業界独り言 VOL294 次世代開発への合同コンパ・・・

如月・・・春節、バレンタインと寒さの最終コーナーを過ごしつつも、春を感じるキーワードが続いているこのごろでもある。重苦しい携帯電話開発の話が聞こえてくる中で、前向きな春めいた兆しも聞こえてきている。業界再編というには、程遠いかと思っていた状況も色々なオプションについてケーススタディを模索する動きが始まり本格化することが始まりそうでもある。知己たちから遭遇するような、リストラ再編劇もあれば、新興メーカーによる新たな形での開発ストーリーの勃発なども起こっている。ともあれ、PDCを失くす流れの中でグローバルな視点からも日本の3G本格化に衆目が集まっているのも事実だ。芸術品開発に基金まで募るような開発スタイルが続くと信じている能天気な人がいるとは思わないのだが・・・。実際問題、現場の方々からは主客転倒したような驕った話が聞こえてきているのも事実なのだが。是正するための技術開発や開発プロセスの変化などが起きていることまでは認知されていないようである。

一チーム数百名のエンジニアを自前あるいは応援で擁してキャリア対応の開発に対応している姿で疲弊している歴史あるOEMメーカーもあるし、そうした姿を標榜して追いつき追い越そうと同じスタイルをとるメーカーもある。新しい通信キャリアに向けて製品展開していくという動きの勃発などもあり、製品開発というテーマに対してのコスト算定をしつつ対応の可否を探る動きが出てきている。やはり注目すべきはODM的な動きを期待するOEMメーカーの流れと、ソフトウェアハウスが自身の派遣請負的な仕事の流れの終焉を感じ取り始めての模索ということになる。端末開発・製造を行うという仕組みにメスが入ることになったのは、プラットホーム化進展の結果としての健全な姿ともいえるのだが、実際問題としてLinuxやSymbianでの結果とはいえないようだ。GSMの端末開発では当たり前となったODMを行う会社が3G端末開発においても実績を挙げ始めているということが事の状況でもある。

誰が実際に開発しているのかという問題でいえば、ODMメーカーがリファレンスデザインとしてチップセットベンダーのモデム基本ソフトなどと自社開発した待ち受けアプリや、3rdパーティアプリとのインテグレーションまでを行い、OEMメーカーからのカスタマイズを請け負うというスタイルとなっている。こうした形態に突入する状況で、基本的な分業としてチップセットベンダーが世界中で行っているIOT結果を直ちに反映したりといった仕事も含めて、複数のメーカーが分担協業して並行開発していくという姿が実現され、ODMメーカーがチップセットベンダーのリファレンスハードなどを使って、通信キャリアの仕様に準じたアプリケーションスイートを自前でインテグレーションし複数のOEMメーカーに卸していくというスタイルとなるようだ。こうしたスタイルでは生産技術用のソフトウェア開発までもODMでは行うらしいし、ましてや生産そのものはEMSに委託するということも起きているのが実情である。そうしたスタイルがGSM/GPRSを契機としてUMTS開発にも適用されつつある。

こんなスタイルに飛び込んでいくには「無茶な」という声もあるだろう、実際問題として日本の通信キャリアの細かな芸術品開発を目指してきた開発スタイルとは相容れない部分も多くあり、コスト有利と言われている中国台湾のODMベンダーがこれらを紐解いて作り上げる時代にまでは至っていない。今迄で言えばメーカーが主体的にそうしたワークを行い、自社あるいはサブコントラクターを使って仕様書を咀嚼して自社製品開発のための仕様書を書き起こして進めるという開発スタイルだった。このスタイルを実践していくことに必要な多大なリソースを許容できないというところにまで到達してしまった現在、開発コストの根幹となっている部分を効率よく共用していくというモデルが必要になったのである。かかった費用を計上して請求していくといった工数精算といった形でのソフトウェアハウスの仕事が自社製品としての通信キャリアとプラットホームに適用可能なソフトウェアプロダクトの自社開発、そのカスタマイズといった形になってきたのは大型ソフトと同様なことともいえる。

ソフトハウスが実際に端末のソフトウェアSuiteを仕上げることに要する投資費用とライセンスを受けるための費用などの精査検討を始めている。今まで多数のOEMメーカーのサブコントラクターとして積んできた経験値という貴重な生鮮知的資源を活用していくには鮮度の高い内に行動を興す必要があり、今までのように発注元に対して配慮してきた情報隔離政策から自社主導の社内共有展開型の開発に移る事が達成できる機会でもある。OEMメーカーからの仕様待ちやらハード不具合対応といった無為なサイクルを過ごすことなく自前環境としてソフトウェアとしての開発仕上げを進めることが可能になる。中小のソフトハウスでは出来ない投資ともなるこうした展開は、携帯電話業界のバブル破綻で、正しい付加価値ある開発生産をしていくというサイクルが要求しているものとなっている。雇いすぎたエンジニアの精査は始まり、バランスが取れていくことになる。これを破綻というのか再生というのかは意見が分かれよう。

