業界独り言 VOL125 ゆるやかな時間の流れ

今日は、遠地のお客様への訪問出張である。携帯電話業界は、全国各地の開発メーカーが参入している。本日伺うメーカーもその一つである。我々が支援していくメーカーの中でも、コツコツと地道に開発されているという印象のメーカーである。寄せられる質問内容などを通じて、そのチームの実力やメーカーとしての開発スタイルなどが良く伝わってくる。ここは、決して派手ではないが、堅実な物作りのメーカーである。通信機器の専業ではないが、組み込み機器でのRFの経験はコードレスやPHSなどを始めとして取り組んでこられた系譜である。

打ち合わせの中で、私達が製品にこめるメッセージに対して、お客様からの開発に対するメッセージが返ってくる。頻繁訪問できる距離ではないが、一回の訪問で得るところは大きい有用なお客様である。地方でじっくりと開発を進めておられる会社なので自分達の身の丈にあったペースで携帯電話を開発している。この為、私達の提供するチップ全てを次々と取組むわけではない。私達がチップやソフトに対して次々と機能を追加していく流れのなかて差分をベースにした資料などで対応していると不十分であったりもする。

ゆったりとした時間の中で午後からの打ち合わせは三時間あまりを経過していた。真摯なお客様との意見交換で次の製品や展開に向けたテーマも明確になってくる。気がつくと色々なテーマについて話をしいて訪問回数の少なさをカバーするだけの打ち合わせになっていた。辺りはとっぷりと暮れてきて鈴虫の音が響く中で、タクシー待ちをしている。この地方都市の中では大きな電機メーカーでありタクシーなどもお得意さまとしているのだろうが駅構内でのタクシー待ちという地方都市特有の運用形態から時間がかかるのは致し方なかった。
 
続きを読む

業界独り言 VOL124 オープンソースの使いこなし 発行2001/9/17

携帯開発競争は、現在二極化していると言える。一つは原資を稼ぎ出す現行システムの端末開発の競走である。二つ目は次世代に向けた端末システムの開発である。後者は来月からの商用サービスインという状況なのだが、全国規模でないことも手伝ってテレビやメディアからは全く見えてこないのが実情だ。システム開発が難しいという事だろう。端末価格が一桁高くなるようなシステムを今までの延長線上で開発を進めていくことは並大抵のことではない。

儲け頭である現行携帯での開発完成度を向上させて、回収などの不具合を起させないためには買い入れのソフトであったとしても自社で吟味してテストを十分に行って検証していくことが肝要なのだろう。レディメードのソフトは、ソースで販売されていたりオブジェクトで販売されていたりするのだが開発件名に比例して完成度が上がっていくものだろうから実績ライセンス数量が多いからといって完成度が高いとはいえない。

また個別のメーカー毎のカスタマイズが必要な携帯の従来の状況では例えOSがITRONで共通だったとしても、その上に構築された各社のプラットホームがバラバラである為にソフトベンダーとして、その対応に追われてしまうことが問題になったりもしている。その対応力を高めようとして技術者を増員していくためには端末メーカーが経験したように開発プロセスの改善が大前提となっていることは間違いなくそうしたことが出来ていないベンダーであれば今後品質問題を引き起こしてしまうことになるだろう。

続きを読む

業界独り言 VOL123 順序だてた開発の中で 発行2001/9/5

求人最前線は、最近の閉塞感を反映してか感覚的に感じ取った技術者が動き出してきた。グローバル化を達成しているアジアの隣人技術者がスキル・語学などに強みを発揮して目立ってきた。国内の技術者の多くは、上位層を志向する技術者が多く買い入れソフトやチップベースでの開発がベースとなっている事情が反映されているようだ。支援技術者としては語学や幅広い視野と常識レベルでのソフトウェア技術を持つ人材が欲しい。

しかし、国内からは輩出してこないようで、国内で動き始めた技術者にテンプレートを当てはめても中々複合条件をクリアする人材は出てこなかった。開発母体である米国サイドとの技術議論をユーザーの声も含めて反映してコミュニケーションして解決していける能力とは、厳しいハードルらしい。日常の開発を通じて達成していると思われるレベルだと思うのだが難しいと引っ込んでしまうのが実情だろうか。

そうした暮しを続けてくる中で少しづつ結果に繋がる人材にヒットしはじめた。掲載された就職情報誌を見て応募してきた中国人技術者や、ヘッドハンターが探し出してきた国内の技術者などである。国内の彼の会話能力は、TOEICで500を少し越える程度らしく自分自身の進めてきた仕事の説明がおぼつかない様子であった。中国人の彼は三年ぶりに使いましたという流暢な英語で内心は緊張していたらしい。

続きを読む

業界独り言 VOL122 涼しい新学期の開始? 発行2001/9/1

とにもかくにも、第三世代携帯の商用サービスが宣言された。まるで、WINDOWSリリースのマイクロソフトのビルゲイツの如きだ。懸案のデータ通信料金は格安ということで8000円で準固定料金ということだ。賢者の多いキャリアということであるが、今年度中に15万台を狙うというのだが、目算としては少なく設定してあるように思うのは少し酔いが醒めた状況なのだろうか。
 
知人が利用している、試験サービス対象のデータカードによると通信速度は64kbpsまでにしてくださいというご指導が出ているようで彼はもっぱらH゛を使っている。こちらの方が安定にアクセスポイントとして利用できる。瞬間的に384kbpsに達していた時期もあったのだがあっというまに切れるという状況では試験サービスともいえないのが実情だった。本当の意味の試験サービスが晴れて始まると理解すべきか。
 
