VOL100 来るべき無線機に向けて 発行2001/4/22 太平洋上

一週間の慌しい出張を終えて機上で、書き綴っている。色々な収穫のある出張であった。幾つかの現在からの方向付けの中で明らかになってきたことなどから、少し確定して見えてきた無線機の将来について纏めてみようと思う。携帯電話とはいえないのかもしれない。

・大ゾーンで固定料金で携帯電話と同じサービスを提供しうるソリューション
・携帯電話のアプリケーションをメーカーから離れて開発しうるソリューション
・何処でもつかえるマルチモードのソリューション
・グループ通信などの機能の取り込み
・情報量を制限した中での楽しめるコンテンツ技術
・安価に構築するというアプリケーション開発技術

半径50Km以上という広いセルサイズをカバーする技術がCDMA応用として既にサービスインしている。この応用の仕方には、旧来から公共用として議論されている機能が取り込める素地がある。まとまった周波数割付を日本で行うには、モトローラ社のサービスからの移行が容易だろう。MRCでのそれを移行するには政治色が強すぎる。

携帯電話のアプリケーションをPCのように別に開発する技術は既に登場目前となっている。iアプリのように制限されたものではなく、通常の公共通信を目的に開発されてきたものが出来るようになる。これは大きな地動説への変換も意味するような出来事になるだろう。

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VOL99 デジタル無線の巻き取り 発行2001/4/19 米国

米国でのトレーニングセミナーを終えた。新たな機能を盛り込み性能の話題が尽きないチップだったが、十分な性能を展開できることが明らかになった。これは、ビールのオツマミにも十分合いそうな状況である。日本で起こっている、新たな機能競争との接点で新機軸をも組み込める可能性も出てきた。

マルチチップにしなくても十分な性能を出せるということは、素晴らしい事だ。こうしたソフトとハードの両面を追求した物作りが日本では出来なくなってしまっているのだろうか。実証主義として実動作をさせて性能余力を検証していく姿は内部で見ていても中々のバランスである。性能は出来るだけあげておいて・・・という手合いのソフトウェア技術者が多くなってきたのは全体の風潮である。ただし日本だけではないか。

ソフトダイエット大作戦に向いた施策として中間コード形式の利用が功を奏しそうだ。実際にOSとして採用したものがC言語開発よりもコンパクトな容量で応用を見せ始めているようだ。マシンが高速になってきたことの裏返しともいえるのだが、高速になった性能をソフトウェア屋さんが勝手に使いきっているという声の多い昨今のハードウェア屋さんからみると痛快な技術である。

JAVA狂想曲が流れている現状からは、ハード屋さんはコストダウンという観点から離れてしまっているソフトウェア屋さんの状況との付き合いで疲弊してしまっているのだろう。ソフトウェア屋が間違いを侵さずに納期に仕上げるということのみに注意を払うようになってしまったのは誰のせいなのだろうか。あらたなオツマミを用意してビールでも呑んで貰うしかないのだろうか。

米国では、携帯電話でもないデジタル無線が日本とは違って結構普及している。大ゾーンをカバーできる広いエリアとグループ通話などのシンプレックスという通信形式が安価にサポートできているのが売りのようだ。タクシーの運転手がもっているのは、こうしたデジタル無線である。これから電話も掛けられるのが味噌でもある。同様のデジタル無線は日本でもあるらしいが・・・。

社名自体が次世代電話という、このデジタル無線を運用している会社も昨今の第三世代という変化の中で変貌しようとしている。独自の技術で大ゾーンをカバーするデジタル無線ではあったのだが、機能不足などアプリケーションよりの話が出てきたのだろう。かつて無線では世界一を標榜していた会社の技術だったのだが無線から携帯への移行でこの会社も埋没してしまったようだ。

次世代電話という会社が選択した技術は、CDMAである。この技術は潰しが効くようで設定パラメータ次第で大ゾーンの運用が出来るようになるのだ。実際問題として、すでに100kmというサービスエリアで利用実績を広大な豪州では達成したらしく、こうした実績も採用の条件だったのであろう。さらに、無線通信につきもののグループ通話という応用は既にIP通信で達成できていることから話が急展開しているようだ。来年にはこうした移行が本格化する。

日本での同様な業界では、利権争いに終始しているようだが、米国で同様な物を利用している姿と何が異なるのかはよく判らない。CDMAという携帯電話が特殊用途と見られていたデジタル無線すらも巻き取ろうとしている姿には、携帯電話で始まろうとしているプラットホーム化の実現などが、これからの展開に欠かせないことになろうとしているのだと思う。

