてみると社長さんの業界もビジネスモデルの刷新がありそうで起爆剤は、やはりI-MODEだそうである。ニッチ市場とおぼしき所謂プロ用の機器も「i-mode向け」のおもちゃの船団により価格破壊が起こりそうなのである。修理をしない、ソフトを個別に搭載しないネットワークモデルでのビジネスというゲームの図式に呑まれそうな勢いらしい。特殊なインタフェースであったとしてもね圧倒的なパソコンを凌駕する台数のi-MODEに接続する周辺機器は価格で10ドル程度が目標らしい。バンダイとかニンテンドーの世界なのだ。

こうした価格では、太刀打ちできないと提案する接点も苦心しているようだった。逆にそうした端末が出来ることがわかっていると新たなビジネスも付随的に発生してくるのだと思える。使い捨ての端末の登場である。投げたら壊れる機械でも安ければ、佐川急便も考え直すのではないかと考える。そこまで安い端末価格になるのは通話料金の高さで相殺されるからなのだろうと思うがプロ用のサービスとしてi-MODEがまだ立ち向かえないのはパケット料金の高さであろう。これを解決するインフラはHDRなどで、IMT2000の本来の範疇で解決されるだろうが、それまでに低速サービスで世界制覇を目指しているみかかの置き土産になりそうな、こうしたおもちゃが世界のインタフェースに残っていくのかもしれない。

おもちゃの機器に安価なインフラでアイデアひとつで業務用システムが構築できる、すばらしいシステム構築安泰の時代が、すぐそこまで来ている。そうした未来を予見して、システム開発の事業を本社機構に取り入れた初芝電器の深謀や、あるいは子供の世代からシステム教育を行う事業を通じて、かつてロボコンで高専生の心をつかんだNECのように今度はシステムならば初芝の運営しているものを選択させるような遠大な計画も窺いしれる。21世紀には、システムの仕事が大きく変貌するように思われる。

100万人のSEは実は不要なのかもしれない。おもちゃを組み合わせると仕事が出来るような仕組みを用意するのが企業の仕事なのかもしれない。おもちゃの世紀がくるのだろうか、原宿にあった実家の家業を思い起こしてなんだか釈迦の掌にいるような気分になってきた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。