実際にこうした動きをとり始める契機となったのは、この独り言だとは思わないのだが皆さんの思いや機が熟したということなのだろう。国内の大規模ソフトハウスを自立に駆り立てるのは、従来型の派遣要請という形で対応してきたエンジニアリングビジネスの変容であり、彼らのユーザーからの受注減を通じて、より付加価値の高いビジネスの可能性を求めているということでもあろう。おかしな話であるが、以前に私自身が遭遇したケースでいえば高機能ツール開発による開発の効率化を図ろうとしていた矢先に、一緒に開発していた傍系ソフトハウスの仲間から聞いた話として「効率アップで夜間自動テストなどが出来ると他のチームに説明しても、工数売り上げが下がるから使えないと言われました」というオチがあった。そういう事が感性として開発側が考えているような会社に将来があるとは思えないので、そうした技術開発をしていることを”受注件名”としての理解でしか見ていなかったというソフトハウスを去った仲間も居るし、見限った私もいる。

そんな笑い話を吹き飛ばすような状況として、自分達が開発した効率化達成ツールを製品化して、付加価値ビジネスとして取り組むソフトハウスが出てきた。なんと健全な姿だろうか、掛かった費用を親方会社から搾取するような時代を経てきたものとしてさわやかな気分にさせてくれる。とはいえ、まだまだ工数売り上げで生活しているソフトハウスから見れば、そうしたツールで社内効率を上げた上で親会社からのコスト削減要請に呼応していくという形でしかないのだろうか。国内キャリアに対応していくという要請を複数の会社から受注しているソフトハウスがエンジニアリングとして蓄積してきた経験値を自身の付加価値技術として製品化するということで、効率よく開発していくという当たり前の姿に漸く到達するということなのかも知れない。守秘契約というもので守られてきたOEMのノウハウ自身をOEMがもてあましているということに他ならないのだが・・・。OEMからの期待値は、チップセットベンダーのリファレンスデザインの上に、通信キャリアの仕様に呼応した端末ソフトSuiteが動作させるまでに至っているということである。

通信キャリアからの芸術品開発に支払われる費用が永劫続くとOEMメーカーが思い違いしているとは思わないのだが、開発プラットホーム整備が落ち着いたところで魅力的な製品を開発コスト力良く出せるメーカーあるいはビジネススタイルが残っていく時代に変容してしまうようだ。これを達成出来なければ、携帯バブル崩壊というだろうし、達成出来た場合には再生の胎動といったフレーズだろう。OEMメーカーからの打診、ソフトハウスからの打診双方が始まり、模索の中のお見合いあるいは合コンといった様相である。また、通信キャリアからも同様であり、魅力的な端末開発をしているOEMメーカーを名指しして自分のキャリアの端末開発を達成させるために必要なことは何かといった、禅問答を繰り返したりもしている。開発効率改善のための技術検討に最も前向きなのは通信キャリア自身であるのは、OEMメーカーにはそうした検討する余力もないということでもある。紺屋の白袴状態が続いたままに、UI開発の改革技術などに踏み出せないのは誰もリスクを背負うとは考えていないことなのかもしれない。

3G端末の開発スタイルとして次の三つのオプションが業界では言われている。第一のオプションは、500人以上のエンジニアを擁した上で、実績あるチップセットソフトをライセンス受けて物づくりする。開発には最低でも数十億円以上が必要となるらしい。第二のオプションは、実績のあるチップセットソフトをライセンス受けた上で、そのまま実績あるGSM経験のある海外ODMメーカーに依頼して物づくりする。国外のキャリアに向けた端末作りまではこれで実現が可能となる。ただし、ODMメーカーと同じ母国語を話す自社エンジニアを一人は貼り付けておくことが必要らしい。ODM側では数十名のエンジニア規模で半年もあればキャリア持込サンプルまで構築することが出来るようだ。そして第三のオプションとして話が出ているのは、国内ソフトハウスが乗り出してくるといわれる新ODM事業であり、必要なアプリケーションと国内キャリア仕様のインテグレーションまでを今年中に実績あるチップセットベンダーのリファレンスで動作させるというものだ。この第三のオプションの話で最近は通信キャリア・OEMメーカー・ソフトハウスの間を往復して縁談の取りまとめあるいは合コンの予約をしているのだが、結婚式に漕ぎ着けてベビー誕生となるのは今年なのだろうか・・・。