同様な周波数帯を利用しながら、利用率が上がらないデジタル無線の現状を前にしていると携帯電話で逼迫した事態とのギャップがより強く感じられる。ビジネス用途ということに限ったデジタル無線のあるべき姿としても価格破壊とサービス改善の両立を果すべき時期に来ているのだが、今までの延長上で技術開発をしている事に誰もクレームをつけないのは何故だろうか。

VOL98 作り直すということ 発行2001/4/16

新たな技術の提示を行う説明会を開催した。当初の予定ではコンテンツプロバイダをも対象にしたもの大々的なものにするはずだった。しかし、実際にはキャリアへの説明が不足していた事から、まだキャリアが採用を決めていない技術について、関連するコンテンツプロバイダを召集するのは時期尚早だった。急遽メーカーのみを対象として技術の説明を行った。

CDMAの端末メーカーに対してデモしたのは、QUAD社から技術パッケージで提供しているソフトウェア拡張による物で、サウンドとテキストと静止画が制御できるフォーマットとそのプレイヤーの技術である。既にカラオケなどで利用されてきたのであるが、今回の版ではアニメーション機能と効果音の機能が追加され簡易な動画仕立ての広告までもがコンパクトなデータ量で実現出来るまでになった。

この技術については、日本のメーカーとQUAD社には確執があった。昨年提供された、初版の技術提供に際して日本のメーカーの実装での性能評価が十分でないという状況があり。各種カスタマイズをしてきた日本のメーカーでの適用との接点ですれ違いが生じていたのである。漢字表示や高機能な各種アプリケーションが当然といった状況の日本とテキストベースで済んでいた米国のそれとではCPU処理の量に差が生じるのは致し方なかった。

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VOL97 NDAと情報公開 発行2001/4/9

日経某の記者の方々からのインタビューを受けた。その内容には会社人としての私に求められているものなのか個人としての私に求められているものなのかは、曖昧な点があった。前回のバイトの場合は、メーリングリストからの咆哮を意見として掲載したら・・・という師匠からのアドバイスがあったのが背景であった。

現在のQUAD社という立場で認識している各開発メーカーの事情と背景から、ミドルウェアの開発提供などの方向性を導出してきたのは別の事由によるものだった。CDMAの技術をチップとソフトウェアとで提供しているとしても開発メーカーとの間のNDAに含まれるCDMA制御といった部分と上位のアプリケーションの展開での情報公開が入り混じっていたことにより開発メーカーに混乱を生じさせたのが理由である。

iモードの登場は、CDMAの登場による脅威やWCDMAへの布石として溢れたトラフィックをパケット通信で解消することなどが、戦略目的だったのだろう。その目的は、十二分に発揮されすぎて次世代携帯が霞んでしまったかもしれない。みな愛のサービスで圧縮された情報よりもメールの恩恵の方が有り難かったようだ。専用ビジネス端末業界の巻き取りを果たすことが愛のサービスの副次的な効果でもあったろう。

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VOL96 元気が何より 発行2001/4/4

桜の花びらの中、新人然とした未だしっくりとしないスーツ君たちを囲んで青山墓地では昼食タイムの花見が繰り広げられている。墓地参拝の人も行き交うなかで芝生や参拝道に青いシートが広げられ、幾人かは墓地の縁に腰掛けている不届きものもいるようだが・・・。伊藤忠のビルに続く墓地横断の参道沿いには屋台も並べている。

ときおりの強い南風が、変わりやすい春の中でも暖かい中で気持ちよくさせてくれる。近くの店で買い求めた寿司弁当を抱えて仲間との昼食に出てきた。日曜日には不届きものだらけだったという墓地も中にまで進んでいくと広い芝生のスペースでゆったりと食事が出来た。最近、オフィスを関係会社との共有を始めた関係で窓付きの昼食スペースを一つ潰されてしまったので窓のない部屋での昼食続きだったこともあったのだが外での昼食はまさに開放的だ。

新人達の季節と桜の季節がマッチするのかどうかは日本人の感性の問題でもあるがバックトゥザスクールが秋となるのも勉強を始めるのには合っているようにも感じる。夏休みをゆっくり遊んでもらうのは良いことだと思うが、いかがなものだろうか。とはいえ、会社では定期採用という制度で採用するほどでは無いにしても毎月のように拡大しているのが最近の状況だ。毎週のように最近では内線番号リストが増えている。