通信料金の大幅値下げ(?)でも月額の通信料金は5000円以下でデータ使い放題にしてほしいという思いと相容れないのが実情だ。なにをそんなに高速通信に拘るのかいまだにもって判らない。高速通信を利用するのは一部のビジネス用であって全員が利用した場合には成立しないことは、プリ試験サービスを通じて認識されているはずた。ユーザーからの「アンテナ三本なのにデータ速度が出ないんですけれど」というFAQにも禁止技ともいえる、電界強度を下げるという荒業で対抗しているようだ。
 
新学期から始まる商用というサービスの完成度については、今時点では何もわからない。審判が下るという意味においては大変厳しい試験シーズンともいえる。この成果如何で、今後の就職活動にも影響するのだから、キャリアとしては落とせない試験である。少なくとも前期試験の成果は惨憺たるものであった。一ヶ月前にアナウンスをし直すという方策が、通例となるのは情けないことでもある。
 
まあ現在の端末の性能は、方式により決まってしまっているのでiMODEになれたユーザーにとって使えないという「レッテル」を貼られないようにするのには何か秘策が出来たのであろうか。動機が不純なままでの後期試験への取り組みとしてはEnergyStarの対象にもなりえない方策を推進しているとして世界からの糾弾を受けなければよいのだが、実はこの辺りがGPRSに固執している背景でもあるのではないだろうか。
 
通常の使い方、あるべき端末の価格といった面で考えてみると商用サービスという名前の後期試験サービスにおいての端末実勢価格は、どうも通信キャリアが半額持ちますというのが実情のようだ。さすが、太っ腹だ。何はともかく江戸紫ではなくて、「食べてくれい第三世代」という広告の意味であれば、後期試験サービスまでの台数を15万台に制限した意味は、予定している端末助成金は75億円ほどだということになる。
 
怖いのは、やはり端末品質であろう。商用に向けて開発プロセスの改善などの成果が活用できる会社が勝者になるのだ。商用サービスという宣言という新聞報道には「Mコマース」というイメージは見えてこない。一般ユーザーへの展開は諦めて企業向けサービスとして位置付けるという方針を自分自身で納得できていないというのが、後期試験サービスの状況であろうか。
 
後期試験サービスの先には卒業試験があり、今後の進路を決めていく重要な位置付けでもある。動機をしっかり固めて低価格・高品質・多様なサービスという求められている姿、華美な絵空事の世界を追及している現在の携帯業界の方向はいまの自分達の状況と将来を認識していない中での間違った結末への誘導灯のように見えるのだがいかがなものか。
 
今時点で端末価格は10万円を越しますといった瞬間に、まさに瞬間凍結乾燥状態になってしまうだろうし大手町に砂漠が出来てしまうだろう。逆にそれを認識した上で一年間でキャリアが半分の費用を毎年分担していくという構図と通信費用の値下げという図式では、大富豪と大貧民といった業界バランスすら揺るがしかねない。あまりに性急な展開を急いでは平民ですら生き残れないという厳しいありさまだ。
 
すでに他の通信キャリアでのWCDMAの話はどこにいったのかわからないというのも実情だし、ますますわが国でぶち上げた高邁な構想が薄いものであったことになってしまう。このままでは、わが国は単なる超小型の部品立国を目指すしかなくなってしまう。誤りは早期に是正することが必要である。新たな歴史教科書のなかに身勝手な技術戦争といった章が出来てしまうような時代になりはしないか。
 
狭い日本という国の中で消費電力をわざわざ高くする方式を選択して、ますます過熱する技術暴走の中で政治も熱暴走しているようだ。普及が一巡したら買い換えないという堅実の欧米諸国の人たちの個人主義の暮し振りと、流行廃りを追いかけて毎年機械を買い換えていく全国一律中流主義の日本との間の文化ギャップとが生み出したのが理由なのだろうか。
 
大富豪として財を成すなかで投資として取り組んできた次の一手は、出しなおしたほうが良いのではないかと思うのだが賢者のキャリアとして間違ったメンツを捨てられるのかどうかが課題だ。熱暴走しているのでまともに命令のフェッチが出来なくなってしまっている。
 
昔、京都のベンチャーソフトハウスで一日留守番をしたことがあるのだが、ベランダの室外機と手すりの間に何かの看板が飛んできて挟まってしまったのだ。京都の夏でエアコンが壊れたら最悪なのだ。この状況の把握には、当時個人でスーパーミニコンを所有するという事が更に室温をあげていき、ソフト開発に没頭する中でスクリーン上に現れた温度異常の例外処理メッセージでようやく気がついたのである。室外機は死んだ。
 
今年は夏が暑かった。このことが前期試験の結果に出ているのだとすれば、後期試験の時期で冷却が図られれば次の段階に進めると思うのだが。後期試験で進学していく仲間達や前期試験で退学していった者達など色々な局面を迎えている現在である。グローバルな中での後期試験なので世界連鎖不安などとの相互影響も取りざたされている。既に公社ではない会社が進めていることへの責任は国には無いのだから政治は介在しない。しかし、小泉さんの範疇ではないのか?
 
後期開始は、来月だ。今回の新聞報道は、前半戦の終わりを宣言する。短いハーフタイムの中で後半戦への布陣や選手交代が勝利への選手交代枠は三人までだし、外人枠もある。サッカーでは帰化してまで日本で仕事をしようという優れた選手はいるのだが。この試合は、国際Aマッチだったのかも判然としない。故障者続出というこえには、グラウンドの不良も一因と言われているのだが・・・・。