メンバーが増えると同時に仕事も新たなタイプの新人が増えてきている。新しいタイプの仕事は当然異なったお客様が対象となってくるので今までとの延長で片付かなくなってくるものである。自分達の仕事のプロセスを改善しつつ責任と権限の委譲をして分担するようになってくる。採用というプロセスには、ようやくウィザードのようなスーパーレディまで登場しそうな状況も起こり始めている。優秀な人材が飛び出てくる会社のプロセスには心配だが・・・。

それぞれの仕事が米国との協奏により成り立っているので、色々な案件の同時進行という中では確認の精度が求められる。担当の営業マネージャに依頼したつもりがメールのみだと気が付くと彼は中国の会議にフライトしていたりする。それぞれの人の状況もスケジューラで内容を確認しつつ対応する事が必要だ。気軽に引き受けた内容が実際には、頼んだ本人は本社の人間と別件に当たって不在だからお願いね・・・といったトホホな内容だったりもするが。

色々な開発テーマに対して戦略を立ててリソースアサインしていくのはどの会社でも同じであり、変わり行くユーザーニーズを押えずに自分自身の変革をしなければ取り残されてしまう。開発が出来てもコストが引き合わないのでは、それは開発が出来たとはいわない。開発をしなかったほうがよほど前向きである。体面だけで進めてきた開発の不良債権のようなものである。

そうした中で、戦略も刻一刻と変化していくものであり、そうした流れを理解していかないと疲れることにもなりかねない。韓国の方ほど血が滾ることはないが、日本人は乗りやすいので乗った船が出ないといらついてしまったりすることに陥りがちだが、ここは外資の仕事であり論理的に切り離し心の健康を維持できるように努めなければならない。元気がなによりである。

お客様たちの新体制の情報も新聞などから入ってくる。新たな大型研究所の建設にまい進しておられる元気な会社もある。力不足を補うために有力技術者を他事業部から引き抜いてきて強化しているケースもあるようだ。抜擢された技術者は優秀なだけに彼らのモチベーションを維持することは開発プロセスなどの要因で負の方向に向けられるともとのモクアミどころかビーイングされたりトラバーユされたりする可能性も高い。入れ物を作る前にプロセスを高めていくことについては釈迦に説法だが・・・。

VOL95 新年度が始まる 発行2001/4/1

携帯電話のソフトウェア開発の問題がクローズアップされるようだ。業界独り言で咆哮するだけでは、いけないらしい。といっても各メーカー殿で進められている現状から脱却するまでの影響力があるのかどうかは別だ。いってみれば、総理の訪米で外国の大統領から「苦い薬は、早めに呑みなさい」と言われるようなものだ。

業界雑誌である隔週発行の例のものからのインタビューである。良く判らないが指名をいただいたらしい。インタビューには指名料は不要であるし。会社としての取組みの中でチップ提供の会社ではあるが、昨今のミドルウェアの事業化などの取組みが評価されてのことであるらしい。多くのメーカーの実情を知るものとして差し支えない範囲での問題意識を紹介するのが対応の背景でもある。

業界でのこの雑誌の占める位置はわからないが、最近では開発ストーリーとして各メーカーの革新的な製品開発の裏舞台を紹介しているのが流行しているようだし、逆に業界内部からは美化しているとして嫌われてもいるようだ。横並びの姿の業界の中で革新的な話が表面的に出てくることはないものだから聞いた話での範囲で革新的な事由があれぱ紹介をしていこうというのが誌面のスタンスでもあろう。

革新的な話でいえば、CDMAが出てきた時の誌面は扱いとしては苦慮しつつの内容であったろう。二度目くらいの特集において、たまたま誌面を当時PHSの開発で苦労していたときの開発スタイル革新について書いたのだが、表面的な内容にのみ反応をいただいたようだった。シミュレータの精度向上と共に実用化の域に達してきたことを示したのが目的であり、RTOSのシミュレータを開発環境に作ったりしての開発の階層化あるいはパラレル開発に取り組んできたことはあまり業界の方にはも、止められなかったようだ。

要は、皆が意識していないときに書いても注目も影響もされないというのが実情なのだと思う。今回の携帯開発でのソフト開発方法論についての問題は、皆が意識しているだけの大事件が起こり、ソフトウェアの開発での問題が世間の携帯バブル崩壊の発端を呼び込んだようなところもあるからだろう。「一機種開発する為には100人のソフトウェアエンジニアが必要だ」と語るメーカーもある。

その会社のトップいわく「1300人のソフト開発体制を構築する」という話などからみるとこの会社では13機種の開発が平行して行われていることになる。開発周期が短くなってきたことから実際の開発期間が短縮されているのではなくて開発を平行して行っていくことで出荷時期を開発期間とオーバーラップさせているのが実情なのだろう。

無論、そんなことで全てのメーカーが開発をしているわけでは決して無い。携帯開発でのモジュール化が進んでいれば機種毎に新規に開発する部分が多いわけで決してないはずだから差分の開発だけをしていけば、可能な線なのである。こうした素直な開発をしているメーカーもあるようだ。こうしたメーカーでは100名もいない開発体制で両手ほどの機種開発を進めているようである。

数少ない機種開発をしているメーカーでは自力がつき機種展開が増えるまでは、スムーズな開発が出来るようだ。順調になり機種展開が増えてくるようになると共栄会社を使ったりするようになり混乱するようになる。開発プロセスが稚拙だからなのだろう。開発プロセスをうまく作り上げたメーカーでは、機種展開拡大が順調に行われてもいる。共通部品化の推進などが進められるからでもある。自前のミドルウェアの整備などやることはいくらでもある。開発投資が活きた形で使えるのだ。それとて内実は大変であるらしい。彼らが開発してきたミドルウェアが世に出ることはない。売るチャネルが無いのである。

ここ数年はまともに週末休んだことがないというようなのが開発プロセスが確立し、ミドルウェア開発も進んだメーカーでの実情でもある。通信キャリア毎の機種対応にまでは中々うまくいかないのが実情である。無論トップのキャリアに対応していく事のみで業界が成り立っていくという考え方もある。開発プロセスが確立したという点からすれば、そうしたリーダーが会社を辞めてもカバーできるようになるのだから会社としては開発プロセス改善あるいは開発プロセス作りに投資するのは無理からぬ事でもある。

ミドルウェアの構築が出来ないのは、開発プロセスの確立が遅れていることや多くの通信キャリアへの対応などが理由の一つでもある。国内モデルだけでもPHSがありPDCがありCDMAがあり更にFOMAもありインタフェースやプロトコルも多様である。彼らが構築したいミドルウェアとしての呼処理のAPI等が異キャリアでの通信プロトコルへの対応などにおいて課題を残したりするのだ。携帯電話自体が通信プロトコルに依存して動作するために待ち受けといった概念の部分の処理の工夫などが電池の持ちなどに繋がることがありこうした問題がおきやすい事も技術的な要因である。

QUAD社で始めたミドルウェアを無料で配布するというビジネスモデルはCDMAという分野での突出したシェアに依存しベースとなるチップ制御を司る部分のAPIが同一であるという点によってたつものでもある。QUAD社では、搭載するプロセッサのリソースをうまくアプリケーションサイドで使いこなしてもらうというのが今までのスタンスではあったが、日本などの深化した利用形態おいては提供しているユーザーインタフェースなどが不足していたという反省にも拠ってたつものでもある。

本来、こうした部分こそ各メーカーが持っているソフトウェアの勝負どころなのだと思うのだが実際にCDMA以外にも多くの開発をしているメーカーにおいては、開発プロセスのばらつきや搭載すべき機能盛り込みの過当競争などが生じているために起こってきたのも背景にある。元もとの理由に遡ればそうした機能競争を引き起こすだけの脅威をPDCのキャリアがCDMAに感じ取ったからに相違ないのだろう。

技術者が流動的になっている現在では、開発プロセスをうまく構築できなければその会社で働く技術者はいなくなるだろう。お客様の間での技術者の異動は良く見かける。同様な他社に移るのは、働く場所として携帯業界が電機業界においては逼迫しており移りやすいのが実情だからだろう。逼迫している実情からは、毎晩タクシーがお迎えにくる会社もあるようだ。タクシーを呼ぶと行き先も告げずに自宅まで届けてくれるらしい。

厳しい中で新年度が始まる、電機業界を引っ張っている携帯開発の業界では、夢幻の中から覚め始める状況になるだろう。開発リソースを無駄遣いしている状況のツケは、開発投資の積算という不良債権処理が始まるのではないか。次に繋がるような仕事の仕方などを始めることが必要だろう。業界競争なのだが、開発競走に陥っているのが実情だろう。

不良債権処理で始まるのは、ソフト技術者のリストラである。開発プロセス確立により少なくとも開発ラインのように作られた電機メーカー内部のラインは縮小を余儀なくされて有効に相互作用を果たすような仕組みに変わるだろう。電機労連の会社によく見られる条件では一度会社を退職したものは元の会社の系列の会社には入れないというのがあり、開発プロセスの出来ていない会社から辞めた人材をそのまま流失して失ってしまうのだ。欲しい人材が、自分達の開発プロセスの手薄で失ってしまうのは悲しいものだ。